SS4 ねこちゃん人形の暖光★
『魔術学院編』の投稿を開始します。
11月10日(月)7時10分です。
新しい活動報告があります。よろしかったらご覧ください。
カナデ達がエレウレーシス連合王国にある『魔術学院』に旅だったのが、4月1日である。
そして、4月1日はカナデとつくも(猫)がこの世界に転生した日でもある。
2人は大樹の森の8層奥地に、高次元空間で転生の後転移させられた。この深層に来た事に理由があったのかどうかは分からない。なにしろ、うっかり神様だからだ。
しかし、結果としては、最良の転生先であった。それは、サクラと出会えたからだ。そして、一年間、『入り口の町』というこの世界で一番民主的で優しい人たちが住む町で暮らすことができたからだ。
ここは『火の木戸』の砦である。その出入り口には、つくも(猫)そっくりの猫人形がエジプト座りで鎮座している。
この猫人形は、頭を撫でると「ニャン」と鳴くのだ。
「カナデ達、そろそろ王都に着いている頃だな。あの猫も一緒に行っちまったか。さみしいな」
そう言って、1人の冒険者が猫人形の頭を優しく撫でた。
「ニャン」
猫人形が「ぽわっ」と、暖かく光った。
「おう、不思議なんだよな。こうして撫でると気持ちが楽になるんだよ」
男が胸をすっと撫でると、そこから「ぽわっ」と紅色の光が湧き出した。この光は、その男には見えていない。
男から湧き出た光は、そのまま、空に昇っていった。
「ねこちゃん、元気かな。会いたいよー」
女の子が泣いている。友達とけんかをしたようだ。いつもなら、どこからかねこちゃんが現れて、膝に頭をスリスリしてくれた。
「ねこちゃん。会いたいよー。グスン」
ねこちゃん人形を抱きしめ、頭を優しく撫でた。
猫人形が「ぽわっ」と、暖かく光った。
「あれ、どうしたんだろ。心がぽかぽかする」
女の子が胸をすっと撫でると、そこから「ぽわっ」と紅色の光が湧き出した。この光は、その女の子には見えていない。
女の子から湧き出た光は、そのまま、空に昇っていった。
案内人養成学校の昇降口には、つくも(猫)そっくりの猫人形がエジプト座りで鎮座している。
「校長先生、おはようございます」
「ねこちゃん、おはよう」
元気よく登校してきた女生徒が猫人形の頭を撫でた。
「ニャン」
猫人形が「ぽわっ」と、暖かく光った。
「ふふふ、かわいい」
女生徒から湧き出た光は、そのまま、空に昇っていった。
大劇場の大ホールで楽団の演奏が終わった。観客は総立ちで拍手を送っている。
楽屋に戻ってきた演奏家達は、猫人形に話しかける。
「ねこちゃん。ありがとう。君のおかげだよ。全然緊張しなかった。素晴らしい演奏ができたよ」
どんなに不安なときでも、猫人形の頭を撫でて、
「ニャン」
と鳴いてもらうと、スッと心が落ち着くのだ。
楽団員達から湧き出た光は、そのまま、空に昇っていった。
いま、入り口の町にあるつくも(猫)の人形は、カナデ達が配った猫人形だけではない。その後も、欲しいという人がどんどん現れた。
ビオラが作ったこの人形は3000体だ。つくも(猫)は、残っていた人形全てに、神力を注いでいた。
各砦に置いてある猫人形には、冒険者達が毎日挨拶をしてから頭を撫でている。そのたびに、あの暖かい光が空に昇っていった。
その光は、どこに行くのだろうか。
今日も、入り口の町の空に、紅色の暖光が昇っている。よく見ると、その光が向かっているのは、エレウレーシス連合王国がある方角だった。
「カナデがなにやら気になること言っていたわね。ねこちゃんの神力が強くなっているってどういうことかしら」
つくも(猫)そっくりの猫人形に今日も話しかけているのはツバキだ。
「ねこちゃんに会えない」
本当なら心が張り裂けそうな程の虚無感の中で泣いて暮らしていたかも知れない。
でも、エルフという種族の特性を差し引いたとしても、心はいつも穏やかでぽかぽかしている。
「この、ぽわっと光る暖かい光と何か関係があるかも知れないわね」
ツバキの研究者としての感性が何かをつかもうとしていた。これからのカナデとねこちゃんにとって、何か、とても大事な事のような気がしてならない。
猫の頭を優しく撫でながら、ツバキは思考の海の中にいた。
『魔術学院編』は、別タイトルのお話として投稿が開始されます。
「大樹の森編」では、今回のような、SS扱いの作品をボチボチと投稿します。
魔術学院編の執筆中に、伝えていなかったエピソードがあるなと感じました。
不定期投稿になりますが、読んでもらえると嬉しいです。




