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21話「棘のような殺意(前編)」

21話「棘のような殺意(前編)」


二つの首を落としたカイを脅威と認定したのか『アイアンメイデン』はさらなる攻撃を繰り出す。

攻撃が苛烈になる中、すでに距離をとっていたカイは冷静に状況を考えていた。


(俺を敵と認識した、もう様子見はない。)


既にすべての首がこちらを見ている。

攻撃に参加するのは全てではないがそれでも無理に近づき、一撃を入れようとすれば手痛い反撃を喰らうだろう。


攻撃をかわすカイの視界の隅に赤黒い棒切れがチラと映る。


竜狩りの仕掛けた罠だ。


『アイアンメイデン』から目を離さずに駆けだす。

竜もまたその動きに合わせるように追いかける。


(……思ったよりは早え。引きはがすのは無理か。)


竜は巨体にしては素早く追いかける。

この密林の中、距離が大きく広がるほどの速度差は出ない。


カイは竜狩りの仕掛けた罠を一瞥する。


(しめた、落とし穴だ!)


罠は巧妙に草葉で隠されている、カイは穴を飛び越えると勢いそのままに走り、後ろから迫る脅威を誘い込む。


首を落とされた竜は冷静さを欠いていた。

逃げるカイを追いかけていた竜の前足が落とし穴に落ちる。


その刹那、進むカイと止まる竜の距離が空く、そしてその距離を詰めようと竜は首を伸ばした。


大きな音を聞いてカイは振り向く、伸ばされた首と目が合う。


「三本目ぇ!」


カイは近寄る首に対し反射的にナイフを振るう。

つんのめるような勢いを利用して大きく口を開け迫る顎をそのまま二つに引き裂いた。


落とし穴にはまったアイアンメイデンはまだもがいている。

体の左右に生えた首がカイを追うように動くが、足が動けない今リーチではこちらが有利だ。


右側の首と距離を取るように左側に回り込む。

左側の首と一対一、その首もまた、挑発に乗るかのように攻撃のタイミングをうかがう。


(攻撃をかわして一撃を加える、集中しろ……)



そう思った矢先だった。



カイの視界の隅から黒い影が飛び出してきた。


とっさに右腕を動かし体を守る。

影はカイの右腕にかみつくと体を巻き付け、カイの腕を締め上げる。


鱗に覆われたしっとりとした皮膚と手足を持たない長細い身体、だがその直径は人の胴ほどに太い。


(……蛇!?どこから!?)


反射的に持っていたナイフを突き立てるが、蛇は体を巻き付けることで頭部を守るような体勢となっていて致命的な一撃にはならない。


カイは自分の腕を傷つける覚悟で思いっきり何度もナイフで突き刺すとようやく腕が解放される。


「ハァハァ、なんだこいつ……」


思わぬ奇兵に被害を出してしまう、噛まれた右手から出血していた。


上がってしまった呼吸にふと甘い香りがしていることに気づく、首にかけた布にまぶした『聖水』が揮発し匂いを発している。


力の入らなくなった右手をその布で覆い、即席の手当てをする。



カイが大蛇と死闘を繰り広げていた中、アイアンメイデンは後ろ足を駆使して体を穴から引き上げている。


一、二、三、四。

頭部は今や4つを残すのみだが、カイは疑問に思う。


(切り落としたのは三つだったはずだ。)


そう、数が合わない。


竜狩りの言うことを信じるなら『アイアンメイデン』は八つの首の竜だ。


初動の不意打ち、口に含んだ聖水の奇襲、そして落とし穴にはまった瞬間の一撃。


3つしか切り落としてないはずだが残す首は4つ。


(まさか…この蛇…)


足元で今だにジタバタと蠢く巨大な蛇を見てカイは嫌な汗が吹き出すのを感じる。


だが今はじっくりと考えている時間はない、やつが体勢を崩しているこの好機を失えば逃走のチャンスも攻撃のチャンスもない。

だが、最悪の想定は現実になった。


「シャァッ!」


大きな鳴き声を上げて一匹の蛇がカイに襲い掛からんと飛び掛かる。

カイの目はその瞬間を捉えていた、『アイアンメイデン』の体から首が飛び出す瞬間を。


飛び出した首、いや蛇はカイの足元に着地するとすぐさま戦闘態勢に入る。

攻撃を警戒しつつも逃走は許さないと言わんばかりに、大きな蛇がこちらを睨む。


このままでは状況は悪くなる一方だ、本体がじきに穴から這い出て来て、カイを追い詰める。


(逃げるか…?だが鈍重な体を抜け出した首から逃げきれるか…?)


右手は先ほどの被害で動きが鈍い、ナイフを左手に構える。

カイは逃げるのは無理と判断した。


構えたナイフを頭上に構える、そして体のしなりを使い一気に振り下ろすと同時に手を放す。


投擲――


人間に許された最も原始的な道具の使い方、放たれたナイフは回転しながら大蛇に迫る。


着かず離れずの距離を警戒していた蛇は爬虫類特有の驚異的な動体視力と反応速度ですんでのところでナイフをかわす。

だが、カイの猛攻はそれで終わらない。


投げると同時に蛇へと駆け出し、腰に付けていたもう一本の『ギロチン』、スペアのナイフを取り出し飛び掛かる。

本命の一撃が蛇の頭部に突き刺さり、頭蓋を地面へと叩きつける。


体重を乗せたひと振りは大蛇を絶命させる一撃となった。


「ハァ、ハァ……ハァ……」


一息つく間もなくの連戦、竜はすでに体勢を立て直し、三つの首でカイをにらみつけていた。


(クソっ、息が……)


冷徹な処刑道具は罪人を待ってはくれない。

『アイアンメイデン』は脅威を完全に排除すべくこちらへと一歩ずつ近寄ってくる。








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