その2-1 この人達、怖すぎるのですが
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とんでもないものを召喚してしまった、と少女は思った。
細身の剣を扱う黒髪長髪の男子と、アクロバティックなふんわり二つ結いナイフ女子。
一つ目の化物たち……サイクロプスをあぁも軽々と倒して……殺戮してしまうとは、とんでもないポテンシャルだ。
というか、なんだろう最後のキメ台詞は。
ものすごく怖い。
……しかし、少女は確信する。
今回は当たりだ、と。
今までに何回も召喚魔法は使ったが、今回のは間違いなく成功だ。
……ともかく、今は彼らにお礼を言うべきだろう。
右も左も分からないこの状況で助けてくれたのだから。
力だけでなく、とても性格の良い人たちではないか。
「あ、あの、ありがとうございました」
と、少女が二人に駆け寄ろうとした、矢先。
ふわり、と地面の感覚が消えた。
足をすくわれた……?
誰に――?
一瞬だけ視界に映ったのは、血まみれの、ナイフ女子……!
「ぁぐッ」
少女は前のめりに倒れ込む。
同時に、重たい力が背中を押した。
馬乗りにされた……?
「ったくー、いきなりあんな化物と戦わせるって、どんな神経してやがるんすかねーこの不思議ちゃんは」
不思議ちゃん。
ナイフを振り回して化物を一掃するあんたの方が不思議ちゃんだ、と少女は心の中で突っ込んだ。
その時。
ペトリ、と何かが首筋に当てられた。
ゾクリ、と全身が冷えて固まる。
見なくても、見えなくても、分かる。
それが、鋭い刃物だということに。
「おいおい黒瀬後輩、何してんだよ。いきなりそんなことしたら可哀相じゃないか」
「おやおや加賀先輩、何言ってんすか。敵か味方か分からない奴は、まずは身柄の拘束っす! 黒なら殺す! 白でもぶっ殺すんす!」
背筋が、ガチガチに凍りつく。
このナイフ女子、怖すぎる。
震えすぎて声が出ない。
「黒瀬後輩、白なら殺さないでおこう」
「んじゃあ、灰色だったら殺すっす。聞きたいことが色々あるんすよねー。嘘っぽかったら、ぶっ殺しちゃうんで、よろしくー」
前言撤回。
性格ヤバすぎだった。
というか、どれだけナイフ持っているのだろう。
……ともかく、ここは大人しくした方がよさそうだ。
『嘘っぽかったら』とは、つまり『少しでも不自然なところがあれば』ということだろう。
……まぁ、どのみち色々な説明はしなければならない。
「んじゃあ質問、加賀先輩お願いするっす」
「え、僕に振るのかよ」
「私、尋問とか苦手っすから」
「でも拷問は好きなんだろ?」
「肛門が好き!? 加賀先輩何言ってるんすか! ド変態っすね! 死んでくださいっす!」
「言ってねえよ! お前が死ね!」
コントか?
どこの世界にも漫才はあるらしい、と少女はどうでも良い情報を知った。
「質問……質問かぁ。そうだなぁ」
剣の男子はゆっくりと歩み寄り、屈んで少女に目線を合わせる。
ここはどこ?
お前は何者だ?
さっきの化物は何者だ?
想定できる質問には『すでに用意された答え』がある。
少女は、どんな質問でもすぐに答えられる自信を持っている。
が、しかし。
「きみの目的は何?」
その質問に、ドクリ、と少女の心臓が高鳴った。




