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47話 海スライム


 元々ヒルスライムが棲む場所は湖だったのだが、そこに海スライムというタイプが移ってきた。

 しかし不思議なのは、こいつは元来海にいるのだとか。ここは内陸のため海スライムがわざわざやってくるのは余程のことだろう。

 海の環境がよほど悪くなった。または海スライムも別のなにかによって追い出された可能性がある。

 調査してみたいが、海スライムは普段水の中にいて、夜にだけ陸に上がる習性だそうで。

 ひとまず予定通り、ゴブリンを退治にいくとしよう。


「ヒールありがとうございました!」

「私たちにも丁寧な態度で、本当に感動しました」

「ユウトさんのファンになりましたっ。また会ったらよろしくです!」


 若いからか感情表現に素直だし、オーバーなところがあるね。俺は軽く笑って彼らと別れる。

 目的地の平原に到着後、ゴブリンを探して歩き回る。

 十体ほどいたが隠密スキルで背後に回り、そこから雷や炎の魔法で奇襲して始末した。

 特に怪我もなくギルドに戻ったところ、リンリンさんが先ほどの冒険者の話題を出す。


「ユウトさんのこと命の恩人だって言ってましたよ~」

「彼らも無事戻ってきたんですね、良かったです」

「最近、新人冒険者はユウトさんを目指すことが多いんです」

「俺も新人なんですよ……。それより、海スライムって知っていますか?」


 リンリンさんは、さすがにその辺の情報は早い。どこの湖に出るかまで教えてくれた。まだギルドに討伐依頼は来ていないものの、このまま放置されれば時間の問題だろうと話す。

 というのも海スライムは微量の毒を水中に出す。それが海であれば無視できるが狭い湖だと看過できない。

 水中生物が死んだり、人の中にも予期せぬ被害者が出てくるかもしれない。

 しかも海と違って外敵が少ないために、異常繁殖も懸念される。

 環境保護の観点からもよろしくはないな。


「今晩あたり、倒しに行ってみようと思います」

「ユウトさんなら安心ですが、くれぐれも無理はしないでくださいよ? 海スライムは粘着性の液体を吐いたりすると聞きます。この辺の魔物とタイプは違うと思いますので」

「了解です」


 単純にフリーPがほしいのもあるけど、ギンローを暴れさせたい気持ちが強い。昨晩なんかも、夜寝付けなかったみたいなのだ。

 運動量の多い犬なんかもそうだけど、日中の運動が少ないと健康に悪影響が出てくるかもしれない。

 そこは大人の俺がちゃんと管理してやりたい。

 相変わらず客引きをしていたギンローに話をすると、やはり魔物退治に行きたいとはしゃぐ。

 そこで早めの夕食をとってから少し仮眠させ、湖に足を運んだ。

 夜の十時頃になると、さすがに辺りは暗い。湖は思ったよりも広く、そこを囲む陸地には緑の木々が点在している。


「こんなに広かったのか。見つけるの大変そうだな」

『ドンナテキ?』

「スライムなのは間違いないんだ。一応、光で照らしてみるな」

 

 視界が悪いので光魔法を使用してライト代わりにしながら道を歩く。なるべく水際からは離れておく。

 気配察知スキルがあるとはいえ、いきなり登場されて攻撃されるのは少々怖い。

 水に沿って陸地を歩き続けるが特に敵は見当たらない。スライム以外の魔物もいない。


『ヤッパサー、ミズノナカ、イルトオモウナ~』

「まだ出てこないのかね」


 湖ってくらいだし水深は深いと思う。

 上がってくるのにも時間がかかるのかもな。

 気長にいこうとギンローに伝える。


『ハシル! ヒマダシ、ハシッテイイ?』

「運動だな。暗いから怪我しないように」

『アウウーーン』


 狼の遠吠えのような声をあげながらギンローはダッシュしてあっという間に遠くへ。

 俺は近くの木に背中を預け少し休む。三十秒もしないうちに遠くから声が届いた。


『イターー! イタゼヨーーッ!』


 早っ!?

 急いで移動すると、すでにギンローは三体のスライムと戦闘を始めていた。

 昼間戦ったのに形状などは似ているが、こちらはとにかくデカい。直径で一メートルくらいあるんじゃないのかあれ? 色は三体ともエメラルドグリーンで、水が滴っている。こいつが海スライムだろう。

 ちょうど湖が上がってきたところに出くわしたってわけだな。

 敵は跳躍力に優れており、三メートルほど上に跳んだかと思うとギンローを押しつぶしにかかる。


『アッブナァ!?』


 俊敏なギンローがモロに受けることはない。

 でも攻撃方法は多彩で水を吐いてきたやつがいる。


『ウワ、チョイカカッチッタ……』


 色は透明だったけど、こいつは水の中で毒をまいたりもする。体調が気になるので、俺もさっさと戦闘に参加する。

 一体に炎を噴射。効いてはいるけどすぐに蒸発はしない。暴れ回って炎から逃れようとする。

 その間に、次々とスライムが湖から出てくる。

 やっぱりヒルスライムより全然強い。

 そりゃあいつら追い出されるわけだよ。

 ギンローとの距離を見て、俺は爆炎矢を強めに放つ。轟音が夜の湖に響く。さすがにこれだと直撃で死ぬな。

 でも周囲のは即死じゃなく、すぐに散らばった体を集めようとしている。


「そうはさせるか」

『マッテェ!』


 燃やそうとしたら止められて面食らう。そんな俺をお構いなしにギンローは凍えるような温度の息を吐く。

 フリーズブレスだな。

 これによって海スライムの散らばった体が凍る。

 よく見れば、さっきギンローを襲っていたやつらも氷づけになって動かなくなっていた。


「燃やした方が速くない?」

『タベタイ~』

「そういうことね」


 アイスが食べたいお年頃なんだろう。俺は上がってくる海スライムの注意を引きつける。その間にギンローが凍らす協力プレー。

 三、四十体ほど凍らせたところで、ひとまず状況が落ち着いた。


『ツベテ、ツベテッ……』


 フリーズブレスも使いすぎると口の中が冷え冷えになるようだ。じゃあファイアブレスだと火傷するのかな。

 さっそく凍ったスライムを食べようとするギンローを俺が止める。


「こいつ毒あるかもしれない。慎重になった方がいい」

『ナオシテー。ヨロシクネー』


 随分あっさりとした返事をしてギンローはスイラムを食べる。

 何体か食べ終わる度、ハイキュアをかけてあげる。

 食べている間は暇なので、俺は手持ちのポーションを湖に流す。水が汚染されているかもしれない。気休めにしかならないかもしれないが、やって酷くなることはない。

 ポーションは錬金スキルで簡単に生産できるので大して惜しくもないしな。


『オヨヨ』


 ん、ギンローの様子がおかしい。フーフーと息を吐き出しているかと思いきや……

 ――ブュウウウ、と水を豪快に吐き出した。水の勢いは激しく細い木くらいなら水圧でへし折れそうだ。


「新しいブレス覚えた?」

『ミタイ。デモコレ、ツカイスギタラ、ノドカワクゥ……』

「脱水症状は気をつけたいな。あとさ、ただ水出すだけ?」

『ヤッテミル! サッキノ、ゲロッポイシネ』


 ゲロっておい……。

 ともあれ、海スライムみたいにネットリした液体に水を変化させられないか一緒に訓練する。俺は綺麗なところから水を汲んできてギンローの水分補給を補助する。

 三十分も練習したら、まず球状の水を出せるようになった。次に粘性のある透明な液体も可能に。


「名前はウォーターブレスでいいかな。これで三種類は使えるようになったな。球状の水は、目眩ましなんかにも役立ちそうだ」

『ネットリハ?』

「あれは動きを遅くしたり、あとは精神ショックも結構あるかも」

『カケテミテ、イイ?』

「ご遠慮願いたい」

『ウォエエエー』

「うおおおおお」


 ふざけてかけようとしてきたので、俺は当然全力で逃げます。

 もう夜なのに、服がベタベタになるとか勘弁してくれよ!


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