その6-1 付き添いの小悪魔
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小悪魔は『決闘祭』において審判という役割を任されているが、それ以外では『役人』の付き人として助手のような仕事をこなしている。
『政府』が治める首都ルナルノルーナ。
その中心地に建てられた、要塞を彷彿とさせる巨大な城。
それは『政府』の拠点だ。
また、『役人』達の仕事場であり住居でもある。
その、一部。
主に『傍観派』が活動をするエリア……に向かう途中の長い廊下。
天井は高く、石畳が整然と並ぶ。
「ねぇ……小悪魔ちゃん……」
人気は無く、二人の足音だけが響く中、小悪魔の前をフラフラと歩く長身の女性が話しかけてきた。
「何回目か……知ってる……?」
ボリュームのあるふんわりとした桃色の長い髪を揺らし、歩いたままで彼女は問いかける。
「えぇと、何がですか?」
突然の問に、小悪魔は戸惑いつつ聞き返す。
すると、前を歩く彼女は足を止め、ゆっくりと小悪魔の方に振り返った。
眠たそうなジト目。
どこぞのロリババアとは天地の差ほどもあるメリハリボディ。
下半身はロングスカートで覆われているものの、上半身は比較的ピッタリとした服を纏っているので、そのナイスボディが強調される。
同性の小悪魔でも少しだけドキッとしてしまう程だ。
そしてその手に持つのは、三つのロウソクを立てた燭台。
まるで凍ったかのように動かない灯火。
暗くもないのに灯された三つの火。
『凍った炎』の二つ名を持つ『政府』『保守派』『序列六位』の『人間族』。
小悪魔が助手として仕える『役人』スノーフィである。
そういえばあのロリババア……フルクスも『序列』は『六位』だったな、と小悪魔はふと思い出す。
『派閥』ごとにある『序列』は単純に、その『派閥』内での実力を示すものだ。
『弱肉強食』の『世界』を体現していると言っても良い。
力の差をつきつけられる、そんな、ある意味で残酷な制度。
とはいえ、その『序列』を気にしている『役人』はほとんど居ないようだが……。
しかし、スノーフィに仕える身としては、同じ『序列六位』であるフルクスよりも上であって欲しいな、と小悪魔は思った。
「合計でね……五十六回よ……?」
スノーフィは薄っすらとした笑みを浮かべて言う。
さっきから一体何の話をしているのだろう。
というか、そもそも、スノーフィに呼び出されてこの場に居るわけだが、その理由もまだ聞かされていない。
べつに悪いことをした覚えは無いし……。
「えぇと、スノーフィ様。ですから、何がですか?」
「ここ一年で……『あの子』が脱走した回数……」
言って、スノーフィは再び歩き始める。
「えぇと、『あの子』っていうのは、『喚起之杖』を持ちだした……?」
「そう……『あの子』。メリーゼちゃんのこと……」
メリーゼ。
召喚に特化した『魔法道具』の杖……『喚起之杖』と共に、何度も脱走を繰り返しているという、彼女。
「メリーゼちゃん……『魔法道具』なんて使わなくっても……空間移動くらいは結構簡単にやっちゃうから面倒なのよね……。まぁ……結局は一日や二日で捕まっちゃうんだけど……」
「監視をもっと強化にしてみてはどうですか?」
「そこまで暇じゃないのよね……。少なくとも……『傍観派』の大ボケ達より……『保守派』はすることがあるのよ……」
『政府』には、いくつかの『派閥』が存在する。
その中でも『保守派』と『傍観派』は仲が悪いことで有名だ。
基本的に『傍観者』としてのスタイルを貫く『傍観派』とは異なり、『保守派』は『世界』のバランスを保とうとする。
それはつまり、『悪人』が治安を保つ『弱肉強食』の『世界』、という安定したこの『世界』を崩さないよう、周りを固めようとする派閥なのだ。
例えば大災害が襲った時、例えば未知の魔獣が現れた時、そういうときに『悪人』や『民衆』と協力して『世界』を安定させようとするのが、『保守派』である。
召喚魔法は大災害の引き金になりかねない。
魔法によっては何が召喚されるのか分からないからだ。
「メリーゼちゃんが……滅茶苦茶な『何か』を召喚しちゃう前に……捕まえないとね……」
「ですが、召喚魔法はかなりの高等技術ですよね。例え『魔法道具』を使っていても、そんな簡単に……それこそ一日や二日の期間では無理な気がしますが」
それも、『政府』の追っ手から逃げながらの一日二日だ。
じっくりと時間をかけて……魔法の使い手にもよるが、一週間は必要だろう。
「でもね……小悪魔ちゃん。私……考えてみたのだけれど……」
足を止めることなくスノーフィは話す。
「五十六回の脱走……。それを全部……召喚魔法の準備に当てていたとしたら……どうかしら……?」
「あ……」
それならば確かに、召喚魔法を行うための準備は十分に出来る……否、何回も召喚が可能かもしれない。
「小悪魔ちゃん……私ね……」
ピタリ、とスノーフィは足を止めた。
しかし振り返らず、その場で立ち止まったままで続ける。
「なんだかとっても……嫌な予感がするのよ……」




