SS11 偉業の報酬(7)★
不快に感じる表現があるかも知れません。ご注意ください。
★ ★ ★ ★ ★ (ジェイド視点)
5日目の朝が来た。
気持ちはスッキリしている。爽快だ。何年ぶりだろう。こんなにも幸せな気持ちで目覚めたのは。
朝食を食べる。昨日とはちょっと違う。仲間と食べている。カナデさん達はいつも通りだ。なら、ぼくもそうする。
今日ぼくは、冒険者になる。「これで活動停止だ!」の宣言ができるまでにはまだ力が足りない。これからは、もっと実力を付けなければいけない。
いつか、カナデさん達と冒険がしたい。その夢に向かっての一歩になる。
ベニザクラ号が案内人ギルド本部に到着した。
「ギルドマスター。ベニザクラ『白銀』帰還しました。依頼任務は達成されました。これが依頼主の確認サインと評価です」
サクラさんが1枚の書類をカルミア様に手渡した。ぼくの感謝の気持ちが込められた1枚だ。
「評価はA+。最高評価だね。初任務完了だ。お疲れ様」
カルミア様がやさしくサクラさんの頭を撫でた。
サクラさんが照れくさそうに笑った。
ん、カルミア様がカナデさんを見たぞ。なんだろう。
「今回の依頼は、カナデ君の力がなければかなり難しい依頼になったと思うよ。ありがとう。サクラを助けてくれて」
「パートナーですから、当然です」
ふふふ、カナデさんが照れている。意外な一面だ。
「カナデさんだから、当然です」
サクラさんが、コロコロ笑っている。この2人は本当に信頼し合っている。まるで家族みたいだ。ちょっと、うらやましい。ぼくも、その仲間になれるだろうか。
ナツメさんとサクラさんは何か用事があるようだ。カルミア様と一緒に奥に行ってしまった。
ぼくは、カナデさんとねこちゃんと一緒に冒険者ギルドに向かった。ドキドキする。どうしよう、子どもはだめですと言われるかもしれない。
中に入ると、冒険者達がいっせいに僕たちを見た。ちょっとびっくりしてしまった。怖いわけではない。みんな優しい人たちだと分かっている。
「よっ奇跡の魔石」
「偶然の加護持ち」
「偶然の貴公子」
変な呼ばれ方だ。そうか、これが二つ名というやつか。ちょっと気持ちがいい。
「冒険者登録をお願いします」
うう、緊張する。
「あーぼく何才」
え、もしかして、だめなの?
「10才です」
「なら、問題ないわ。こっちに来て」
よかったー。だめかと思ったよ。
お姉さんに、小さな部屋に押し込まれた。
「文字は書けそうね。じゃ、この用紙の四角い枠の中にカードに登録する名前を書いてちょうだい」
「あれ、名前だけですか。それに、登録する名前って、偽名でもいいんですか」
「偽名だって、かまわないわよ。どうせ、それが偽名だって証明することなんてできないんだもの」
確かにそうか……。
ちょっと考えていたら、早く書けと用紙を押しつけられた。ぼくを普通の子どもとして扱ってくれている。うれしいかも。
「はい、これで登録終わりよ。このカードはちょっとした魔道具になっているの。この町への出入りや別の国に行った時に、このカードをここにかざせば、カードの持ち主が本人であることを証明してくれるわよ」
無表情でカードを手渡たされた。
E級カードだ。どうしよう。本当に冒険者になってしまった。
「さて、E級冒険者のジェイド君。早速の依頼よ。奥の部屋で所長と面会よ」
なんですかー? それ。
フェロンさんが所長室の扉を叩いた。いったい何が起こっているんだろう。
「ショチョー。カナデとジェイド君連れてきたわよー」
カナデさんがガクッとなっている。どうしたの?
「入れ」
フェロンさんが扉を開けると、中には真っ赤な髪の毛の大きな男の人がいた。知っている。狂乱状態のまちぼうけを持ち込んだ時に、カナデさんにいろいろ言っていた人だ。
そうか、この人がラウネンさんだ。
「カナデ、やっと来たな。てめー、何したか分かってんだろうな」
突然、威圧が飛んできた。これは、王族には無効化されるタイプの威圧だ。すごいぞこの人。使い分けている。
「やだなーラウネンさん。ちゃんと核心部分は隠してますよ」
カナデさんにはかなり効果がある威圧のはずだけど、さすがだ。けろっとしている。
「そういう問題じゃねえ。俺が絶対公開するなといった命令に逆らったということだ」
ははは、カナデさんが舌を出した。こんなかわいい面もあるんだ。
「まったく、そっちの坊主も俺の威圧に無反応かよ。最近の若いやつはどうなってるんだ」
すごいのはあなたですよ。ラウネンさん。
「今日の要件の主はこっちだ」
机上には狂乱状態のままで処理された『まちぼうけ』の素材が置かれていた。
「どうするか決まったか」
ラウネンさんがぼくに聞いてきた。
答えは決まっている。もう、昨日までのぼくではない。今は、頼りになる仲間がいるんだ。それに、今日から冒険者なんだぞ! 胸を張れ、ジェイド!
「魔石以外は全部売ります。そして、売上金は貯金します」
「わかった、いい判断だ。フェロン。手続き頼めるか」
「はーい。まかせてー」
フェロンさんにウインクをされた。初めての体験かも。
ラウネンさんがぼくをじっと見ている。なんだろう。
「坊主、いい顔つきになったな。それは、覚悟を決めた冒険者の顔だ」
ラウネンさんが姿勢を正した。
「マイアコス王国第5王子ジェイドスター・フォンターナ様、偉業達成おめでとうございます」
エレウレーシス連合王国正式の敬礼をした。
泣いてはいけない。
王族として敬礼をしてくれている。
毅然とした態度でここを出なくてはいけない。
黙って王族のおじぎをした。そして、そのままくるりとまわり、静かに扉を自分で開けた。
次話投稿は明日の12時10分になります




