偽りの強さ
--2050年 9月25日--
森林で剣の交わる音が響く。7人はスケルトンと戦っていた。
ケントはなんとかスケルトンの猛攻に耐えていた。先ほどから攻撃はしているのだが、序盤の敵より格段に強く、スケルトンのHPメーターはまだ4分の1ほどしか減っていない。ケントは少し焦りを感じていた。
ケントがパーティーに入った次の日、『せっかくだから一回このパーティーで戦ってみない?』というシュティーの提案により、都市近くの森林に向かうことになった。そしてしばらく歩き無事森林についた。その森は光があまり差し込まず、昼だが夜のように暗かった。そこでスケルトンの群れが湧いて今に至るというわけだ。
カルロスたち6人はとても好戦的だったが、ケントは心配だった。現に今周りを見渡すと他のメンバーは既にスケルトンのHPゲージを半分以上減らしていた。本当にこの人たちを自分が救ったのだろうか。記憶がないというより本当はそんなことはなかったんじゃないのか。
ケントはそう思っていると、すきを突いてスケルトンが攻撃を仕掛けてきた。
「ぐはぁっ…………!」
ケントはそれに対応することができず、スケルトンによって体が斬られた。全身に痛みが襲い、HPゲージは半分以下になっている。反動でケントは地面に倒れこんだ。スケルトンがからから音を立てながらゆっくり近づいてくる。ケントは立ち上がり体勢を立て直し、再び剣をスケルトンに向けた。
「はぁはぁはぁ………」
痛みに耐えながらスケルトンをにらむ。ケントはもう一度剣を振りかざした。
一方カルロスたちはスケルトンを倒し、ケントの戦う様子を見ていた。ゴブリンと戦っている時のケントの姿と今の姿を重ねてみるが、あまりにも違いすぎる。カルロスたちは険しい表情になった。
ケントの剣はあっさりスケルトンにはじかれ、地面に突き刺さる。ケントは歯を食いしばりながら後ずさりをした。これまでか………そう思った時、キィィィィンという音とともにスケルトンが砕け散った。目の前にはカルロスが立っていた。その後ろ姿は大きく頼もしかった。
「どういう事~?『記憶はなくても実力は実力』って言ったの誰よ!」
険しい顔でシュティーがケントに顔を近付ける。ケントはさっと目をそらす。
「よく考えるとおかしいな………」
カルロスはケントのステータス画面を見て、Lvが自分たちより弱いのにあのゴブリンをなぜ倒せたのかと不思議がっていた。
不思議がりたいのはこっちのほうだ。記憶もないし。
するとキャドンが口を開いた。
「そういえばあの時の戦いでは剣が白く光っていた気がしますね………」
キャドンはメガネをくいっと上げるとケントの剣をにらんだ。見るからに天才オーラが出ていた。
「それはないだろ。このウェーブソードは初期装備だろ?」
フワリテが反論する。ケントはぐいぐい顔を近付けられながら、意味がわからないと首をかしげた。
「いえ、きっとこの剣に何かが………」
そう言ってキャドンが剣を触り始めた時、部屋にピッピッと音が鳴った。確認すると全員にメールが届いていた。ケントは開いてみると大画面に切り替わった。
『やあやあplayer諸君元気にしてるかな?』
そこにはあの時の謎の男が映っていた。
全員がその動画に夢中になる。
『今回は君たちに新たな事実を伝えようと思ってね。』
その男の顔は以前よりもニヤついていた。