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SS13  偉業の報酬(9)★

不快に感じる表現があるかも知れません。ご注意ください。




 ★ ★ ★ ★ ★ (ジェイド視点)




6日目の朝が来た。




 今日ぼくは、小さな戦いをする。


 この戦いは、ぼくのけじめだ。


 ぼくには分かる。


 ぼくはもう、あの国には帰らない。


 だから、決着を付ける。




 ベニザクラ号は、静かに止まった。砦に着いたんだ。いよいよ始まる。


「王子、お帰りなさいませ。今回は、大変な成果を上げられました。おめでとうございます」


 ふん、「行ってらっしゃいませ」の言葉もかけなかったくせに、調子がいいことだ。


「ありがとう。でも、ここにいる案内人と冒険者に助けられての成果だよ」


 ペーシモが手を差し出した。汚い手だ。


「ささ、『奇跡の魔石』をお渡しください」


 カナデさん達には興味無しか。ちょっと注意深く見ればそこにいるのが誰だか分かるだろうに、情けない。


「ささ、早くお渡しください」


「どうして、あなたたちに渡さなければいけないのかな」


 怒ったか。直ぐ感情が顔に出る。貴族としても失格だな。


「どうしてと言われましても、それが慣例だからでございます」


「貴重な魔石は、いったん王宮の預かりになるのが慣例でございます」


 慣例か、今までのぼくなら、ここで諦めていただろうな。


 でも、今のぼくは違うよ。残念だったね。


「ささ、早く、その貴重な魔石をお渡しください」


 そんなに欲しいなら。これをあげるよ。本物の写しだけどね。


「はい」


「……?」


「この書類は何でしょうか」


「『本人魔石捕獲証明書』の写しだよ」


「よく分からないのですが、それがなんだというのですか」


「この『奇跡の魔石』を、ぼくが1人で捕獲したことを証明するもので、この魔石は、確実にぼくの物であるという証だよ」


 おまえ達のものではないと言うことだよ。さあ、どうする。


「だからどうした、いったん預かるだけだと言っているだろう。いいから早く魔石を渡せ」


 おやおや、本性が出るのが早すぎませんか。


「見るに()えないな。見苦しい、その魔石はジェイド様の物だ。おまえ達の物ではない」


 ナツメさん、後は任せます。


「誰ですかあなたは、これはマイアコス王国内部の問題です。部外者は黙っていてもらおうか」


 本当に誰だか分からないのか。バカだろう。


「おいおい、この耳と青い髪、そして、あそこに止まっている『青竹ミカヅチ号』を見ても、私が誰だか分からないのかい」


「青い樹魔車両……。青髪のエルフ……。まさか、S級案内人のナツメ・カボーグか」


「まあ、そうでもあるんだけどね。その書類の私のサイン見てよ」


 バカめ、渡した時に確認しろ。


「ナツメスタッロス・セルビギティウム」


「おいおい、それだけじゃないだろう。よく見てくれよ」


「カルミア・エーレ・セルビギティウム……」


「ラウネンリヒト・フォン・ペリティア」


「ななななな……んで、何の力も無い、ただの第5王子だぞ。なんで、大陸の象徴が出てくる」


「あのー私もいるんですけど……」


「誰だ、おまえ……。桜色の髪のエルフ……」


「サクラシア・セルビギティウム」


「何でおま……あなた様までいるのですか」


「今回の案内人は、私とカナデよ。送り届けるまでが仕事なんだから、いるのは当たり前じゃない」


「へぇっ……」


「この3人のサインの意味が分かるかい。この『奇跡の魔石』に関しては、私達の許可無く所有者を変えることは許されないんだよ」


「わ、分かりました。その魔石に関しては、王宮に帰ってから公爵と相談をしてしかるべき処置をさせてもらいます」


 この人達は病気なんじゃないだろうか。どうして、ナツメさんに対してそんな態度かできるのだろう。


 王族であるぼくに対してもあの態度だ。国では公爵の威光(いこう)を借りてやりたい放題だからな。自分たちよりも強い相手に対する接し方を忘れてしまったんだろう。


 あの公爵が全ての原因か。今のぼくの力では何もできない。父も兄もそうだ。くやしいな。


「さ、王子。帰りますよ。荷物はおまえが運べ」


 ジョーレ、勘違いするな。おまえは偉くもなんともない。その人は、貴族としても失格であるおまえが命令できる相手ではないぞ。


「いや、荷物を運ぶのはおまえの仕事だ」


 王子の私物を運ぶのは側近の仕事だ。ちゃんと自分の任務を果たせ。


「……王子、どうしましたか。荷物運びは新米C級冒険者の仕事ですよ」


 (みにく)いな、どうしてこんな表情ができるのだろう。


「カナデは、(ゴールド)スター冒険者だ。そして、セルビギティウムの姫様のパートナーだ」


「なっ……」


 ふふふ、この言葉をおまえ達に返してやるよ。


「どうした、荷物を運ぶのは側近の仕事だ。これは、王宮の慣例だぞ」


  さあ、砦に向かえ、でも、驚くのはこれで終わりではないぞ。最後まで付き合ってくれよ。


「あれ、王子はどうした」


 やっと気がついたか。側近としても失格だな。いや、それ以前に人として失格か。


「どういうことだ?」


 何がどうしたという顔だな。仕方ない、説明してあげよう。


「ああ、言い忘れていたよ。帰ったら父に伝えてくれないか、ぼくはこのままエレウレーシス連合王国の『大陸総合研究所 魔術学院』に飛び級入学することになったってね」


 さて、ギャーギャー騒ぎ出す前に退散(たいさん)するとしますか。ナツメさん、お世話になります。


 おっと、大事な事を伝えていなかった。


「カバンの中身は、王宮の家族へのお土産だ。しっかり届けてくれ」


 護衛達が手を振ってくれている。ありがとう。きっと、また砦に用事があるからと言って、来てくれたんだろうな。


 あいつらに邪魔をされても、剣の練習ができたのはあの人達のおかげだ。いつか恩返しがしたい。それには、ぼくがあの公爵よりも強くならなければいけないんだ。


 予感がする。これからこの大陸は変わる。姫とカナデさんとねこちゃんの力で。


 ぼくは、もっと強くなれる。そんな気がする。





次話投稿は明日の12時10分になります

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