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婚約破棄を告げたのは決して貴方のせいじゃない…

作者: 月樹
掲載日:2026/06/21

100%ギャグです。

何でも許せる方向けです。

深く考えずにお読みくださいm(_ _)m

「ヤスミン、ごめん。

 僕達の婚約を破棄してほしい…

 君は何も悪くない。悪いのは全て僕だから…僕の有責で構わない。

 君に命を助けてもらった恩も忘れて、他の女性を好きになってしまった…

 僕の過ちだ…」


 そう辛そうに告げるマクシムの隣には、最近隣国から留学してきたという王女シルビアがいた。


 自分でも身勝手な申し出だと思ったのだろう…

 目を合わせることもできず下を向くマクシムの耳に、ヤスミンが何かつぶやく声が聞こえた。





「し…ば…いのに…」





「ヤスミン、何て言ったの?

 結婚はできなくなってしまったけれど、君が僕の命の恩人であることに変わりないし、君には幸せになってほしいんだ…。

 できる範囲で願いは聞き届けるから、遠慮せず言って」

 必死に訴えるマクシムの顔は、子供の頃から知っている、いつもの心優しい彼の顔だった。


 二人の間に情熱的な愛などは芽生えなかったけれど…長い間一緒にいたので情はある…。


 ~・~・~・~・~


 マクシムとヤスミンが出会ったのは二人がまだ10歳の時だった。


 初めて平民達で賑わう町に出掛けたマクシムは、見るもの全て珍しくキョロキョロ辺りに気を取られてしまい…

 気がつけば両親からはぐれて迷子になっていた。


 見るからに貴族のお坊ちゃまという格好をした子供が1人でいたため、破落戸に目をつけられ連れ去られ、あわや身包みを剥がれ殺される!!

 というところで、たまたまそこを通りかかった魚屋の娘ヤスミンに助けられ命拾いしたのだ。


 その時マクシムは…助けてくれたヤスミンに恋をした。彼にとってそれは初恋だった…。


 ヤスミンの額に一生消えない傷ができたのを良いことに、マクシムはその責任を取ると言って聞かなかった。

 両親も母によく似て美しい顔をした次男坊には甘く、元々彼には伯爵が持つ子爵位を譲り、好きな相手と添わせてやろうと考えていたため、マクシムのワガママを叶えてしまった…。


 貴族にとっては結婚に差し障るような大問題かもしれないが…

 平民のヤスミンにとってそんな前髪で隠れるようなかすり傷など取るに足らないことであったし…

 今まで町のみんなと自由に楽しく生きてきた魚屋の娘が、いきなり貴族になって結婚なんて言われても迷惑なことだ…。


 でも…平民であるヤスミンにそれを断るすべはなく…


 あれよあれよという間にスーディレ男爵家の養女にされ…

 貴族の嫁として相応しくなるため、厳しい教育を受けてきたというのに…



 ~・~・~・~・~



「ヤスミンさん…だったかしら?

 ごめんなさいね。

 彼に婚約者の方がいると知らなくて…好きになってしまったのは本当に申し訳ないと思っているの。

 でもマクシムはあなたのような慎ましやかな方ではなくて、私のような包容力のある女性が好みなのだと思うわ…。

 もちろん王女である私の伴侶となるのですから、わたくしからも貴方には慰謝料を支払わせていただきます」


 イナラギラウクニンキ国の王女であるシルビアは、マクシムに腕を絡ませたまま、そう自信たっぷりに言ってのけた。


「ええ…そうですね…。私もそう思います。どうぞお幸せに…」

 ヤスミンは最後まで淑女の微笑みを称えたまま、それを受け入れ教室を去ろうとしたのだが…




『所詮、魚屋の娘に伯爵令息の婚約者なんて…分不相応だったのよ…』


『今まで貴族として生活させてもらったんだから、庶民には十分だったんじゃない…』


『多少見た目が良くても…

 平民の血を入れなくて良くなって、ムエド伯爵家の皆様も喜んでいらっしゃることでしょう…』




 マクシムは顔が良く、物腰も柔らかなため他の女生徒にとても人気がある。

 だから平民出身なのに婚約者の座を射止めたヤスミンを陰で貶める者は少なくなかった。

 その状況をマクシムも知ってはいたけれど…

 彼にとってそれは()()()()()()()()()と認識されていたため助けてはくれなかった。


 ヤスミンも伯爵家の婚約者として、問題にはせず微笑みで受け流していたのだが…





 伯爵家の婚約者でなくなった今、我慢する必要はない。




「マクシム様、先程何でも願いを聞いていただけるとおっしゃいましたが… 

 いま、そのお願いを申し上げてもよろしいでしょうか?」

 ヤスミンの控えめな申し出に…


「ああ、もちろんだ。何でも言ってくれ」

 マクシムは勢いよく笑顔で応えた。


「では、今から少しお聞き苦しい言葉で私の思いの丈をお伝えいたしますが、寛大な御心で多少の無礼はご容赦いただけますか?」

 上目遣いに微笑みながらお願いするヤスミン…


「もちろんだ。私が先に礼を欠いたことを申したのだから、君が何を言おうと不問に付すと約束しよう」

 もちろんこれにも笑顔で返すマクシム。






 確約の取れたヤスミンからは、途端に笑顔が消えた…。






「この浮気者のクソ野郎!!

 本当豆腐の角に頭ぶつけて死ねばいいのに…


 婚約破棄~!?上等だ!!清清するわ!!

 やりたくもないのに無駄に厳しく教育された8年間を返せっつ~の!!


 だいたい私が破落戸に飛び蹴り喰らわして、逆エビ固めで捕らえる姿見て惚れるような危ない男(ドM)相手に、淑女教育して大人しくなった女なんて…嫌になるのに決まってんだろ~!!


 そりゃ見るからに自分を虐めてくれそうな、筋肉マシマシの女王様が出てきたら乗り換えるわ!!


 『君は悪くない』そりゃそうだ。

 こいつの(ヘキ)を把握しきれなかった親の教育の失敗だ!!


 女王様も本当にこんなドMの浮気男で良いの?もっとマシなの探せばいるよ?」


 さっきまで()()()()だと思っていたものが、()()()()()に代わった途端、恍惚とした目で見つめてくるマクシムの様子に鳥肌が立つ腕をさすりながら、同情するようにヤスミンが尋ねると…


「問題ありませんわ。わたくし、駄犬を躾けるのが趣味ですの。

 向こうの王宮にはすでに、夫となる(マクシム)のために外から鍵がかかる部屋を用意しましたし、私にしか外せない特注の首輪(ネックレス)も注文しておりますから…」


「それなら問題ありませんね」

 ヤスミンはこんな取り扱い注意人物(ドM)を引き取ってもらって申し訳ないと思っていたけれど…

 嗜好が合うのなら良かったと微笑んだ。



 三人の微笑み交わすやり取りに、今まで貴公子然としたマクシムに憧れていた女性徒達も、ヤスミンを婚約者の浮気に耐え忍ぶ可憐な少女だと思っていた男子生徒達も…

 周囲のみんなが引いた。


 シルビアに対しては、見た目も中身も安定の女王様なのでそう驚きはなかった…。




 教室内がシーンと静まりかえったなか… 




 パチパチパチ




 音がした後方の扉を振り返れば…



 学園で最も高貴な身分のヤンキースキー公爵令息が惜しみない拍手を送っていた。




「素晴らしい啖呵だったよ。

 美しい調べに誰が発したのかと思えば…

 まさか君のような可憐な人だったなんて…」


「ケンカッパヤイ・ヤンキースキー公爵令息様…」

 さすがに学園一身分の高い公爵令息の登場に、何と返せば良いのか戸惑っていたら…


「私のことはどうぞケンと呼んで。私も君のことをヤスミンと呼んでも良いかな?」

「もちろんです。ケン様…」

 しばし周りの生徒達などガン無視して、見つめ合う二人…


「隣の学園と抗争が起こったんだけれど…

 良かったら一緒にどうかな?」

 舞踏会に招待するように手を差し出すケンに…


「ええ、喜んで…」

 こちらもこれからダンスを踊り出すかのように手を重ねるヤスミン。 




 まあ…舞踏会ならぬ武闘会…。

 似たようなものか…とその場にいたみんなは思い込むことにした。





 その後…ヤスミンが抗争中に決めたジャーマン・スープレックスにハートを鷲掴みにされたヤンキースキー公爵令息がその場でプロポーズし、見事成功し…

 後々二人の結婚は庶民達にシンデレラストーリーとして語り継がれた。



 ~めでたしめでたし~



 あっ…。そう言えば、マクシムも卒業を待たずしてシルビア王女の帰国と同時に持ち帰られ、末永く幸せに暮らしたそうです。



 ~めでたしめでたし~

 

お読みいただきありがとうございます。






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