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SS9   偉業の報酬(5)★

不快に感じる表現があるかも知れません。ご注意ください。




 ★ ★ ★ ★ ★ (ジェイド視点)




 4日目の朝が来た。




 その日は、朝からなにやらあの声の持ち主達が騒がしかった。なんというか、興奮(こうふん)している。そんな気配(けはい)がした。




 カナデさんはいつもと変わりはない。ぼくも、昨日と同じ事をすればいい。まちぼうけを捕獲するために、罠を張って待ち構えていた。


 そこに、1体のまちぼうけが現れた。


(きたよ)


(やっちゃいな)


(とびっきりのえがおをみせて)


 なんだろう。いつもよりもはっきりとあの声が具体的な感情の声として聞こえてきた。こんなことは初めてだ。


「よし、来たぞ。ジェイド、配置について」


 カナデさんから合図が来た。


「わかった」


 でも、まちぼうけが止まってしまった。カナデさんが置いていた袋豆(ふくろまめ)を気にしている。どうしたんだろう。


  カナデさんは、何でわざわざあんな所に置いたんだろう。魔物にとって魔力草は好物だ。止まるのは当然だよな。

 

 しばらく様子見だ。きっと、何か考えがあるんだろう。この人は、無駄なことはしない。


 まちぼうけが袋豆にかぶりついた。


「ぴきー!」


 突然だった。まちぼうけが悲鳴を上げた。そして、暴れ出した。


 グルグルその場でもがきながらのたうち回っている。何があったんだ。毒でも入っていたのだろうか。


 まちぼうけに変化があった。


 (つの)()えた、目が真っ赤だ。体も少し大きくなっている。


 知っている。勉強した。これは『狂乱状態』だ。


 でも、まちぼうけがそうなることはまだ確認されていないはずだ。どうしてこうなった。



「ジェイド、まちぼうけが狂乱状態になった。つまり、ランクが1つ上がる。C級魔物だ。これはラッキーだぞ」


 カナデさんがそう言ってはしゃいでいる。


 絶対、カナデさんが何かをしたに決まっている。


「ぴきー」


 そう鳴いて、まちぼうけが草むらをめがけて突進してきた。


「ジェイド、そのまま動くな」


「うん」


 ズバーン


 すごい音がして、まちぼうけに生えた角が木に刺さって動けない状態になっていた。


「……」


 なんだろう、この違和感は、こんな偶然があるわけない。全て仕組まれていたことに決まっている。


「ジェイド、活動停止にしろ」


 カナデさんから指示が来た。


「わかった」


 四足(しそく)を拘束し耳をつかむ。条件は一緒だ。


「ジェイド、宣言だ!」


 ああ、そうだった。一流冒険者の宣言をしないと。


「これで活動停止だ!」


 そっと、(ひたい)に手を()える。まちぼうけの活動が全て停止した。


「よし、ジェイド、これでおまえも一流の仲間いりだ。C級の魔物を素手で活動停止にしたんだ、胸を張れ!」


 カナデさんが頭を撫でてくれた。


 うれしい。この人に褒められるのが一番嬉しい!


 心からの笑顔で笑うことができた。


 あの声の存在が大喜びをしている。




 冒険者ギルドの中はシラーとした空気が(ただよ)っていた。


 カナデさんの少し芝居(しばい)がかった説明に、誰もが納得していない。


「そんな偶然ある分けねーだろ!」


 みんなの顔にそう書いてある。


 でも、確かにそうなんだ。ぼくに説明を迫られたとしても同じことを言う。すごいな、全て計算されているんだ。ぼくが、嘘を言わなくていいように仕組まれている。


 この人は何者なんだろう。


「では、『本人魔石捕獲証明書』を発行しなくてはいけないね」


 突然後から整った顔立ちのエルフが現れて、机の上に何かの書類を広げた。


 ぼくでも知っている人だった。大陸の象徴(しょうちょう)、サクラさんの父親、S級案内人、いろいろな名前と立場を持っている人物、カルミア様だ。


  みんなが顔を見合わせている。そして、吹きだした。


 カルミア様のあまりにもタイミングのよい登場の仕方に笑いが止まらない。


 冒険者のみんなから、もみくちゃにされてしまった。


 うれしい。ぼくもこの町の冒険者になったような気分だった。


『本人魔石捕獲証明書』は、2人のギルド長とナツメさんの署名がスラスラとされて、正式に発行された。これも、カナデさんの計略(けいりゃく)の一部なんだろう。本当にすごい人だ。




 ぼくの成果は、次のようになる。


 霧散によるD級魔石3個。


 活動停止状態で取り出したD級魔石が5こ。そして、この5この魔石にはプラス評価がつく。また、『本人魔石捕獲証明書』も発行された。


 C級魔石が1個。そして、活動停止状態なのでプラス評価がつく。この魔石には『奇跡の魔石』の称号(しょうごう)がついた。


 狂乱状態の『(つの)』が一本。


 正直できすぎだ。きっと、どんなA級冒険者でも、この成果は出せなかったはずだ。最初に感じた直感は正しかった。カナデさんは、C級レベルではない。すでにS級レベルの(いき)にいる。




 この森で過ごす最後の夜がやってくる。ぼくの夢の終わりが近づいている。さみしい。悲しい。助けて。やっと、この感情を思い出せたのにな。


 仕方ないよ。ぼくは王族なんだ。気持ちにいくつもの(よろい)を重ねていなくてはいけないんだ。じゃないと、ぼくの大好きな人たちが困ることになる。


 ぼくが我慢すればいい。


 そうすれば、全てがうまくいくんだ。


 仕方ないよ。


 カナデ、たすけて!





次話投稿は明日の12時10分になります

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