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私は勇者です。

「おぉ勇者よ!死んでしまうとはなさけない!!」

これはそんなセリフが耳タコになったとある男の物語である……






みんなは「主人公補正」って知ってる?

主人公補正っていうのはね……

例えば主人公には特殊な能力がある、とか

引きこもりクソ童貞なのにハーレムが出来ちゃう、とか

とにかく強い、とか

まぁここで小説をよく読む人なら分かるだろうアレだよ。


そして私はこの物語の主人公。

ひとことで役職を表すなら「勇者」です。

はい。

……自己紹介はとりあえずこんな感じでいいかな。


あ、いや、実は今絶賛戦闘中なんですよ。

村から出てちょっと経験でも積もうかなって思ってたら早速エンカウントしちゃって。

敵は2体、プルプルした青いスライムとコウモリの羽のついたうさぎ的なやつ。

RPG好きなら分かってると思うけど、見た目ザコ中のザコ。最初の敵。カワイイ系モンスターたち。

……いやいや侮っちゃダメだからね!?普通の野良動物とかと一緒に考えちゃいけないからね?

どうせ「ザコ敵じゃん、すぐ倒せるだろ」とか思ってたでしょ?

それは君たちが画面の向こうでボタンポチポチしてるだけで良いからそんなこと言えるんだよ?

実際考えてみて?いきなり魔物が襲いかかってくるんだよ?2体も。

車運転してて脇道から一匹の狐が横切るだけでも心臓に悪いのに、それがこっちに牙向いてくるんだよ?

ってこの例え、田舎に住んでる人しか分かんないか。


ていうか、こうやって話しながらでもやっぱり絶賛戦闘中なんだよね。

いやほらモンスターたちには私の事情なんて分からないし分かるはずもないから。

……っとあぶね。

私が勇者だってことも、読者様に状況説明する義務があるってことも……ひゅっ、やつらはお構い無しで全力で襲ってくるからね……っつ。

くっそ、なかなか素早いなこいつら。

え?「なにザコ敵ごときに手こずってるんだ」って?

おまっ……画面の向こうでボタンポチポチしてれば良いからそんなことが(ry


だってこれ、さっきから言ってるけどただのうさぎじゃないからね?

コウモリの羽なんてついてるし、牙だって鋭いし長いし、筋肉だってしっかりついてるから、普通のうさぎとは全然違う動き繰り出すからね。

トリッキーっていうの?とにかくヤバい。

こいつにエンカウントしたらまずは羽を削ぐべし。

ただのマッチョうさぎになったらだいぶ楽……


……ちょっと疲れてきた。

喋りながらモンスターと戦うのはなかなかにハードだな。

ゲーム実況とか、できないタイプだし……

体動かしながら実況できる人すごいと思うマジで。

ん?「大した文量にもなってないのに?」?

そういうツッコミはやめてあげて。作者も一応自覚してるらしいから。


……てか、そろそろね、私の体力が、やばい。

うさぎのほうは倒せそう。そろそろ出血多量で、倒せるはず。

生々しいって?

「HP」?そんなもん……見えるわけないじゃろ。

問題はね、スライムだよね。

あいつ……切っても切っても死なないからね……。

ていうか素直にコアを切らせてくれないって、いうか。

ぬるんって逃げよる……。

切っても切ってもまた纏まりやがる。

あっうさぎタヒんだ。

え?なに?物理がダメなら魔法で焼き払えって?

魔法なんて、なんも知らんよ。

あれって呪文の発音とか難しいんでしょ?たしか。知らんけど。

っあー、くっそ当たらね。

鞄も重いしさぁ…武器とか防具も重いし…。

あぁもう疲れた、冷たい水が飲みたい……。






……っ!?


……くそっ油断した!

スライムが顔めがけて跳ねてきた!

まるでスローモーションのように。


火照った体にひんやりとした心地のよい冷たさが顔を覆う


いや、心地よいわけがなかった


息を吸うたびに、鼻孔に、口に、スライムが寄せる


肺が凹むばかりで膨らまない


酸素が足りなくなってきた


頭が痺れてきた


くるし……っ


やば、視界が……


空の澄んだ青が

草の豊かな緑が

徐々に端からブラックアウトしていく


勇者だって、呼吸ができなくなれば、


死にます。
















「……おぉ勇者よ!死んでしまうとはなさけない!!」

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