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兄のお仕事は騎士様なんですよ?

 人間、危機的状況に陥るといったい何をするかわからない生き物である、というのは、行動心理学者のイーシャーシャンが唱え、そして自ら証明して精神病棟ゆきになってみせた通りである。


 目を開くと、そこには投影結晶ヴィジョンの映像が浮かんでいた。


◆第二級魔法士資格試験

 第一次選考通過者


(中略)……以上、13887名


「お……ち、た……(がくっ)」


 俺は自分の名前が載っていないとわかっている掲示板を端から端まで何度も読みなおすという、論理的に考えればまったく無意味な行動を繰り返していた。


 いや、これもまったく無意味というわけではない。

 不安定な精神状態の俺に現実を直視させ、それ以外の突飛な行動を取らせないでいるためには必要な行動だったのだ。


 なんせ自己採点における正答率は90%を超えていたし、これいけんじゃね? 的なことを周囲にさんざん言いふらしていたし、さらに先日は妹とささやかながら合格の前祝いパーティまで開いていた身の上である。


 俺はいいかげん無意味な行動をする自分を制するように手のひらでまぶたを閉ざして、ぶんぶんと首をふった。


「いいや大丈夫、落ち着け、ドナテッロ、まだ拾い上げがあるじゃないか。きっと、病欠とかで急な空きが出る、かもしれないだろ? ふごふご」


 資格試験の結果に病欠なんてあるんだろうか? というまっとうな疑問が浮かんだのだが、そのときの俺はとにかく病欠があることを祈るしかなかった。


 ああ、他人の不幸を唯一の希望としてかろうじて息をしているなんて、自分はなんて嫌な人間なんだ。


 ふごふご、と鼻を鳴らしながら、もういちど掲示板の端から端までずーっと睨みつけて、自分で自分に最後のとどめを刺してから、もういちどがっくりと肩を落とした。


 アールシュバリエ県アールシュバリエ『紅の塔』250層、中央ロビー掲示板前。

 それがこの不思議な魔法によって俺をはりつけにしている場所の名だ。


 アールシュバリエ県は、いわゆる迷宮都市ラビリンス・サイドのひとつ。

 産業革命期に雨後のタケノコのようにぽこぽこと生まれた魔石の大産地のひとつである。


 街の中央には美しい白亜の城の姿をしたダンジョン、『氷の迷宮』がそびえていて、その迷宮から産出される魔石を中心にして、この街のすべての経済がまわっていた。


 俺の前世の記憶によると、いわゆるゴールド・コーストのようなものだったが、迷宮は金の鉱脈とは違って、モンスターが多数出現する場所である。

 このモンスターが体内で魔石核を成長させていくため、現在進行形で埋蔵量が増え続けるという、ちょっとお得な鉱脈なのだった。


 その城の監視塔として建てられた555メートルの紅白の塔、シュバリエ・ツインタワーは、ぱっと見、東京タワーによく似た双子の塔だ。

 モンスター・ハザードの時のための避難所として、また若き冒険者達の養成所として今も機能しており、白の塔には騎士や戦士など、紅の塔には魔法使いや僧侶などの養成学校が設置されていた。


 首をつりたくなるほど天井の高いゴシック調の部屋とかが好きな人には、ぜひ一度見てもらいたい。

 あと窓ガラスの外の風景は、ひといきに飛び降りたくなるほど高い。

 とくに50階ロビーにあるクリスタル製の柱がひんやり冷たくて、試験結果にうなだれる俺みたいな人がしばらく頭をぶつけているのにちょうどいい角度になっていた。


 雪がちらほら降っている『氷の迷宮』を、日が暮れるまでしばらく何もせずにぼーっと眺めていると、ぴりり、ぴりり、とスマホが音を立てて、アルバイトの時間が来たことを告げる。

 LINEに「ごめん、なんかここから動きたくないわ」と打とうとして、そう言えば今月は妹にクリスマス・プレゼントをあげなければいけないことを思い出した。

 食事のクオリティを維持しつつ、プレゼントをグレードアップさせつつ、あとついでに女の子と遊ぶためには、バイトを休んでいる暇はない。ふごふご、と動きたくない身体をおして、無理やり行くことにした。


 母親の影響で子供のころから目指していた騎士だったが、いまどき騎士なんて危険な職業を目指している奴は少ない。


 騎士は公務員の癖に薄給なんだ。

 サービス残業は当たり前、鎧や剣の装備は手入れに金がかかるくせに経費で落とせない、おまけに常に命をはる危険な仕事ときた。


 俺の前世の記憶によると、中世ヨーロッパの騎士もだいたいそんなもんで、傭兵の方が稼ぎがいいといって傭兵のアルバイトとかけ持ちをする騎士も多かったと聞く。

 いわゆる御家人というやつで、こいつらが金さえもらえば何でもやると評判もすこぶる悪い。


 だが、ここ迷宮都市の騎士の評判はよかった。

 彼らにはダンジョン探索という安定した仕事があったからだ。

 魔石鉱脈からあふれてくるモンスターの定期的な駆除が、街を守る騎士のお仕事として立派に成立していたのである。それなりに重要視もされている。


 けれどもし、ダンジョンが攻略されてしまえば。

『氷の迷宮』にある『北極星』を破壊すれば、迷宮も魔力を失い、ただの城と洞窟になってしまうという。


 そうすればモンスターの脅威も取り除かれるし、魔石も採り放題になるし、騎士も仕事が格段に楽になるし、街の人たちにとってはいいことづくめだったが、俺にはそうなった時の自分の将来が、不安定なものに思えてならなかった。


 騎士学園そのものは、悪くはなかった。

 可愛い姫騎士候補生の女の子がたくさんいるし、変な奴もいるし、いい奴もいる。

 俺がオークの血をひいているからって不快そうな目で見る奴も中にはいるが、そいつらを変な目で見る奴の方が大半という健全な環境だった。


 性別も種族も関係ない、ここでは実力のある奴が認められる。

 かつて世界中から雑多な冒険者たちが集まってできたアールシュバリエ全体に、そのような気風があった。


 母親の英才教育のお陰で、俺は騎士学園でもトップクラスの成績を収めることができたのだ。


 ただ――俺はどうも、このまま騎士を続けていけそうな気がしないのだった。




 氷の迷宮をいただきにもつ山に、ぽっかりとあいた巨大な洞窟。

 俺はそこで、1匹の狼型モンスターとギチギチつばぜり合いをしながら語り合っていた。


「なあオオカミ、ところでお前、女の子はどういうのがタイプだよ?」


「グルル?」


「ほら、あるだろ? 年下じゃなきゃダメだとか、胸がデカけりゃなんでもいいとか」


 お相手は、毛皮に包まれた全身にチャックがついた、オシャレな二足歩行のオオカミだ。


 さまざまな獣を継ぎ合わせて作られたという、フランケンシュタインみたいに継ぎ接ぎだらけの身体。

 血色の悪い紫色の舌をでろんと伸ばして、死者の魂が出入りする6つのチャックをちゃりちゃりと鳴らしながら、焦点の定まらない濁った眼で冒険者をじっと品定めしている。

 品定めしている、というからには、好みぐらいあるんじゃないか? と思ったのだが。


「グルルるルル(あるある、俺年上ダメ、年下ダメ、俺を好きになってくれる女なら誰でも、タイプとかそんなんはないけど胸は絶対、胸がデカくてもにおいが気になるとかある)」


「どれだよ」


 こいつが迷宮に巣くうモンスター、種族名はウェアラブル・ウルフ。

 チャックの数によって階級が異なる。《シックス・ジッパー》は6つのチャックを持ち、6つの大型魔石を核に持つ、星6モンスターに相当した。

 継ぎ接ぎになった魂も6匹ぶん。軽いアパートだ。


 俺のアルバイトは、こういったモンスターと戦う戦力として、ダンジョン探索のパーティに参加する事だった。


 探索パーティを結成するのは、昔は王侯貴族だったらしいのだが、いまでも研究素材を集める魔法士だったり、あるいは大企業の錬金術師グループなんかだったりする。

 成績優秀な騎士は、どのパーティにも引っ張りだこだ。


 駅のすぐ目の前に『氷の迷宮』の入り口があって、山の中腹までの低レベル層なら、学校の帰りにも通うことが出来る。

 学割もきくので、ピンチの時はしょっちゅう助けられていた。ダンジョン探索はタダではないからな。


 ダンジョンの中に落ちているアイテムは、法律でダンジョンの所有者の物と定められているので、勝手に中のものを拾っていい訳ではない。


 その点、探索者の活動で成り立っているアールシュバリエ県はかなり寛容で、一定の金額を支払えばダンジョンのアイテムは拾い放題、さらに学生は銅貨紙幣2枚(日本円で約1000円相当)で1日潜り放題だった。


 報酬はドロップアイテムが山分けとなっていたため、1体だけ引きつけておけばあとのザコは無視していいタンクの俺には、かなり割のいいお仕事なのだ。


 敵の群れのボスと思しきモンスターと一触即発のにらみ合いをしている……ふりをしながら、女の子たちがわーきゃー言いながら脇に汗をかき、お尻をふってモンスターと戦っているのをちらちら眺めつつ、雑談でお茶を濁していた。


「チャックは多い方がいいのか? それとも少ない方?」


「ぐるるるる(多い方? いや、少ない方? いや、俺と同じくらい? いや、チャックなんているか?)」


「どれだよ……じゃあ、あーいう女の子って正直どう思うよ?」


「でやああああっ! はぁっ!」


 紫色の鎧に身を包んだ騎士候補生、ジャガーは、いったいどうやってダンジョンに入ったのか不思議なくらい巨大な石の斧を持った星5モンスター、ドレッドフル・オーガに肉薄すると、相手が振り下ろす斧に対して、カウンター気味に顔を切り裂いた。


「ごおぉばぁぁぁぁぁあッ」


 ドレッド・ヘアからわずかに顔をのぞかせた巨人、ドレッドフル・オーガは、霧を発生させる謎の雄たけびをあげる。

 すると、ピーン、という音と共に、機械的な声がどこからともなく響いてくる。


絶叫ドレイド、検知しました。反対魔法を構築、無効化します』


 情緒不安定を誘う雄たけびだったが、ジャガーの身につけている英雄の兜は瞬時に防御魔法を構築し、その効果を打ち消していた。


 この兜を身に着けていると、やたらめったら斧を振り回して暴れているドレッドフル・オーガの攻撃が、ゆっくりと水中をただようように緩やかに見える。

 加速魔法によって、人間の脳の情報伝達速度を倍加させる、軍御用達の最新魔工デバイスが搭載されているのだ。


 それに人間の動きをアシストする進化の鎧があわされば、愚鈍なオーガの攻撃ぐらい、落ち着いて回避することができる。


 騎士という職業は、古来よりこういった特殊な防具を身に着けることによって力を得るのだが、魔力が薄く、魔法の効きやすい人間の方がその適正があるという。

 エルフでもドワーフでもない、魔石工学機器を発達させた人間の固有ジョブなのだ。


『破邪の剣、起動準備、目標捕捉、発動します』


 ジャガーが構えた破邪の剣は、電撃によるダメージを与える中距離・近距離での戦闘に特化した高性能の剣だ。

 地面から蒸気機関のような水蒸気が吹き上がり、スタンガンのごとき高電圧の嵐が駆け抜け、ドレッドフル・オーガが一瞬喉を詰まらせて沈黙する。


 その隙を逃すようなジャガーではない。

 角を飛ばし、腕を飛ばし、足を飛ばし、もう一度飛び上がって、ドレッド・ヘアを掴んで喉笛をひとつき。

 ドレッド・ヘアの巨人が仰向けにひっくり返って、ようやく息絶えた。

 切り離された5体は黒い霧と5つの大宝石に、それと10数個の透明な宝石になって跡形もなく消えた。


「ふん……たわいもない……」


 ジャガーは兜を脱いだ。金色の髪がふわっとなびいた。

 さして美形でもない、ふつーの卵顔。そのくせ、つり目でいかにも威圧的だ。


 このパーティを発足したのも彼女自身で、いちおうチーム・リーダーの肩書きを持っている。

 武芸で名を馳せた名門の令嬢らしく、将来は伝説の姫騎士アリアのような姫騎士になるのが夢だという。なれるんだろうか。


 態度もデカい。胸もデカい。尻もデカい。これがエロゲならオークの苗床決定だよな。現在恋人募集中。


「ぐるるる……(あれはない、いや、俺は好き、いや、怖すぎ、いや、だがそれがいい)」


「そうかそうか、やっぱそう思うか」


 俺はうんうん、と頷いた。

 いや、だからどれだよ?



 モンスターを倒さなければ金にならないこの職業だったが、俺は倒すモンスターをいちいち選んでいた。

 オークの血のせいか、彼らの言葉が分かってしまうのだ。


 倒すに値する奴か、そうでない奴か、俺と気が合いそうな奴か、会わない奴か、しっかりと見極めていかないと、後ですごく苦しむことになるのだ。


 というのも、なぜかモンスターは自分から俺に攻撃してこない。

 こうやって俺の方から戦闘に持ち込まないと、攻撃してくる素振りすらない。

 なぜか俺に対しては人畜無害な存在なのだ。


 じつは俺は小心者なので、そんなモンスターを倒した日にはもう、夢にうなされるぐらい悩んでしまう。

 常に女の子にモテるために全力で生きてきた俺でも、本当は心を痛めながらモンスターを倒してきたのだ。

 そんな気分で手に入れたお金で、妹にクリスマス・プレゼントなど買ってあげられない。ゴムは買うけどな。オークにとってゴムは必需品だ。


「じゃあ、あーいう天然なのはどうよ?」


「グルる?」


 ウェアラブル・ウルフの濁った黄色い目が、ちらり、と俺の示した方向をむいた。


「だあああんちょおおおおぉっ! どいてぇぇぇぇぇ!」


 大きな胸に窮屈そうな鎧、騎士候補生のユリアが、のったのったと走りながら一角獣アルミラージに向かって突進していった。


 動きは遅いが、凄まじい大剣を振りかぶっている。

 1本25キロもある巨人用の諸刃の剣バスタードだが、進化の鎧が筋力の動きを補助してくれるため、女子のユリアにも軽々と持ち上げることが出来るのだ。


 至近距離で攻撃したときの破壊力はすさまじかった。

 誰もがその次の惨劇を予期して彼女から遠ざかったころに、えいやっと剣を振り下ろした。


 ばごんっ。


 剣先がむき出しの岩を深くえぐり、ウサギさんは木っ端みじんになった。

 肉片がびちゃびちゃと辺りに飛び散り、黒い霧と3つの色とりどりの宝石になって消えた。


 そして、後ろからその様子を見ていた俺たちは、ユリアが前かがみになった瞬間に、彼女の黒いスパッツに包まれた臀部がぷりんっとこちらに突き出されるのを見て、おおっ、がるるっ、と声をあげた。


 ユリアは、鉄兜のバイザーを親指でかちゃっと持ち上げると、ふー、と息を吐いた。

 汗ばんだ頬に栗色の髪の毛がはりついていて、いかにも健康的だった。


「あれっ……このアルミラージ、魔石3個もってる? いやっほー! ラッキー!」


 そして、守銭奴である。

 戦闘中にもかかわらず、地面にかがみこんで、雑魚が落とした石を回収してにやにやしていた。


「がるるる!(いいね! いや、あれどうかと思うよ! いや、かわいいじゃん! いや、どこがいいんだって!)」


「そうかそうか、やっぱりそう思うか」


 だから、どれだってば。


 俺と趣味の合う奴なら見逃してやろうと思ったが……この場合はどうしようか悩む。


 性格で判断できないとなると、次に俺はこいつを倒した時に手に入る利益について考えてみた。


 モンスターを倒したときに得られる魔石は、成分によって値段が違ってくるが、『氷の迷宮』で標準となる氷晶(白っぽいベリル鉱)なら、1個につき銀貨1枚と銅貨2枚(約3000円)が相場だ。


 だがここは、周囲の地面に金や銀の鉱脈が見受けられる。

 モンスターの魔石はそういった成分を吸収して成長するので、うまくいけば『魔鋼』を含んだレア魔石になる可能性があった。


 星6級モンスターなら、『星雲』というボーナス魔石もかなりデカいのをドロップするので、それも合わせれば、銀貨紙幣2枚(おおよそ5万円)は堅い。


 これなら、割といいプレゼントを買ってあげられそうだ。


「じゃ……間を取って、悪い奴ってことでいいかな?」


 俺の気配が変わるのを感じ取ったのか、ウェアラブル・ウルフはとっさに身を引いた。


 ガルルルッ、と声の獣性が増した。

 その表情は見る間に変貌していく。


 耳元まで口が吊り上がると、ワニのようにずらりと並んだ牙がのぞいた。

 口までチャックみたいだ。

 これで等級もう1段階あがらないかな? 無理か。


 じいいいいっ、と閉じられていた全身のチャックが開くと、中からニョキニョキと腕が生え始めた。

 うっすらと透けて向こうが見える、黒い血管の浮かび上がった腕、腕、腕。

 まるで中に人間がいるように、毛皮から次々と腕が出てくる。


 ウェアラブル・ウルフの固有スキル、亡霊の腕ファントム・アームズだ。

 剣や盾、斧を持った、かつての冒険者たちの生霊、ようするに、ウルフの中の人たちの腕が御開帳である。


 どうやら、相当なレベルの冒険者たちをこいつは食ったと見える。

 雷剣カラドボルグ、竜呼びの槍、炎剣レーヴァテイン、血濡れの鎌、暗殺剣『必殺シヌガイイ』、同じく暗殺剣『斬殺キリステル』。

 持っている武器もいちいちレベルが高いやつばかりだ。


 俺はそれらが持つ武具を眺め渡しながら、ひゅーうと口笛を吹いた。


「いい腕もってんじゃん?」


 対する俺は、破邪の剣で足元の邪魔な石ころを切り飛ばし、ドノヴァン一派の構えを取った。


 ドノヴァン一派の剣術は、大竜伐時代のさらに昔の魔王討伐時代に編み出された、いわゆる古流剣術。

 槍のように大きく振り回しながら剣を構えるのが特徴だ。


 ダンジョン探索時代に発達した、狭い場所での戦闘に適した現代主流の剣術スタイルではない。

 だが無駄な動きが多くてカッコいい。女の子にモテるために極めた。


「ドナテッロ! 討たれるな!」


「はわわ、ドナテッロさま!」


「ドナせんぱーい、てきとーにがんばれー」


「ふん、汚らわしいオークの実力がどれほどのものか、見せてもらうわ」


「…………まだにらみ合ってたの?」


 5人の女の子たちの少なからぬ好意をもった目が集まるのを感じて、俺は口元に騎士らしからぬ笑みを浮かべた。


 どうしてだろう、俺は家にいるときよりも、学校にいるときよりも、こうやってダンジョンにいるときの方が落ち着く。

 それはオークの血のせいなのか、それとも姫騎士の母親から受け継いだ勇者の血のせいなのか。


 ひょっとすると、両方かもしれない。

 そのふたつは、けっして矛盾しないはずだ。


「俺のクリスマス彼女プレゼントを手に入れるためだ……覚悟しろよ」

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