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12話 魔石を手に入れたくて

昨日分も含め本日は2話分更新しております。こちらは1話目です。

 ソフィアの人生のターニングポイントが、明日に迫った。

 前日の今日は、早朝の訓練も行う。青鳥亭に彼女が訪ねてきて、裏庭で明日のシミュレーションをしていた。

 ちなみに、俺は大剣を使ってなるべくドーガさんの動きをコピーして戦う。二時間ほど動きっぱなしだと、ソフィアも俺も汗だくになった。


「ハァ、ハァ、ハァ」

「よし、あとは休んで夕方に最後の訓練だ」

「はい!」


 着替えをして宿のテーブルに座る。


「私、こういう宿に泊まったことないんです。一度、泊まるのが夢で……!」


 宿内をキラキラした瞳で彼女は見回す。貴族のお嬢様には新鮮な空間らしい。

 朝食に誘ってみたら、彼女は悩みまくった末に首を横に振る。


「すごく嬉しい誘いですけど……これから走り込みをしますので」

「オーバーワークには気をつけて。明日、本気を出せなかったら意味ないぞ」

「肝に銘じます。先生も良い一日を!」


 そう言うと、本当にランニングに出てしまった。逸る気持ちもわからなくはないけどな。

『マモノ、タオシテーナァ』

「あはは、どうしたギンロー」

『カラダ、ナマッチマッター』


 宿の客の口調を真似てるのだが、ギンローの本音も含まれているだろう。犬もそうだが、犬種による適切な運動量がある。

 ギンローくらいの狼の魔物だと、一日に動く量は相当なものになるのだ。


 そこで、今日は午前中から依頼をこなすことにする。ギルドに入るとナスカが喜色満面に迎えてくれる。


「アニキ~、美味しい情報仕入れたよっ」

「お、いいね」

「実はさ、ロマーネ街道に熊に似た魔石獣がちらほら出没するらしいってさ」


 魔石を持つ獣だろうか。俺のイマイチな反応でナスカが驚いて眉を上げた。


「もしかして、魔石知らないの?」

「聞いたことはあるんだけどなぁ」

「アニキってすごい人なのに、基礎的なことが抜けたりするんだねぇ」


 異世界人なもので、どーもすみません。でも魔石は錬金術に有用だという知識はある。

 魔石は強い武器や装飾品を作成するのに有用なのだ。他にも使い道はないか、ナスカに教えてもらう。


「種類や大きさにもよるけど、持ってるだけで魔力量が増えたり、魔法が強くなったりするよ。錬金にも使えるから高値で売れるし」

「魔物にも魔石を持たないタイプがいるんだな?」

「っていうか、体内に持たないタイプの方が多いね。だから貴重なのさ」


 なるほど、つまり争奪戦になってもおかしくない。ナスカはこの情報を酒場の商人からこっそり教えてもらったらしい。

 まだ噂はそこまで広まってないが、モタモタはしない方がいいと話す。


「早い者勝ちだよ」

「ナスカも狙ってるのか」

「アタシには強い魔石獣はムリムリ! 大人しくスライムでも狩ってくるよ。じゃーねアニキーッ」


 本当に情報だけくれて出て行く。もし上手く魔石を入手できたら、彼女に情報量としていくらかあげよう。

 今日は依頼は受けず、ロマーネ街道を目指すことに決める。フィラセムから歩いて半日程度で街道に入る。


「軽くジョギングしよう。ギンローも走りたいだろう?」

『ハシル!』


 町を出てから駆けっこでストレス発散をする俺とギンロー。十分も走ると、明確に人間の限界値を知らされる。

 やっぱりギンロー、速すぎるわ。身体能力スキルの恩恵で、俺も全体的に能力は上がっているし、地球の短距離チャンピオンよりも多分足は速くなっている。

 それでも魔物にはまるで叶わない。


「個別に強化しておくかね」


 実は、重複する形でスキルを乗せられる。体力2、怪力2、敏捷2の三つを会得して、より身体能力を高めることにした。

 今の俺のステータスはこんな感じだ。


 スキル:オゾン語8 収納2 隠密1 気配察知2 錬金術3 視力3 嗅覚2 聴力2 身体能力4 体力2 怪力2 敏捷2 投擲3 拳術2 剣術6 剣術指導6 槍術1 斧術1 鎚術1 弓術3 盾術1 火魔法4 水魔法2 風魔法2 土魔法3 雷魔法2 回復魔法5 物理耐性2 魔法耐性1 全状態異常耐性3 魔力調整3 魔力増量3 従魔6 全スキル成長10


『アッレ、ハエーク、ナッタ!?』

「どうだ、速えーくなっただろう!」


 体力もつき、韋駄天走りも覚え、おまけに腕力もアップさせておいた。

 調子に乗ってギンローを追い抜き、ほらほらこっちだよ~と手を振って挑発。

 結果、ガチになったあいつに普通に抜き返されて、しかも置いていかれる形に。


「待ってくれよギンロ~ッ」


 何ともかっこ悪い主人の誕生である。

 街道に到着すると、周囲の気配を俺は窺う。今のところ変な気配は感じないな。

 街道は馬車が二台並んでも通れる広さで、両脇を木々などの自然に挟まれている。


「魔石獣は熊に似ているって言ってたな」

『クンクン……ユウトー、チノニオイ、スル』

「行ってみよう」


 ギンローは真っ直ぐに進む。横道の茂みに入ることはなかった。

 そして、血の臭いの原因が判明した。人が三人、血を流して倒れているのだ。

 装備を見るに冒険者か傭兵あたりだろう。


 二人死んでおり、残る一人も首をかっ裂かれていた。


「俺の声が聞こえますか!」

「ヒュー、ヒュー……」


 男性は息も絶え絶えといった様子だが、目だけはこちらに動かした。いけるかもしれないな。

 俺はハイヒールで首元の治療に当たる。魔力調整も使って効果をアップさせる。

 彼が、生気を取り戻す。


「ああぁ……楽に、なった。ありがとうっ」

「魔物に襲われたんですね?」

「俺たちは隣町に行く商人の護衛で、馬車はあっちに逃げた。仲間が戦ってるはずだ」


 魔石獣なら一石二鳥ではある。向かおうとすると、彼が焦って呼び止めてきた。


「行かない方がいい! 熊っぽい魔物だが異常な強さなんだ。せめてCランク以上の冒険者でもないと、太刀打ちできねえよ」

「Eランクの新人ですが、やってみます。危険なら逃げますので」


 俺はギンローと疾走する。

 彼の言うとおり、他の護衛が巨大な赤毛の熊と戦闘中だった。馬車は半壊しており、商人が外に出ている状態だ。


 やられた護衛は二人。劣勢ながら戦うのが四人。護衛を十人近く雇うとは、金のある商人だな。


「冒険者です、助太刀します!」

「気をつけろ、このレッドベアはクソ速いぞッ」


 確かにデッカ……。四メートルは超えてるな。赤い羆って感じで、二足で立って両手を広げている。

 あの肉厚じゃ、俺のショートソードの刃が通るか怪しいぞ。


「グゥ、グゥゥゥウウア!」

「ガルルルルゥ!」


 ギンローと威嚇し合っているので、俺はゆっくり側面に回る。視線で合図を送ると、ギンローがレッドベアに飛びかかる。

 と言っても単純にではなく、高い俊敏性を活かして翻弄する形だ。

 楽に背後に回り込むと背中に牙を立てた。


「グォオオ!?」


 レッドベアは腕を後ろに上手く回せず、背中にいるギンローにやられっぱなしだ。

 俺は尖岩弾を強く撃つ。上手く突き刺さってくれた。

 レッドベアはすぐに異物の岩を弾き落とし、俺に突進してくる。そこで木を蹴って高く跳躍し、魔物の上を通過。


 樹木に衝突して頭を振るレッドベアに、以前作った毒ナイフを投擲した。先ほど尖岩弾で傷つけ、血肉が見える箇所を狙う。


「上手く入った。ギンロー、離れていいぞ」


 一旦離れさせ、雷魔法で電撃を飛ばしたりなど、体力を削る。数分で毒が回ってレッドベアは倒れて痙攣する。

 俺は収納スキルで大剣を出し、首に叩き落とした。

 戦闘が終わると、まず倒れている人を治療。一人は死亡していた。残る人はハイヒールで怪我を治せた。

 魔力は余裕なので残る護衛も回復。


「九死に一生だ。助けてくれてありがとう!」 

「あんた、すげえよ! あんな化け物相手によく冷静でいられるな」

「そっちの従魔も頑張ったな。かっこいいわ」

「まだまだですよ。ところで、あの熊から魔石を取りたいんですが、どなたか手伝ってもらえませんか」


 みんな、快く協力してくれた。魔石は、大体心臓のあたりにあることが多いようなので、全員で解体作業に入る。

 肉の中に黒っぽい石を見つけ、俺は掴み取る。五センチほどのゴツゴツした石だ。


「そいつが魔石だよ。おめでとう」


 目的の魔石、ゲットだぜ!


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