表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/23

愛しき"すがもん"

 一過性のブームのように日本国中を席巻した「ゆるキャラ」。


 地域キャラクターは多少昔から存在していたが、それがあるときまるで伝染病がパンデミックにより広がると同じような勢いを持って日本国中隅々まで広がった。都市のキャラクターから、企業キャラクター、そして果ては町内会キャラまで、世の中はキャラクターに溢れてしまったのだ。

 そこでも地域キャラ、あそこでもゆるキャラと私達はそんな地域イベント用キャラを見かけない日はなく、正直知らないキャラクターが大部分である。「ひこにゃん」の大ヒットを受けて我先にキャラクターを製造したが故に、日本という国はキャラクター飽和状態に至ってしまった。

 実は私も何を隠そう、そんなゆるキャラの一人でもある。キャラクター戦国時代を何とか生き延びようと四苦八苦している。


 それでも不思議なもので、あれだけ愛らしかったキャラクター達も数が多くなりすぎると、一気に消費されていくものである。要するに飽きられるのだ。単純にイベントに登場しても、見向きもされなくなる。子供達などはまさに極端だ。これまでは近寄って握手などをねだってきたのが、今ではいきなり跳び蹴りを食らう。まるで私は仮面ライダーに登場する敵役の戦闘員並みの扱いだ。まあ、キャラクターの数が増えてしまった今では戦闘員並みの価値しかないと言われればその通りかもしれない。


 とは言え、それでもせっかく地域で選定したキャラクターである。それを決めたお役所や企業なども、ここまでやって必要ないと捨てるわけにも行かず、もはやあまり喜ばれないと言うことがわかっているにも関わらず、それでもキャラクター達は使われ続けたのだった。もちろん私達にも意地がある。ハイそれまでと捨てられるわけにも行くはずもない。

 しかし、「ゆるキャラ」と親しみを込めて呼ばれていたキャラクター達は、この頃には「飽きキャラ」と別の呼称で邪魔者のように扱われるようになっていた。


 当然このままではいかんと、全国のキャラクター関係者達は立ち上がる。

 飽きられるのは、キャラクターが単純にぼーっと立っているだけだからだ。それよりは、もっとアクティブに動き回って興味を惹きつけよう。

 誰からそんな声が上がったかは今となってはわからない。ただ、使い古されたキャラクターを再利用すると共に、国民の人気を再度取り戻そうと導入されたのがいわゆる「ゆるキャラバトル」である。

 ポケモンばりに、ゆるキャラを戦わせようというのだ。まるで人気の無くなりかけた少年漫画のノリである。それでもこのバトル、、、意外とウケはよい。何しろ、日本国中に山ほどキャラクターが存在するのだ。それ故、レアキャラが一気に脚光を浴びるチャンスを得ることになる。


 ゆるキャラカードは日本中の子供達の心を掴んだのみならず、世界進出すら囁かれ始めるようになった。もちろん、キャラクターの特徴に応じた必殺技が考え出され、カードバトルだけでなく実際の演出としてイベント会場でゆるキャラ同士が戦うという演出まで為される。

 一部PTAなどは教育に悪いとクレームを付けたものの、ポケモンとどこが違うのだと反撃されるとそれ以上突っ込めない。


 関わっている人たちはノリノリで技を考えていく。「せんとくん千手チョップ」とか「カツオ人間骨頭突き」とか、、、個性のあるキャラクターほど技を考えやすく強く設定されやすいため、それだけ人気も高まっていった。中には脱皮して成長するゆるキャラまで登場し始めた。これが第二次ゆるキャラブームの到来である。

 ブームに乗って新たな人気が出るゆるキャラがいるのと同時に、このブームに乗れないキャラクターも存在する。その典型がまさに私のともだちの「すがもん」だった。巣鴨地蔵通り商店街公式キャラ。そう、おばあさんの原宿と呼ばれるあそこである。キャラクターは意外に身軽だし、設定上も男の子とされているのだが、なにせイメージがお年寄りの街として出来上がっているため、バトルのための各種能力が低く設定されてしまった。

 バトルに弱いキャラは、子供達にはウケが悪い。仮にレア度が高くても見向きもされない。そもそも戦ってもあまりポイントを得られないすがもんを相手に戦ってくれるキャラクター自体がほとんど出てこないのである。そりゃ、無理をして「メタルすがもん」でも作れば子供達には受けるかもしれないが、そもそものポリシーに反してしまう。結局、すがもんは第二次ゆるキャラブームにも乗ることはできなかった。


 しかし、何が幸いするかはわからない。バトル主体になったキャラクター達からは徐々にゆとりが無くなっていったのである。愛らしいはずのキャラクター達が妙にぎすぎすとし、本来の愛らしさを失っていったのだ。人々は何でもすぐに消化する。結局、ブームの後にはゆるキャラ達の残骸が残るのみとなった。

 結局、私を含めキャラクターは目立つことを追求したために寿命を縮めてしまったのである。人々は刺激も愛するが時により安定をより欲する。永らく続いたブームの終焉には、落ち着いたものと接したくなるのである。

 こんな中、いつからかすがもんは癒しキャラとして定着しはじめた。あらゆるキャラクターが激しく消費されてしまったあと、それは非常に静かなものであり目立った何かがある訳じゃない。ただ、それでもわかる。長寿の秘訣はまさにそこにあるのだ。消費されすぎないことに。


(商店街の皆様キャラクターを勝手にお借りしてすみません。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ