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5話


 ソーシャルゲーム業界でよく聞く単語にKPIというものがある。


 KPIとはkey performance indicatorの略だ。日本語では重要業績評価指標などと呼ぶ。ざっくり言うと、お金を儲けるために見ておかなければならない重要な数値やデータということだ。


 具体的な数値で言うとDAU、Daily Active User。その日ゲームにログインしたユーザーの数のことである。他にはARPU、Average Revenue Per User、ユーザー一人辺りの平均収益などがあった。


 この二つ以外にも様々な指標があるし、部署によって見るべきKPIは違うのだが、その辺を理解していない人間も割と多い。何もわかっていない上司を動かすために歪んだKPI分析の資料を作ることもある。よくないことではあるが、目的を達成するために上司を騙せないようでは、この業界で生き残ることさえできない。そもそも、部下の資料にツッコミ入れない上司など上司ではない。


(サイコパスどものせいで、俺もじゃっかんサイコパスになってきたよな……)


 幸一が新卒で入社した会社は、中小企業だったのでプランナーが売上予測を立てなければならなかった。プロデューサーのメチャクチャな売上目標に対して「無理に決まってんだろーが!」と反論するために資料をまとめたものだ。


 幸一がワールドエクリプスの数値を見たところ、次の日もログインしてくれるユーザーの割合。いわゆる翌日継続率が六十三パーだということが判明した。初ログインから通算四十五分以上プレイしてくれているユニークユーザーの数値で、これだ。


 低い。


 というか、かなり低い。


 調子のいいゲームでは八十パーを越えてくるし、普通のゲームでも七十以上は欲しい。


(ログボが悪いってわけじゃないんだよな……)


 継続率を上昇させるために、まずやるのがログインボーナスの見直しだ。だが、現状、他の人気ソシャゲと比較して見劣りする内容ではない。競合他社よりいいものを提供するのも一つの手ではあるが、やりすぎるのは法律的な問題が生じてくる。


(やっぱ空気が悪いんだろうな……)


 ネットの空気感をユーザーは敏感に察知する。SNSなどで盛り上がっていないゲームはそれだけで離脱要因になるのだ。


(この継続率と課金具合だと……売上予測、出したくねーな……)


 継続率と新規ユーザーの流入数、平均課金率などその他もろもろのKPIをエクセルで計算することで、ざっくりとした売上予測値を出すことができる。


(このままだと再来月には売上目標が達成できなくなる。というか、来月からして無理な気がする)


 基本、ソシャゲの売上はユーザー数で決まるといっても過言ではない。ユーザーの絶対数が多ければ、それだけ課金者の数も増える。結果として売上が担保される。

 ユーザーの離脱率が高いのは死活問題なのだ。


(スタートダッシュでつまずいたコンテンツが復活した事例はほとんどない。ここからユーザー数を増やして、運営を軌道に乗せるのは……)


 ほぼ不可能だ。


 『メギド72』のように不死鳥のようによみがえったコンテンツがないわけではない。だが、あれは土台のゲームシステムや世界観が丁寧に作られていた。尖ったシナリオとキャラクターで話題になり、ネットでバズった結果、正当な評価を受けただけだ。


 ワールドエクリプスは違う。


 そもそもクソゲーなのだ。


 SNSマーケティングを利用したところで、どうしようもない。認知度があがったところでクソゲーであるという認識が広がるだけだ。むしろ、現状、クソゲーすぎるということで話題になっている。Twitter上でも悪い意味で話題になっていた。


(普通に考えれば、もう詰んでる。普通に考えれば……)


 だから普通のことをしてはいけない。

 普通のことをしたら、このまま数ヶ月でクローズすることになるだろう。そうなれば、運営ラインが一つしかない会社は倒産する可能性が高くなる。


(ま、やるだけやってあがいてみるか。どのみち社長を説得してからじゃないと改善もなにもできないんだし……)


 どうせ無理だろうと半ばあきらめている。そもそも数年働いたら、転職するつもりだった。それなら、社内の評価を意識したり、出世のために空気を読む必要もない。結果、軋轢が生じて、こちらの話を聞いてもらえなくなるのなら、それでいい。


 その時は、会社がつぶれるだけだ。


 契約書の署名捺印の件と合わせて社長にチャットを投げた。

 今後のことについてミーティングをしたいので時間を作ってほしいと。

 すぐに了承する旨の返事がきた。


 反応が早いのはいいことだ。


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