戦いの火花
『助けて…………助けて………早く……………』
真っ暗な空間に一筋の光が見える。声はその光から優しくケントに語りかけていた。
助けろって?どういうことだ?
ケントは問いかけようとした。だが、その声は光とともに暗い闇に少しずつ消えていく。ケントは光のほうへ手を伸ばす。だが光はどんどん小さくなり、完全に闇に飲み込まれた。
--2050年 9月23日--
ケントは目を覚ました。周りには広大な草原が広がっている。鳥のさえずりや風の音がよく聞こえてくる。空も雲ひとつない快晴でとてもいい日だ。破壊さえなければ。
ケントは集中的に破壊されたあの都市に行くために夜な夜な歩いていた。結局この草原に来て寝てしまったが、途中モンスターともたたかい、おおよその戦い方もつかんだ。指でスライドの操作すると、ステータス画面が目の前に現れる。
・Lv3
・HP 91/132
・攻撃力 35
・防御力 30
わかったことと言えばこのゲームではLvがあがっても強化されるのはHPと攻撃力だけで防御は装備を強化することで強くできるらしい。そして剣もただ振ってればいいわけじゃない。ちゃんとした構えをすることで剣が光り、相手に大きなダメージを与えることができる。だがまだまだ使いなれてはいない。もっと戦いなれないといけない。
ケントはステータス表示を消すとため息をつき、再び寝転がると空を見て考えだした。
一体あの声は誰のこえなのだろう、そしてなぜ俺に助けを求めてきたのだろう。謎は深まるばかりだ。だが何にしろケントがやるべきは一つだった。
「とりあえず、何もしないことには何も変わらない。早くゲームをクリアしないと。」
そういうとケントは起き上がり、再び都市に向かい歩き始めた。
その日の夕方、ケントは遂に都市に到着した。
ビルは崩れ、まるで世紀末のような光景が目に入ってくる。物が焼けるにおいがあたり一面に漂う。
よく見ると道路までえぐれていて相当な破壊が起こったことを物語っている。そんな都市をケントは歩いていると、剣のぶつかり合う音が聞こえてきた。ケントは崩れたビルの陰からその音の方向を覗く。そこには6人ほどの大人たちがゴブリンと戦っていた。
「おい!!そっち来たぞ!気をつけろ!!」
6人の中でリーダーらしきがっつりとした男の声の後、一番頼りなさそうな男がゴブリンの攻撃を剣で受け止めている。その男の右上に出ているHPゲージがゆっくりと減っていってる。攻撃を受け止めるだけでも多少ダメージを受けるようだ。だが他のplayerも必死でゴブリン達と戦っていて助けることができない。このままではあの男がやられてしまうかもしれない。ケントはそう思うと同時に陰から飛び出しその男のほうへ走った。
その時、剣がはじかれる音があたりに響く。男の守りが破られた。男は地面に膝をつき目の前まで近づいてきたゴブリンを見て、大きな悲鳴を上げた。その声は再び響き渡る。ゴブリンが剣を振り上げる。男はその瞬間に目をつぶり、死を悟った。
しかし、何も起こらない。男は目を開けると目の前には剣を振り上げたまま動かないゴブリンが立っていた。何が起こった?他のplayerもゴブリンの攻撃を受け止めつつ、そちらに目を向けた。
全員がそちらを確認すると止まっていたゴブリンは振り上げていた剣を下ろし、きれいな花びらとなって消滅した。そして消えたゴブリンの奥にみんなの視線が集まる。そこに立っていたのは光る剣を右手に握ってplayerに背を向けているケントだった。
ケントはplayerのほうを向く。
「さあ!残りのゴブリンも蹴散らしてやる!」
その時俺はなぜか強気だった。なんでもできる気がしていたからかもしれない。
ケントは残るゴブリンに向かっていった。