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その4-3 『水流』と『残虐幼女』の所以

 フルクスの小さな身体に、アカディディスの太い拳が、深く、深く、深く、深々と――突き刺さる!

「……グ……!」

 フルクスが思い切り吹き飛ばされる。

「つ、痛恨の一撃ぃ! アカディディス選手の拳がフルクス選手を貫きましたー!」

 宙高く舞ったフルクスは、そのまま地面へと――叩きつけられた。

 小悪魔は初めて見る。

 あのフルクスが、受け身も取れずに地面に転がる姿。

 思わず、息を飲み込む。

「あー、あー、あー……もう、うっとーしーのう……」

 先ほどの一撃がよほど響いたのか、ゆっくりと、ぎこちなく、フルクスは起き上がった。

 ……否、そうではない。

 アカディディスの拳。

 それが、フルクスに大きなダメージを与えたわけでは……ない。

「……まったく、ワシのドレスをこんなに汚しおって」

 フルクスは、今の自分の姿を……自分が着ているドレスを見回して言った。

 モノクロだったフルクスの衣装。

「何でしょうこれは……フルクス選手の衣装に、赤色の斑点が散りばめられています! 鎌にこびりついた塊と同じものでしょうか……!?」

 赤色の、不透明で光沢のある粘着物。

 フルクスの動きを奪っていたのは、その赤い塊……?

「ふん、よーするに、血液を操る力か」

「ガハハハハハ! ご明察だなフルクス!」

 血液……!

 小悪魔は察する。

 血液を凝固させる力……か。

 それも、尋常ではないほどの硬度に、そして重たく固める力……!

「そう! それが『水流(ハイドロクリエイター)』という名の由来! 水流とはつまり、血潮! この俺が得意とする血液を操る力!」

 アカディディスはフルクスをビシィッと指さしてキメ顔を見せた。

「な、なるほど! 血潮を水流と言ってしまうセンスはともかく! フルクス選手の鎌や衣装に付着していたのは、アカディディス選手の血液だったようです!」

 鎌に塗りつけられていた粘着物。

 それは、最初の一撃でアカディディスを斬ったときに付着した血液ということか。

 要するに、アカディディスは敢えて斬らせた。

 自身の血液を使い、鎌を使い物にならなくするため……!

「そしてワシに、これまた敢えて身体を好き勝手殴らせて、血を飛散させ、ワシの服を汚してくれたってことかのう」

「ガハハハハ! 気づいた時にはもう遅え! 俺の血液は時間が経つほど重くて固くなっていく! 俺の血液が付着している以上、ご自慢の素早い動きは封じられる! 俺が宣言した通り、お前は素っ裸になるしか無えんだよ!」

「「「うおおおおおおおおお!」」」

 客席が沸いた。

 なんでだ。

「だが安心しな! そんなハレンチな事態になったとしても、大事な部分は俺の血でコーティングして自主規制やるからよお!」

「「「ブー! ブー! ブー!」」」

 ブーイングの嵐が巻き起こった。

 こいつら全員死なねえかな、と小悪魔はゲンナリした表情を浮かべる。

「『政府』の『役人』がどういう魔法の使い手なのか、そんなものは完全に予習済みなんだよ! フルクス! お前も例外じゃあねえ!」

 首を傾け、アカディディスは不敵に笑みを浮かべる。

「その鎌……その『魔法道具』はお前の小さな身体でも自在に操れるような魔法がかかってんだろう!? そのスタイルじゃあオレには通用しねえってことだ!」

 ガハハハハ、と豪快に笑うアカディディス。

「あー、あー、あー?」

 それに対して、これまた面倒くさそうに、フルクスは口を開いた。

「『自在に操れる魔法』? 『完全に予習済み』? 『ハレンチな事態』? このボケナスマッチョはさっきから何を語っておるんじゃろうなぁ」

 フルクスの黒い瞳が、アカディディスを捉える。

 残虐な笑みを浮かべて鎌を肩に乗せる。

「そんな単純な『魔法道具』で、あの『大戦争』を生き抜いて、いくつもの死線をくぐり抜けて、『役人』としてこの場に立っておると、本気で思っとるのかのう」

残忍幼女(スパイシードロップ)』という二つ名の所以。

 それは、その残酷な笑顔である。

「それに、このワシがこの場で、こんなお遊びの場所で、『完全』に力を使ったことなんて、一度たりとも無いんじゃけど?」

 フルクスのファン。

 大きなお友達。

 彼らはその邪悪な微笑みに魅了されているのだ。

「そして――ハレンチな事態になるのは、お前の方じゃよ。マッチョマン」

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