表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/37

第15話 はじめての機械パーツ【レアドロップ】

 

 岩甲虫(ロックビートル)がその姿を変えて、機械パーツに変形していた。

 岩に覆われたような外観は、灰色の鉄板を何層にも重ねたようなものになっている。

 さらに裏返すと、ダンゴムシのようについていた足は、鉄製の結束バンドのようなものに変わっていた。


(シールド)ね。補助武器だわ。腕に装備出来る」


 リアがそう言って、岩甲虫の盾を持ってくる。


魔物(モンスター)が機械パーツを落とすなんて滅多にないわ。やっぱり今の岩甲虫はネームドモンスターだったみたい」


 先程も聞いたネームドという言葉。

 なんだろう、という感じで首をかしげる。


「ネームドっていうのは、同じ魔物の中でも特別強くなった存在のことなの。今の岩甲虫の名前の前にさらに名称(ネーム)がつけられる。素早い岩甲虫とか熟練の岩甲虫とか」


 なるほど、ただのザコモンスターではなかったということか。


「そういう特別な魔物しか、機械パーツは落とさないわ。最初に戦った魔物からそれが出るなんてすごいラッキーだよ」


 機械パーツが出たからか、リアはかなり上機嫌だ。

 鼻歌混じりに機械パーツを俺の左腕に装着してくれた。


「おーー、かっちょいいよ。イチ」


 本当だろうか?

 左腕にダンゴムシ型の盾が付いているのは、巨大な虫に張り付かれているようで、落ち着かない。


『補助武器が装備されました』


 戦闘機械人形(アーマードオートマタ)試験用(トレーニング) 28式七号機


 頭部 【HD-AKAHEL】

 胸部 【KKK-SS】

 右腕部 【AY-12R】

 左腕部 【AY-12L】

 右脚部 【LY-31R】

 左脚部 【LY-31L】

 エンジン 【GBG-1000】

 ブースター 【なし】

 メイン武器 【なし】

 補助武器 【SH-ARMADO】

 (コア) 【犬飼 一郎】

 木偶(デク)岩巨人(ゴーレム)


 情報が頭に流れてきて、補助武器のところに【SH-ARMADO】と追加される。


 SHはシールドの略だろうか?

 英語は苦手だったのでわからない。


 そう思った時、さらに情報が流れてきた。


 補助武器【SH-ARMADO】


 効果【シールド 】耐久力1200


 追加効果【ロックビートル弾】単発式


 そういえばサクラが岩巨人と戦闘している時も、腕の機械パーツの情報が入ってきた。

 装備した機械パーツの情報は疑問に思えばいつでもアナウンスが流れるようだ。すごく便利。


 しかし、ここで更なる疑問が生まれる。

 追加効果のロックビートル弾とはなんだろうか。

 疑問に思うと同時に再び情報が入ってくる。


【ロックビートル弾】


『肘部位側面にあるスイッチを押すことにより、攻撃型に変形。単発式の弾丸として発射されます。ただし、自動で戻ることはないので発射後は自ら回収し、再び装着してください』


 肘部位のスイッチ?

 確かに肘ところに小さな突起が付いている。


 触ってみると、カチリという音がしてスイッチが押し込まれた。それと同時に。


 ギュルルルッ、と盾型の形状が突然変形し、丸型になる。

 左腕の上にバスケットボールぐらいの鉄の塊が出来上がり、その場で高速回転している。


「えっ、何っ? イチ、なにしたのっ」


 驚いたリアがこちらを見る。

 俺も突然の事でなにがなにやらわからない。

 動揺して、リアに状況を説明しようと左腕の鉄玉をそちらに向ける。

 それは最悪の選択だった。


 ボンっ、という爆発音と共にリアに向かって、鉄玉が発射される。


「っみぎゃあああ!」


 鉄玉はリアの頭上スレスレを飛んでいき、ダンジョンの奥の壁に当たる。

 あ、危ない。

 もう少しで助けなくてはいけない姉妹を殺すところだった。


「イチっ、あんたっ、なにしてるんっ」


 激怒して関西弁になっているリアに向かって、必死に謝る。

 ジャパニーズ土下座。床に頭を擦り付ける。

 この世界で土下座の意味はわかるのだろうか?


「はぁ、もういいよ。知らなかったみたいだし」


 奥の壁で転がっていた鉄玉をリアが転がして持ってくる。


「でも気をつけてね。帰って鑑定するまで詳しい使い方はわからないんだから」


 実はアナウンスで知っていたのだが、納得しているようなので黙っておく。もっとも話そうにも話せないのだが。


 リアが持って来てくれた鉄玉を左手に再び乗せると、パタパタパタ、と玉型から盾型に変わっていく。

 これは中々、いい拾い物ではないだろうか。

 攻防一体の補助武器。

 欠点は一度発射してしまうと、再装備がかなり面倒なことぐらいか。

 いや、この玉と腕をワイヤーか何かで繋げたら、発射後もすぐに回収できるのではないだろうか?

 そう思って、リアのほうを見る。


「え、なに? 私が可愛いからって惚れたらダメだよ」


 じっ、と見ていたらリアが、赤くなって目線を逸らす。


 ジェスチャーでなんとか伝えられないか。

 手で玉の形を作り、次にヒモの形を作り、それを繋げるジェスチャーをしてみる。


「え? なに? アップル? ペン? 合体させて、アッポーペン?」


 ふるふると首を振る。

 この世界のお笑いの文化は、俺がいた世界と似ているのだろうか。

 予想外の回答に戸惑ってしまう。

 そういえば最初にシェーーのポーズもさせられていた。


「違うの? じゃあなんだろ?」


 盾を指差し、その後釣りをするポーズをする。

 リールを巻くような動きをして見せる。


「盾を釣る? 糸で回収するってこと......、あっ、そうか、玉と腕をヒモで繋げて、撃った後、すぐに回収したいってことだね」


 伝わったっ。嬉しさのあまり、何度もうなづいてしまう。


研究室(ラボ)に予備のワイヤーがあったから出来るかもしれない。お姉ちゃんの補助武器もワイヤー系だから、構造を真似してみようかな」


 おお、なんだかうまくやってくれそうだ。

 今のままでは、リアやサクラの足を引っ張ってしまう。なんとかこの新しい装備で少しは強くなっていきたい。


「よし、じゃあ一旦研究室に戻ろう。まさか地下一階の序盤で終わるとは思わなかったけど、ネームドを倒してレアドロップしたから上出来だよ」


 結局、何も活躍出来ないままに最初のダンジョン探索が終わる。


 次はもっと強くなって戻ってくる。

 リベンジを誓いながら、俺とリアはダンジョンを後にした。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ