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16話 Dランク昇格試験

 教官は、単刀直入に試験の内容を大声で告げる。


「アモズの森にいるアーマーオークの死体を持ってくること。制限時間は三時間だ」


 意外にも普通だな、と俺は感じる。だが、他の受験者たちはまるで違う反応を見せた。


「アーマーオーク……クソ、最悪だ」

「今回は、ダメだな……」


 なんだこの諦めムードは。魔物がよほど強いのだろうか? 驚く理由がわからない。

 一人の受験者が質問をする。


「死体は、一部の持ち帰りでいいんですか?」

「ダメだ。バラバラでもいいが、頭、胴体、両腕両足は必須だ」


 オークは巨体な豚の魔物。普通に重い。そのまま運ぶと大変だからバラすのはオーケーってことかな。

 教官はさらに、続ける。


「ルールは単純、他の受験者を殺してはいけない。あとオークは一人一体必要だからな。それ以外なら、何でもありだ」


 みんながザワつく。中には受験者で相談する者もいた。

 つまり、ターゲットの魔物を横取りしてもいいってことだよな? 早い者勝ちって認識で良いとは思う。

 一応確認するため、俺は挙手をして質問する。


「三時間以内に死体を持ち帰れば、順位に関係なく合格ですか?」

「うむ、合格だ。無事持ってこられれば、な」


 なにか含みがあるような言い方が気になる。っていうか、教官が少し俺を挑発するようにニヤつく。


「ユウト、お前は非常に優秀だから、運が良ければアーマーオークも倒せるかもな」

「運が良ければ? そんなにアーマーオークって強いんでしょうか」

「フッ、やってみればわかるよ。お前ならこの外れ試験も合格できるかも、な」


 外れ試験? なにか裏があるっぽいなー。ただ、あまり考える時間はない。

 教官が始まりの合図を出したからだ。さあ、ここから一斉にオーク争奪戦が始まるのだろう。


「急ぐぞ、ギンロー。出し抜かれないようにしないと!」


 俺はさっさと走り出す。他にも動きが速い人は何人かいて、併走する形でしばらく進む。


『ユウトー、チョットミテ!』


 ギンローに呼び止められ、俺は走るのを止める。早速敵を発見した――ってわけじゃなかった。


『ヒト、スクナーイ。イリグチ、アツマッテルヨ?』

「……確かに」


 よく見れば、森の奥に走って行くのは俺を含めて三人だけ。残りの人は追ってこない。遠くにある入り口付近で立ち止まったり、木陰に隠れたりしている。

 アーマーオークの場所がわからないのか? いや、でもそれは俺も同じだ。入り口で待機して会える確率は相当低い。


「あんた、知らねーのかい?」

「はい?」


 おっと、先に行ったと思った人が立ち止まってて、話しかけてくる。ロン毛で三十歳前後の男性で、弓を装備している。


「この森には、強個体が多い。知ってるかね」

「ええ、その話は知ってます」

「中でもアーマーオークがヤバい。強個体しかいないって思うほど強いのばかり」

「Dランクなのに、難しいんですね……」


 そう答えると、彼は意外そうな表情を浮かべる。


「知らなかったのか……。Dランク試験は三種類ある。で、今回のが一番難易度が高くて、一人合格者が出れば良いと言われている」


 試験官が外れ試験って口にしていたのは、そういう意味ね……。俺は日が浅いから知らないだけで冒険者の間では有名なのかな。

 さて、ここで俺もようやく気づいた。


「あの入り口で待ってる人らは、初めから魔物と戦う気はないんですね」

「大正解。奴らはハイエナ戦法を取るつもりだ」


 彼は呆れた様子だった。強いのと戦うより、疲れ切った冒険者から横取りする方が確率は高い――そう考えたのだろう。

 せこいけど、ルール上はなにも問題ない。


「あんた、収納スキルは?」

「一応あります」

「ヒュー! さすがSランク評価者。もし良かったら、おれと組まないかい? 協力すりゃ、お互い合格率が上がる」


 ここで懸念すべきは騙されないかってこと。

 試験は死体が必要。そして俺は死体なら収納しておける。試験官の前で俺が出さなければ、彼も合格はできない。

 今までの情報も正確そうだし、手を組むのもありかもな。


「アーマーオークの情報はあります?」

「もちろん。交渉成立なら当然教える」

「わかりました、協力しましょう」

「そうこなくっちゃな! おれは普段はソロ活動に徹している弓使いだ。こう見えてロイって呼んでくれ」

「ユウトです」


 お互い、まずは能力などの自己紹介をする。彼は弓使いだが剣も扱え、ヒールも使えるらしい。ソロプレイヤーなだけあってバランスが良い印象だ。

 俺は剣を扱い、火水風土雷の魔法、また回復ではハイヒールを使えると伝える。


「マ……マジなの?」

「マジですね」

「すげえルーキーが、いたもんだ……。こりゃ、おれはラッキーだったよ。だが油断はしないでいこうぜ」

「はい。問題はオークをどうやって発見するかですね」

「そこは、おれに任せてほしい」


 ロイはオークの生態に関する知識があり、行動パターンを把握しているとのこと。

 実際に、この森でやり合ったこともあると。移動しながら、そのときのことを教えてくれる。


「おれが戦ったのは子供だ。そんでも相当苦戦した。で、一応追い詰めたけど硬化系スキルを使われて勝機がゼロになった」


 ロイは、アーマーオークの特徴を余すことなく話してくれる。

 名前にあるよう、鎧を纏ったみたいに堅い魔物。しかし、追い詰められるとより堅くなるスキルを発動すると。

 そうなると、並の武器じゃ歯が立たなくなるようだ。そうなる前に、勝ちきる必要がある。


「――いたぞ」


 俺たちは木陰に隠れる。森の中に流れる川の前で、二体のオークが戯れている。

 顔は豚っぽいが二足歩行で皮膚は灰色だ。

 意外にも身長は俺たちとあまり変わらないな。横にはデカイし、筋肉の発達は相当なものだが。


「あれは子供だ。川辺が大好きで、よく遊びに来る。けど油断はダメだ、子供に殺された冒険者を何人も知っている」

「問題は、親が来ているかどうかですね。ギンロー、なにか匂いは?」

『ウーン、ケモノノニオイ、ツヨスギー。ヨク、ワカラナーイ』


 となると、近くで親が見守ってる可能性は捨てきれない。

 時間的にはまだまだ余裕がある。少し隠れて様子を窺うことにした。死体は成体じゃなくてもいい。子供を狙った方が安全ではある。

 しかし、硬化する体質ね。

 魔法でもそういうのはある。付与魔法に分類される


「……取っておくか」

「なんか言ったかい?」

「いえ、なんでもありません」


 付与魔法は、主に能力アップ系とダウン系を覚えていく。オンラインゲームでいうバフ、デバフだな。

 バフが能力強化、デバフが能力弱体だ。

 付与1では反射神経強化のバフ魔法を覚え、2になると筋力低下のデバフを覚える。

 今回は成長を待ってられない。


 付与魔法2を1200Pでゲットする。

 フリーPは約2000Pあったので、問題ない。

 付与魔法は、距離が遠すぎるとかからない。

 近いほど良いが、二、三メートル以内ならいけるだろう。 


「ロイ、オークって付与魔法入りやすいですかね?」

「ゴブリンやオークは、入りやすいぜ」

「筋力低下使えるので、そろそろ攻めてみましょう」

「どんだけ、魔法使えるの……?」


 きょとーん、として驚くロイ。羨ましすぎる、と口にしてから弓を構えた。

「おれが打ったら攻めてくれ。いいよな?」

「了解です」


 ビュッ――

 ロイが矢を放つ。腕は確かで、遊んでいたアーマーオークの側頭部に鏃が刺さった。

 俺とギンローが木陰から飛び出し、戸惑っている敵に襲いかかる。


「ガゥウ、ガルゥウウ!」


 俊敏性に長けるギンローが先に無事だった方のオークの首元に噛みつく。

 そこで俺は、頭に矢が刺さってフラフラしている方を狙う。

 隙だらけだったので、喉元に剣を突き刺した。


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