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第2話

 ミノリは魔王の城で賓客扱いとなり、メイドが一人付けられた。

「カミラと言います。ミノリ様」

「ミノリで良いよ。年も同じくらいだろうし」

「魔王様のお客様を呼び捨てになんてできません。それに、まだ80歳の若輩者ですが、城には70年勤めております」

「は、80歳!?・・・魔族の人って若く見えるんだね」

「平均年齢が500歳ですからね。人間であるミノリ様には想像もつかないでしょう」

 ミノリはマジマジとカミラを見つめた。

「人間年齢で換算すれば、同い年くらいかな?カミラちゃんて呼んで良い?」

「よ、呼び捨てで構いません!!」

「ううん。カミラちゃんて呼びたいな」

「・・・もう、お好きになさってください」


 カミラが城内を案内してくれることになった。珍しい人間の、それも魔王が賓客とした人間の姿を一目見ようと城勤めの魔族が集まってきていたが、それを気にしないのがミノリであった。

「城内であれば自由にとの魔王様からのお言葉です」

「了解です!!部屋に閉じ込められたらどうしようかと思ってたから嬉しい」

「・・・ミノリ様は魔族が怖くないんですか?」

「へ?」

「人間は人間以外を同等に受け入れないと聞いていました。サーズ国は我々を目の敵にしていますし、他の国とは敵対とまではいきませんが、友好的でもありません」

「そうなんだ・・・」

「ミノリ様は怖くないですか?人間が居ない魔王様の城は?」

「うーん。私、馬鹿って言われるからよく分かんないんだけど、怖くないな。カミラちゃんも親切だし。心配してくれてるし。魔王様はいきなり現れた私の話を信じてくれたし。それにね、元の世界でも私って変わってて、人には見えないものが見えるんだ」


 そう言って、ミノリは3本の管を取り出した。

「出ておいで」

「「「ケーン」」」

 現れたのは3匹の管狐だった。

「ミノリ様?その者たちは?」

「この子たちは、管狐。やっぱり魔族のみんなには見えるんだね。元の世界ではね、家族しか見えなかったんだよ。他にもね、ウチのお社にはウカ様って言う神様が居たり、近くの公園の池には河童が居たり・・・みんなには見えないの。でも、居るんだよ。それで、私、怖くないの」

「ミノリ様」

「馬鹿だけど、直感は良いって言われてんだ。だから、魔族のみんなは怖くない。大丈夫って私の直感が言ってるから」


グ―――――――――


 ミノリの腹の虫が鳴った。

「・・・お腹すいた」

「食堂へ案内しますね」


 魔王の部屋には側近が集まり、サーズ国の様子を報告していた。

「聖女召喚の儀式は行われた模様です。かの神の神力が国を覆っているかのようでした」

「だが、サーズ国は大々的に聖女の召喚を宣言していないな」

「何か時期を待っているのか・・・」

「人間が考えることは分からん。秘密裏に聖女を動かすつもりかもしれん」

「魔王様、如何いたしますか」


 魔王は少し考えるそぶりを見せてから言った。

「こちらから仕掛けるか」

「仕掛けると言いますと?」

「ミノリを魔族の『魔女』として公表する」

「『魔女』でございますか?」

「聖女に対するもの・・・という意味だ。こちらには聖女に対する手段があるのだと言うことをサーズ国に知らしめるのだ。その上で、様子を見る」

「なるほど、聖女を炙り出すのですね」

「ああ、さっさと聖女を引きずり出し、元の世界へと帰らせるぞ。すべては魔国の安寧のために」


 食堂ではミノリが数々の料理に舌鼓を打っていた。

「これ美味しい。フレンチのフルコースなんて初めて食べた。ウチって神社だからか和食ばっかりで」

「気に入っていただけて良かった・・・。ミノリ様。ワショクって何ですか?」

「元の世界の主食的な?材料があったら作るよ。カミラちゃんと食べたいな」

「私にはもったいのうございます。・・・魔王様のために御作りになっては如何ですか?」

「魔王様に?」

「長く生きておいでですから、珍しいものがお好きなんですよ」

「へえ。そうなんだ。よし、今夜にでも作ろうかな」

「後ほど、厨房へご案内いたしますね」

「うん」 


「それで、これは何だ」

「豆腐のお味噌汁です。いやぁ、魔法ってすごいですね!!大豆があっという間にお味噌汁になるなんて!!」

「・・・料理の魔法は相手に完成形が伝わらないと完成しないはずだが」

「言葉で伝えるのが難しかったので、この子たちに手伝ってもらいました」

「「「ケーン」」」

 ミノリは管狐を呼び出した。

「私の管狐。アリ・ヲリ・ハベリです。この子たちの力で、料理長さんにお味噌汁を伝えました」

 3匹の管狐を魔王は珍し気に眺めていた。

「ほう。魔族でも人間でも動物でもないな。ましてや、神でもない」

「この子たちは・・・妖怪が一番近いかな」

「妖怪・・・初めて聞く言葉だ。して、その者たちは何ができるのだ」

「えっと、他人にテレパシーみたく言葉や映像を伝えたり、心の中に入って気持ちを読むことができます」

「心を読めるのか・・・」

「あ、勝手に読んだりしませんから。それに、大まかな事しかわかりません。あとは、失せ物探しとかも得意ですよ」

「そうか。興味深いな・・・」

 魔王はフッと笑った。


ドキッ!!


(え?)

 この時のミノリの心の音を聞いたものは、ミノリの他は居なかった。しかし、その音の正体をミノリが知るのは、随分先のことになる。


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