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スタンダードな関係  作者: 雅也
5/6

5話


                  5


 ピンコ~ン。


 以外に早起きした匠斗が、スマホを見ていると、ポップが出た。


『今から出るけど、いいかな?』


 と言うメッセージが凪穂からきた。

 即座に返信する。


『いいよ、待ってる』

『じゃあ、今から行くからね』


 そう残して、やり取りは終了した。それと同時に匠斗は2階にある自分の部屋から降りていき、玄関で凪穂を待とうと思っていたところ、母親のめぐみが玄関の掃除をしていた。

 (うわ!これは不味い) と思ったが、すでに遅かった。


 ピ~ン ポ~ン


「あら誰かしら、は~い」 と母親が出た瞬間に、玄関のお互いが一瞬固まった。


 一瞬の間が空いてから。


「あ、おはようございます」

「おはようございます。あら、舞の友達かしら?」

 さらに少しの間があって。


「あ、いえ、私 、村上 凪穂 と言います。匠斗くんのクラスメイトで、今日は用事があって匠斗くんに呼ばれたので、おじゃましに来ました」


 恵が目を大きくして。

「あらら、匠斗のお友達なのね、今待っててね...って、匠斗 居るじゃない、お友達よ」

「うん、分かってるよ母さん」

「何してるの、早くお部屋に案内して、あとで飲み物持って行くから」


 玄関での喧騒に気が付いた妹の舞が、正にその中に突入した。


「あ、舞ちゃん」

「あ、凪穂ちゃん」


「あら、お互い知っているのね、あなた達」

「うん、お母さん。きのうね、お兄ちゃんと朝行った店で、偶然に仲良くなったんだ、よね? 凪穂ちゃん」

「そうなんです、お母さん」


「あらら、お母さんなんて....ウフフフ、さあさあ上がってね」


 玄関から上がるときに、凪穂が抱えていた、包みを恵に渡しながら言った。


「これ皆さんでどうぞ」

 と言ったので。


「あら、気を使っていただいて、ありがとう、じゃあ遠慮なくいただくわね」

「はい」

 と、凪穂が返事をした。


                  △


「あ~びっくりした。 まさかお母さんが玄関に居るなんて、私てっきり匠斗が玄関先に居るものと思っていたから、お母さんと鉢合わせになったときには、固まっちゃたわ」


 匠斗の部屋に来ての凪穂の一言目だ。


「でも片付いているね~、アレから頑張ったのかな?片付け」

「そりゃ、初めて身内以外の女の子が来るんで、少しは片づけた....で、なんで居るんだ?舞」


「えへへ、いいじゃん、凪穂ちゃんが折角来てくれたんだから、ね」

 凪穂に向かいながら、相槌を促す 舞。


「私はいいわよ、男の子と二人きりになるよりも、舞ちゃんが居てくれると、何か気が楽になるわ」

「それって、オレの事を信頼してないって事か?」

「ちがうよ、私が 恥ずか気まず って感じになるの」


 慌てて否定する凪穂。


「だよな、オレたち昨日からの付き合いだからな」

「でもね、あなたたち兄妹二人って、何処か落ち着ける雰囲気があるの、何でなんだろう?不思議ね」

「わあ、ありがとう、凪穂ちゃん、そんな事言ってくれると、私も嬉しい」

「だって、ホントの事なんだもん」


 話を一度 リセットする。


「凪穂は.....この本だよな」

 そう言って、昨日言っていた本を渡す。


「あ!そうそう。 探したけど、意外に身近な人が持っていて、良かった」

「何なら貸すよ」

「あ、それはいいから。 今日中に読破出来るスペックだから」

「あ~はいはい、そう言ってたな」

「なあに、匠斗 その返事。 私、読むのそんなに遅くないから、ホントだよ」


 そう言っていると、母親の恵がトレーに飲み物と、お菓子を持って、やって来た。


「匠斗、入るわよ~」

 そう言って舞がドアを開けると恵が3人を見て


「へえ、仲が良いのねあなた達って。 何か雰囲気が、ずっと前からの付き合いって感じがするわね」

(母さん、付き合いって...)

ちょっと照れる匠斗。


 3人の馴染んでいる雰囲気を見て、恵が言う。


「あ、お母さん、私もそう思うんです。 昨日会った時から、何か波長が合うって言うか、そりが合うっていうか、今まで話した事のない彼だったのに、話始めると、舞ちゃんまで、雰囲気が 合うわ~ って感じで」

「そう、ウチの子をそんな風に思い感じてもらって、親として嬉しいわ。 凪穂ちゃんゆっくりしていってね」


「ありがとうございます」


 そう言うと、恵は部屋から出て行った。


「じゃあ、私も自分の部屋に行くね、お兄ちゃん」

「そうか」

「でも、ちょくちょく見に来るからね」

「オレは何もしないぞ」

「分かってるよ、そう言う意味じゃないよ」

「分かった、でも、静かに来いよ、凪穂が読書してるからな」

「うん」


 と言って、舞も自分の部屋に戻って行った。





 何となく、二人きりになって、気まずくなるかと思いきや、凪穂の方を見ると、すでに本の世界にドップリと浸かっていた。


(は~~~、二人になって、気を使うかと思ったら、意外に何か居心地がいいな、このは)

 そんなことを思う匠斗だった。



                  △



 暫く無言な時間が続き、時々飲み物を飲む音と、凪穂がページをめくる音がするだけで、それ以外は殆ど無音だ。

 なのに、一緒に居るのに、息苦しく無いのは、気を使わせない空気を出しているお互いの何かだろう。


 その時


「ふう~.....」

 と言いながら、あたりを見回す 凪穂。


「あ、ごめ~ん。息が詰まる感じをさせたかな?」


 言われて気が付いた匠斗が凪穂に顔を向ける。


「え? 何か言った?」

「あれ?聞いてなかったの?」

「うん」

「だから、息が詰まる感じをさせたかな?って...」


「あ~、いや、ぜんぜん。オレもスマホいじってたし。いいよ、気にしなくても」

(うわ!優しい 匠斗 なんか、癒される~ (凪))


「優しんだね 匠斗」

「はは....」


そこで、凪穂が少しだけ首を傾げて言う。


「今もそうだけど、匠斗って、学校でもよく休憩時間にスマホ開いてるね」

「そんなん普通だろ?他のヤツらだってよくやってるぞ」

「いいえ、そうじゃあないの」

「何が?」


「普通ゲームなら、画面をタップしたりスワイプしたりしているけど、匠斗は何か読んでいる感じだから、もしかして、コミックか小説かな~? と思って」


「なるほど、まあ確かにそうなんだけどな」

「当たったかな?」

「うん、当たりだ。 実は いつも小説を読んでいるんだ」

「やっぱり」

「分かっていたのか?」


 大きく頷く凪穂。


「だって、前見た時、私も有る アイコン だったもん」

「え!?」

「わたしもそれ、ダウンロードしているの。 しかも...あ! いえいえ...」

「なんだ最後、何か隠してるな?」

「な~んもないよ、ないから~」


 すごく怪しい凪穂であるが、まだ知り合って間もないので、あっさりと詮索を辞めた。



そうしてまた凪穂は、読書を進めるのだった




                   *




 暫くしてその後、凪穂は本当に正午前には読破していた。


「へえ、いくらページ数が少ないからと言って、早いんだ読むの」

「えへへ、まあね.....」


 手を組んで、背伸びするように、両腕を上に向かって伸ばした。

「ん~~~~~~....と」


 それを見た匠斗が聞こえない様な小さい声で。

「か、かわいい...」


 少し照れた凪穂が、匠斗に目線を合わして。

「そ、そんな、カワイイなんて.....」

「うわ!聞こえてたのか?」

「うん、聞こえちゃった」


 ペロっと舌を出す凪穂。


「ゴメン」

「謝らないで、訂正に聞こえるから」

「え?」

「あ! いえ...」


 今になって、二人だけになっている事に、緊張してきた二人。


「でも、匠斗も、昨日今日で、優しいのが良く分かったよ」

「はは、何か照れるな」


「だからね、何で私のような 陰キャ に優しくしてくれるのかな?って」

「?...ちょっと何言ってるんだか分からないけど、オレ凪穂の事 陰キャだとは微塵も思って無いから、むしろ、一緒に居て気を使わせない、癒しの女の子だなって思ってるんだ」


「匠斗、もしかして、私に 告るの?」

「あ! そう言う雰囲気になってる? オレ人生で告った事ないけど」

「あれ? もしかして、匠斗はいままで彼女って居た事が無いの? まさか」

「無いけど」


 サクッと匠斗が言うと。


「ええ!? こんなにカッコいいのに。不思議?」

「オレがカッコいい? まっさか~」


 少し顔を赤くして、凪穂が。


「実は、さっき逆告しそうになったの」


 さらに顔が赤くなる凪穂。

 匠斗はキョトンとする。


「ええ? マジで、本気?」

「以外に本気だよ」


「これって、オレどうしたらいいの?受け取っていいの?」

「出来れば受け取って欲しいな」

「オレ普通なんだけどいいのか?」

「私だってありふれた女子だけど」

「こんな男子のどこが良いの?」


 凪穂が改まって、匠斗に向き、言い出す。


「私ね、今まで結構クラスでは大人しくして、周りを見てきたんだけど、殆どの男子女子の会話が、その場限りの盛り上がりが出来ていればシラケないし、はぐれる事は無いと、そう言う薄っぺらい会話が殆どで、上手く打ち解けなかったんだけど、このクラスになって、初めてなんかいいな~って思えるグループの男女が居たの」

「それって....」

「そう、いつも会話しているあなた達3人なの。 何か他のグループとは違い、人の悪口は言わない、話題にも出ない、誰もが話しかけてきても、相手の事を思いやる様に会話をして、他愛もない会話でも、結構笑って話し合っている3人が、傍らから見ていて、ちょっと羨ましかったんだ」

「じゃあ、直ぐに声掛けてくれればよかったのに」

「でもね、その頃には、あちこちでグループが決まって来ていて、あなた達3人がいつも固まって、本当に色んな話で盛り上がったり、慰め合ったりと、何かあったかい雰囲気がいいなと思い始めたのは、ごく最近の事なの」

「葵なんか、隣のクラスなのに、いつも来るんだぞ」

「それは、あなた達 男子二人が、女子でも心を許せる相手だと思うからよ」


 実際にそうなのだ。匠斗と亮は、クラスの男女問わず、話しかけられても、だれでも愛想よく返事しているので、クラスメイト受けは良い。


「でもそこに、私のような陰キャなんて、負の女子が混ざったら、雰囲気だだ下がりでしょ?」

「そ~かな~? 凪穂って結構オレ達と似ているところがあると思うけどな~」


 少し微笑む凪穂。


「ありがとう、そう思っていてくれると嬉しいな」

「思ってるから、オレ」



 凪穂が改まっていきなり。

「私ね、匠斗が好き。 まだ出会って間もないけど、大好き!だから、私と正式に付き合ってください」


「こんな普通なオレでいいのか?」

「返事して、匠斗」

 改まる匠斗。


「はい、村上 凪穂さん、オレも好きです、ぜひ付き合っていきましょう」


「なに?付き合っていきましょう...って」

「え~~~、そこ指摘する?」

「だって~~~」


「あははは・・・」


「うふふふ・・・」


「コレからは、彼氏彼女だな、よろしくな か・の・じょ・さん」

「こちらこそ、 か・れ・し・さん」


 初めて凪穂の手を握った匠斗は、女の子の手って、柔らかいんだと、心臓の鼓動と共に、実感した。





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