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27話 ユニコーンとの対決

 俺の後に登場するのは、優勝候補であるヨルハさんだ。

 美しい白馬は、ただそこにいるだけで確かな存在感を放つ。優雅さではダントツだった。

 言葉こそ喋れないものの、ヨルハさんが出す難易度の高い要求に全て応えて観客を沸かせた。

 審査員たちがつけた得点は……九十六点!

 そう、俺と同じじゃないですか。これは意図的なものか偶然か? まあ別にどっちでもいいかもな。

 決勝は俺とヨルハさんで争う。ステージの上で強さを示すのだ。


「ユウト君、キミのような青年と出会えて嬉しいよ」

「ヨルハ様。こちらこそ、お手柔らかにお願いします」


 主人同士の挨拶はこの程度で終わる。

 メインはあくまで従魔だしね。


『ガンバルゾォー!』


 気合い十分で元気いっぱいのギンローとどこまでもクールなユニコーン。

 目線が高いせいか少し見下されているようにすら思えるんだが。

 主催者が合図を出して勝負が始まる。

 ルールは単純で、相手が降参するかステージ上から相手を落とせば勝ちだ。主人は指示を出してもいいが、従魔が人に攻撃するのは禁止。

 ギンローが先手を仕掛け、直線的に突進する。……余裕だな?

 かなりの速度なのにユニコーンは微動だにしない。誘ってるのか? つーか、角が青白く光り出したんだけど。


「待てギンロー、ツッコむな!」

『ゥン?』


 疑問を覚えつつもギンローは進行方向を変えて突進を避ける。

 直後――ユニコーンの角が発電して、体に電気を纏う。 

 ひえー、危なかったわ。あのまま突進していたら負けてたかもしれん。


『ビリビリ……アブナイヨネ?』

「ああ、噛んだり爪を使うのは止めよう」


 ブレスで攻めるべきかな。こちらの思考の隙を突くようにヨルハさんが指示を出す。


「いつものパターンだ。そのまま追い込めっ」

「ヒウゥーン」


 ユニコーンは嘶くと、電気を纏った状態で疾走する。無論、ギンローは逃げる。追いかけっこの始まりだ。

 体はずっと大きいのに、案外小回りがきくから厄介だな。

 いまのところはギンローが捕まる様子はないけど……あれ? あいつなにやってんだ?


「ステージから落ちたら負けになってしまうぞ」

『エ?』


 聞いてないよ? といった感じでギンローが驚いている。スピードを落として止まろうとするが、そのせいでユニコーンに距離を一気に詰められる。


「もらった!」


 ヨルハさんが拳を固く握る。ぶっちゃけ、俺も負けたと感じる。上手く止まっても、ユニコーンのタックルを受けたら終わりだ。

 が、ギンローは進行とは逆の方に跳躍する。

 焦ったユニコーンが急ブレーキをかけた。ステージからは落ちなかったが、着地したギンローに背後を取られる。


「なんだと!? だがこちらを押し出せば、無事では済まないぞ」


 そう、電気の鎧がある。しかしギンローはためらわずにフリーズブレスを吹き付けた。

 なるほど、そういう手があったかっ。


「ヒヒィ……」


 急激に冷やされたユニコーンが苦しそうに喘ぐ。厄介な帯電もなりを潜め、無防備状態だ。


『チョイサッ』


 ギンローはかけ声とともに尻にタックルして、ユニコーンをステージから落っことす。

 数秒の沈黙が流れ……主催者が勝利のコールをした。

「優勝、ギンロー」

『ウェーイ!』


 俺の胸に飛び込んでくるギンローをしっかり受け止める。


「凄いじゃないか、狙ってたんだよな」

『ウン! ウマクイッタ!』


 指示したわけじゃないのに、あんな手を思いつくなんて。地頭は俺より良いんじゃないの?

 喜びにジャレあっていると、ヨルハさんが握手を求めてきたので応じる。


「完敗だよ。素晴らしい従魔だね」

「ヨルハ様のユニコーンも素晴らしい技をお持ちですね。危なかったです」

「……本当にシルバーウルフかね?」


 目を眇め、ヨルハさんがギンローを見つめる。

 そしてこちらが返事するより先に、続けて口を開く。


「私は過去に何体もシルバーウルフを見てきた。動きやブレスはともかく……その機転、利巧は並ではない。いくら良個体とはいえ、シルバーウルフとは思えないんだよ」

「……と言いますと」

「マーナガルムではないのかな?」

「聞いたことは、ありますが」

「警戒しないでくれ。誰にも言うつもりはない。そもそも私も見たことはない。確信はないんだがね」


 とか言いつつ、完全に確信してる様子なんだよなぁ。隠しても無駄っぽいし、信頼もできそうなので本当のことを伝えるかね。


「森で発見した魔物なんです。一時的か今は肉体の成長が止まりましたが、異常に成長が早かったです」

「第一次成長が終わったのだろうね」

「頭はどんどん良くなっていきます。さっきのもギンローの判断ですし」

「さすがレジェンド級の魔物だよ。従魔は人生のパートナーでもある、と私は考える。大切に育てるのだよ。そうすれば、絶対に従魔は応えてくれるのだから」

「ご教授いただき、感謝申し上げます」


 俺はお辞儀をしてお礼を述べる。今回は勝てたけど、ヨルハさんは従魔育成に関しては俺なんかより遙かに先輩だもんな。

 俺もギンローにもっと信頼してもらえるよう頑張ろう。


 さて、金貨のびっちり入った賞金とシルバーの指輪を授与された。一見普通の指輪っぽいこれが風神の指輪なんだな。

 みんなのアイドルになったギンローと一緒に俺は会場を後にする。結構誇らしい気分になるな。

 ソフィアとは定食屋で合流した。


「二人ともカッコ良かったです! 最初、観客たちはみんなユニコーンが勝つって言い切ってたのに、最後は顎が外れそうになった人もいたんですよ」

「あははっ」

「人と従魔の信頼関係っていいですよね。私もギンローみたいな子が欲しいですよ」

 羨ましそうにするソフィアを見て、俺は優勝賞品のことを思い出す。

「ああそうだ、良かったらこれ使う?」

「風神の指輪じゃないですかっ」

「俺は風魔法は覚えてるし、特にいらないんだ」


 彼女は信頼できるので、フリースキルのことも伝えておく。

 それでも、やっぱり遠慮してきたな。


「これから盗賊退治だろ? 役立つと思うんだ」

「先生には剣を作っていただきました。なんだか悪くて」

「少なくとも、今はパーティなんだから遠慮するなって。最善と思う行動をしているだけだよ、俺は」

「先生ィ……!」


 目をウルッとさせて見つめられると、さすがに照れるね。

 ともあれ指輪を受け取ってくれたので、良かった。

 食後、町の外に出て風神の指輪の効果を試してもらう。突風を起こしたり、相手の足下から風を巻き起こしたりできるも可能だ。

 ただ、持ち主の魔力を消費する。あと連続で風を発生させることはできない。

 それを差し引いても有用だけどな。ソフィアの戦闘の幅が広がるわけだし。


「先生のおかげで、どんどん強くなれそうです」

「盗賊退治、期待してるよ」

「先生の期待に応えられるよう、頑張りますねっ」


 弾けんばかりの笑顔が可愛いね。

 それはともかく、盗賊退治はいつ頃になるんだろうな。Aランクパーティはもう到着したんだろうかね。

 念のため、連携の練習でもしておきますか。


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