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49話 意気投合


 ナンパじゃなくて気になることがあったんだと店主に説明しても全然信じてもらえなかった。

 店長の中で俺は女好き認定されてしまったのが少々ショックだったりする。まぁ、それはどうでもいいことだ。まずは世間話からで俺の売ったポーションの評価を尋ねてみる。

 評判は上々ですぐにまた新しいの売ってくれと言われた。在庫が数本しか残っていないらしい。

 そこで手持ちの分を売ることにした。ユアラ草と水はあるので、宿に帰ったらまた作ればいいだろう。

 そろそろ本題に入る。俺はギルドで話題になっていた有名な女冒険者の話を振る。


「ああ、オリーヌさんのことか。あの人ならしばらく来てないね。きっと遠征に出ているのだろう」


 個人的に興味があるので彼女は道具屋でどのようなアイテムを買うのかを教えてもらう。一流の冒険者はどんなものを揃えるのが気になったのだ。


「特に普通の冒険者と変わらんよ。でもポーションや治療薬の質にはすごくこだわる。過去に効かないポーションを買って酷い目にあったことがあるらしい」


 そんな会話をしていた時だ。また新たなお客さんが来た。店主の眉が上がり、その客こそがオリーヌだと教えてくれる。

 彼女は片手を上げて店主にあいさつをすると、ポーションを数本手にとってカウンターに持ってきた。

 間近で彼女を見るとギルドの男達がウキウキしていた気持ちがよく理解できた。

 ライトブラウンのポニーテールで顎のラインがとても綺麗な人だ。冒険者にしては肌はだいぶ白く、顔には傷どころかシミひとつない。

 切れ長の魅惑的な女に適度に高い鼻梁、口元は締まっていて強さと美しさを共存させている。 

 体系も良く、女性として出るところはしっかり出ているが、それより筋肉質な肉体に目を惹かれるな。

 服装は上半身はノースリーブで、下はショートパンツのような格好をしている。

 武器は……目立つ大剣を背負っている。クレイモアと呼ばれる類いのものだ。

 背も高いので扱うことに不思議はないけど、やはり女性の大剣使いってのはインパクトが強いね。

 彼女はポーションをまず一本だけ買ってそれを試し飲みした。


「……仕入先変えたの?」

「そういうわけじゃないが、そのポーションは優秀な錬金術師が作ったものでね。他のものより値段が高くなっているだろう?」

「本当ね。値段気にしないから全然気づかなかった」


 さすが高ランク冒険者様といったところかな。彼女はかなり気に入ったようでポーションを全部買った。


「エクスポーション、質の良いところから何本か仕入れてくれない?」

「あいよ」

「あとこれを作った錬金術師ってどこに行けば会えるの?」

「ここさ」


 店主はそう言って顎先で俺のことを指した。オリーヌは理解が早く、スッと腕を伸ばして握手を求めてきた。もちろん俺はすぐに応じて自己紹介をする。

 同じギルドの後輩だと告げると彼女の表情がさらに和らいだ。

 

「うちにこんな優秀な子が入ったのは嬉しいわね。あたしはオリーヌ・ロングストンよ。今年で二十歳だから年上になるのかな」

「……二十八です」

「嘘でしょ!?」


 どうも十歳は若く見られていたらしい。さすがにもう慣れたけどね。一応こちらでも目上の人に敬意を払うという風潮あるけれど、日本ほど強くはないのでフランクな態度は変わらない。

 そっちの方が俺としてもやりやすい。オリーヌは俺が錬金術師と冒険者を兼業していると思い込んでいたので、その誤解を解く。

 錬金術師でもないのにあのレベルのポーション作れるのかとまた驚かれた。

 個人的に話がしたいと言うので一緒に外に出ることに。その際、俺は適当に買い物をしておく。

 今晩あたり、錬金をしようと思ってるからだ。

 公園でお互いの身の上話をする。さすがに転生者ということは隠しておいた。

 オリーヌは別の国で育ったが、あまり自国が好きじゃなくてこの国に流れてきたようだ。

 幼い頃からが強く、剣の技にも長けたため、冒険者になるのに抵抗はなかった。

 そこからは一気にランクを駆け上がった。元々才能があったんだろうな。彼女は俺に興味があるらしく、これから一緒に魔物狩りに行かないかと提案してくる。


「俺はいいけど、ギルドに報告しなくていいのか?」

「いいのよ。依頼は成功したんだし、報告が少し遅れたってマスターも文句言わないでしょ」


 そんなわけで俺たちは二人で町の外へ出る。


「そういえば知ってる? フィラセムに物凄く頭の良い従魔がいるのよ」


 なんでも宿の客引きをする狼型の魔物がいるのだとか。美しい銀色の毛並みと愛らしい顔つき。少々片言だけれど人間の言葉を喋ると言うから驚きだ。いや驚きか? どう考えてもギンローですよねぇ……。


「可愛いから今晩はそこに泊まるの。でも主人はどんな教育をしたのかしらね。きっともの凄い従魔師に違いないわ」

「いや、従魔師ってわけじゃないんだけど」

「なんでユウトが答えるの……って、まさかユウトが主人?」


 首肯すると、一体何者なのかと割と深刻なトーンで訊かれた。大したものではありませんよと答えたけど、オリーヌの俺への興味が跳ね上がったようだった。

 俺たちは麦畑の広がるところに移動する。

 近くには村があり、そのそばには兵士の宿舎もあるようだ。


「ここは作物が取れるからね。兵士が在中しているのよ」


 村が魔物に襲われないようにってことだな。凶悪な魔物は出ないが猪系がよく出没するとのこと。

 しかし麦穂による黄金色の景色には感動を覚える。こういう美しいものってメンタルに良いよなぁ。だがのんびり楽しむことはできない。オリーヌがずんずん先に進んでいく。兵士から魔物の出る位置を聞いて移動すると、一体の猪の魔物を発見する。


「スタミナボアね。一体いるってことは、もう数体いてもおかしくないわ。ユウト、戦ってくれる?」

「了解」


 ここで戦闘力をお披露目するってわけだ。スタミナボアは初めて戦うが脅威は感じない。普通の猪よりは体格が大きく肉付きが良いけど、それだけに思える。

 ようやく俺に気づいたことから、感覚も大したことないのだろう。

 まさに猪突猛進してきたので、剣を抜きつつ跳躍する。相手の突進を躱しつつ、背中を斬りつける。

 痛覚からかスタミナボアは転んだが、すぐに体勢を直してまた突っ込んでくる。

 剣でも倒せるけど土魔法を使う。落とし穴だ。突進に合わせて前方に大きめの穴を作る。

 避けることも飛び越えることもできず、スタミナボアは穴に落ちた。まあ飛び越えてきたら剣で一刀両断してたけどな。

 鼻息荒く這い上がろうとするボアに雷魔法でとどめを刺す。電気を出して感電死させたのだ。

 オリーヌが小さく拍手して褒めてくる。


「予想してたけれど、さすがね。剣の腕もさることながら魔法の発動速度が素晴らしいわ。なによりその落ち着き。完全にベテラン冒険者の風格じゃない?」


 ここは謙遜しておく。あくまで雑魚相手だから。

 さて、次はオリーヌの番だ。少しうろつくとツガイなのか、二体のスタミナボアと遭遇する。

 目が合った瞬間に襲ってきたので一応剣柄に手をかけるが、彼女が俺の肩に手を乗せてウインクする。

 任せてっことだろう。

 オリーヌは右手で大剣抜くと、左手を猛進してくる二体に伸ばす。

 瞬間、スタミナボアの動きが目に見えて遅くなった。付与系か? いやでも二体同時にかけられるんだろうか? 

 二体とも、その場から動かなくなる。

 動きを鈍らせる付与系なら、ああはならない気がする。

 もしかしてこの人……。


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