変化が訪れるのはいつも突然
日が暮れ静寂が屋敷を包む中一つの部屋の窓から明かりが漏れる。
そこは、屋敷の主の部屋、時刻は真夜中と言ってもいい時間にそこには明かりが灯されていた。
部屋の中には二つの影、一つはどこからどう見ても貴族と言える雰囲気を持つ長身の男性。
もう一つは、長い艶のある黒髪で椿の花をあしらった着物を纏う女性。
「久しぶりだね、虚無の書、いや、ルリエール」と男性が言う。
「今はグリアよ」と女性が不機嫌そうに返す。
「そうだったね。やはり君はウィル、ウォレスと契約したんだね」
「えぇ、そうよ何か問題でも?」女性が返すと男性は「いいや、感謝しているよありがとう」と女性を見つめ頭を下げる。
「あの子には、頑張ってもらわないと、何せ次期領主様だからね」
「ウィルはきっといい領主になるわよ」と女性が返し男性が「何故だい?」と聞くと「それを私に言わせる気?」と返ってきた。
長い沈黙が間を作りに男性が、
「ウィル、いや、サイトウマコトには頑張ってもらわなきゃいけないんだ、この世界の為にもね」
館をふたたび闇が支配した。
太陽が上り、セルビア姉様の魔道書の訓練の時間になる。
「今日は、人型以外の具現化術の練習をするわ」と、セルビア姉様がいつものように授業を始めた。
やり方は、簡単で本人のイメージ次第に姿を決めて具現化させるだけらしい。
グリア、どんな姿がいいかい?
そうじゃの、なるべく可愛いものがよいの
んー、猫とか?
猫かーまあ、主殿がイメージしやすければそれで良いと思うが
んー、じゃあ猫からいきますか
魔道書が光を放ち、宙に浮き輝きが強くなる。
輝きが弱くなりそこには黒い猫が一匹現れた。
『ニャー』
成功したかな?
『ニャー』
どうやら成功したようだ。で、えーっと元に戻すには、人型の姿を思い浮かべていると、猫の姿のグリアが光りだす。
輝きが収まり人型のグリアが現れる。
『ふー、猫というのも悪くないのう』と、首に手を当てて首を左右に動かす。
その後も、具現化術の練習を繰り返し屋敷に帰宅した。
その日、夢の中でとても悲しい体験をした、どんな夢かは思い出せないが、とにかく悲しい気持ちだった。唯一覚えているのは、虚無の書と、呼ばれる魔道書と、謎の女性とが謎の光の中に入っていき俺はそれをただただ見ているだけで、何も出来ずにそこで夢は終わった。
何かの、知らせだろうか、ほら、虫の知らせなどと言うものがあるのだから、夢の知らせがあってもおかしくはないだろう。
この時、俺は、まあただの夢だしと割り切ってしまった、それが後悔となる事を知らずに。
朝食を済まし、セルビア姉様といつものように練習と、行こうとしたのだかセルビア姉様が見当たらない。
仕方なく使用人に居場所を聞くが知らないという。
どこに行ったのだろうか?
しばらくして、街の近くの草原にセルビア姉様がいると聞き草原へ向かった。
セルビア姉様の傍に行くと、俺の事を見ていないのにまるで俺が見えているかのように話しだす。
『ウィルさー、これからどうしたい?』
なんだ、唐突に。しかしこれからか、これからと言ってもまだまだ俺は子供だ、今は魔道書の練習をしたり、剣術の練習をしたりするしかないだろう………。
『私はね、最も強くなりたいと思ったよ、何せ、あんたは1発で具現化術を成功させたりしてさ、正直すごいと思ったよ』
セルビア姉様はそんな事を考えていたのか、以外だ。
そういうのには無頓着だと思ってたのだが。
『ウィル、私は旅に出ようと思うよ』
ここまでお読み頂きありがとうございます。
更新が遅れてしまい申し訳ございません。来週から復帰できそうなので更新させて頂きました。
次回は、来週の日曜日三月十三日を予定しております。多少変更があるかも知れませんがどうかご容赦を。