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体罰ラベル

「あら、ここのバスケ部の先生レベル3だわっ。」

「悩みどころよね。5はさすがにちょっと怖いけど、3くらいならむしろ子供のためになるかもって思っちゃうのよね。」

「あら、あなたは3まで容認派なの?私のところは無理。旦那が、1以外は認めないって言っているから。」

「えっ!?でも1の先生が多いところは子供たちがかなり荒れているって聞くわよ。」

「そう、私もそちらの方が怖いと思っているのだけど、旦那はきちんと言って聞かせばわかる筈だって頑として聞かないの。まあ、うちの上の子がそれで上手くいったのもあるから仕方がないのだけど。」

「進学校なら1の先生が多いところもあるだろうけど、お子さんの成績の方は大丈夫なの?」

「そこが悩ましくて。旦那はお前の躾が悪いと言うばかりで全然子供の勉強を見てくれないし。実際、中学校の先生からはトップ校はかなり難しいと面談で言われたのよ。」

「でも、次のレベルの学校ではオール1ともいかないでしょう。」

「ええ、だから中学の時はじめたバスケット部の顧問の先生だけでも1だったらいいなと思ってたんだけど。他の先生はレベル2が多いのにバスケ部の顧問だけ3だって。強豪校だから仕方ないのかしら。」

「まあ、私からすれば3くらいが丁度いいんじゃないかと思っちゃう方だから、あまりいい助言はできそうにもないわ。」

「遠距離通学できれば、うちの子でも入れそうでそういう方針の学校もあるんだけど、旦那にどう説明すればいいのかしら。」


 体罰問題が国民的議論を巻き起こしたこの国では、少し前から体罰レベルという制度が導入された。各種議論中で、体罰を大きく超える暴力は許されないことされた。一方で、その程度を明示することで保護者にレベルの選択肢を与え、実質的に痛みを伴う指導というか体罰が認められることとなったのだ。

 このレベルは公表され、保護者達には事前に配布される。教員たちはラべリングされたレベルまでの体罰が許容されている。給与は体罰レベルが低いほど高めに設定されているが、それと生徒たちの指導状況を重ね合わせて決められるので、必ずしもレベル1の教員が高いとは限らない。

 むしろ、レベル5であっても全国大会常連校の教員はそれなりの給与をもらうこととなっている。加えて、ラべリングがなされることで酷いものならいざ知らず小さな体罰騒動はなくなった。皆がそれを許容した上で選択しているからである。


 また、このシステムを利用して体罰のない学校や強力指導を行うなど、公立校でも学校ごとの特色がアピールされることにもなった。まさに少子化時代に適応したかのように、学力以外の指標でも学校を選択できるようになったのだ。

 もちろん、成績が良い人たちは体罰を受けにくい学校に進学し、そうでない人たちはそれ以外というのは結果的に今までと大して変わったわけではない。ただ、保護者も一定の理解をした上で子供を預けるようになり、また教員側も自らの指導できる範囲を認識することになり暴走が減少した。レベルは2年に一度見直しが可能であり、教員が自らの気力や体力も踏まえて選択できる。

 こうした変化は保護者達にも教師たちにもかなり肯定的に捉えられている。両者にとって選択肢ができたということが最も大きな理由であろう。


 ただ、それでも生徒たちの間では納得できないことが一つだけ囁かれていた。

「ひょっとして、俺たちにとって昔と何も変わってなくね?」

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