勧誘
「記憶なくてもいいからさ!入ってよ~。」
「そうだよー。」
ケントに青い髪の女性と、緑の髪の男がケントをゆする。ケントはどうしようもないのでとりあえず身を任せる。
勧誘された後、このままだと強引に勧誘させられそうだったので、戦いの記憶がないことを話した。最初6人は驚いていた。だけれど、今ケントをゆすっている青髪の女性と緑髪の男はどういうわけだか『記憶はなくても実力は実力だ』ということにしてしまった。しかも相手は年上だから文句も言えない。という事で今に至っているというわけだ。他のメンバーはさりげなく目をそらしている。このままでは何のために説明したのかわからない。
ケントは揺らされながら、肺の空気を全部吐き出すほど大きなため息をついた。
そんな時、
「おいやめろ。記憶がないって言ってるだろ。」
赤い髪のごつい男が二人を止め、二人を軽く叱り始めた。
まとめ上げる姿からおそらくこのパーティーのリーダーだろう。そういえばゴブリンとの戦いのときも周りを見て声をかけていたような気がする。記憶はなんとかその辺りまでは残っていた。とりあえず今後も頼りになりそうだ。
「すまんな。あの二人は何かしらしつこくてな。」
男はそういうと頭をかきながら苦笑いをした。男の後ろで青い髪の女性がにらみながら頬を膨らませているのがわかる。
「勧誘したいのは私もなんだが、そういえばまだ自己紹介をしてなかったな。俺の名前はカルロス。一応このパーティーのリーダーだよろしく。」
ケントは差し出された手を握る。手が大きく、がっちりとつかまれたのでケントはつい「あっ!」と声が出てしまった。そもそも手を握られるのも久しぶりだ。たくさんの意味でケントは驚いた。
しつこい青い髪の女性がシュティー、同じくしつこい緑の髪の男がフワリテ、他の黄色の髪の男と、桃色の髪の女性はそれぞれキャドン、モモカというらしい。
そして頼りない茶髪の男はビリルというようだ。ケントはビリルと目を合わせると、ビリルは少し近づいてきて、お辞儀をした。
聞くところによるとこのパーティーは会社員の集まりで全員25歳以上らしい。このパーティーに入るのは少し抵抗がある。
「お前はなんていうんだ?」
カルロスはケントに問いかけた。
もともと人に自分のことを言うのがあまりなれていない。ちゃんと伝わるか心配だった。さっきの『記憶がない』についての説明もあの二人をみると伝わったか怪しい。だがケントはゆっくり口を開いた。
「俺はケント。15歳。よろしく。」
「ため口かよ。」
フワリテからの鋭い指摘が入る。ケントにフワリテの鋭い視線が向けられた。ケントは冷や汗をかいた。
「いいじゃないか。今は全員ゲームの中なんだぞ。」
カルロスのその一言でケントは少し落ち着いて、小さくため息をつく。
冷や汗もさっと引いた感じがした。
「ケントっていうのか。よろしくな。」
カルロスはそういうとケントの前で微笑んだ。それに続くように他もメンバーも微笑んだ。
このパーティーに入るのも悪くないんじゃないか、そう思った。
まだこのゲームのこともよくわからないし、お母さんやお父さん、妹、そのほかの人たちが今どうしているのもわからない。だけれど一人でこのまま行くよりこのみんなで行ったほうが、何か分かるかもしれない。
「あの………このパーティーに入っていいですか。」
ケントは自分でもよくわからずそう言っていた。だけど、この選択は間違いではないと思った。
カルロスたちはケントの前まで来ると一斉に言った。
「ようこそ!!!わがパーティーへ!!!」