046 イローニャ ★
本日2回目の投稿です
「なぜだ、どうしてカナデは現れなかった」
入り口に、グライヒグが配置した妨害者達が待ち構えていた。
しかし、あいつの実力ならば、かすり傷一つ追わずに突破できることを私は知っている。
だから、放置した。
E級からC級までの魔物を狩り尽くしたやり方には、正直憤慨している。
魔物の生態系を壊してしまう。そんなことは許されない。
しかし、グライヒグに言われてしまった。
「それで、勝てるのですかな」
私は、答えられなかった。
だから、それも黙認した。
「訳が分からない」
「理解しがたい」
「非常識だ」
どの言葉をあてはめてもまだ足りない。あいつが規格外の力を持った冒険者であることは、この数ヶ月の行動を見ていれば分かった。
初めは本当に疑っていた。なぜなら、何か細工をしなければあり得ない結果だったからだ。私の国では勝つために裏工作をすることは当たり前だ。むしろ、何もしないで負けるやつは愚かだと笑われる。
でも、今ならわかる。
全て真実だと。
この町で過ごすうちに、もう一つ分かったことがある。
『活動停止』この技術が冒険者の本質だ。私も冒険者だ。できることなら、この技術を極めてみたかった。
しかし、今の状況下では、叶わぬ夢だ。
とにかく、今は、あいつに勝つことに全力を注ぐ。それだけだ……。
すでに魔石を取れる魔物は入り口付近にはいない。
ならば、一刻も早く、B級エリアに駆けつけてくるはずだ。
その予定だった。
やつが来たら、私は「おまえの分は残しといてやったぞ」そう言って、A級エリアに行くはずだった。
しかし、おまえは現れなかった。
なぜだ、もしかして、あいつらに後れを取ったのか、もしそうなら、失望したぞ。
時間が無い、確実に勝つためには、A級エリアの魔石が必要だ。移動するしかないか。
ここからだと、魔力補給をしながら身体強化をして駆け抜ければ、3時間ぐらいで到着できる。狩の時間が30分として、往復で6時間30分だ。
今の時間が10時だから、ギリギリ時間内に戻れるはずだ。
「なぜだ、どうしてトカゲ型の気配が報告よりも少ない」
「なぜだ、どうして狼型が挑発に乗ってこない」
「なぜだ、どうしてトカゲ型が穴から出てこない」
「なぜだ、どうして狼型が逃げていくんだ。これでは永遠に追いかけっこだ」
なぜだ、なぜだ、なぜだ、
まずいぞ、A級の魔石がないと質で不利になる可能性がある。
くっ、こんなことなら魔石の回収を人任せにするべきではなかった。あいつらに任せたので、地面接触の魔石が出てしまっている。
このまま狼型と鬼ごっこでは、体力も時間もどんどん削られていく。
まずいぞ、まずいぞ、まずいぞ、
ここからS級エリアまで、120キロメートル、どうやっても間に合わない。
仕方ない、不本意ではあるが、B級エリアに戻って、もう少し魔石の確保をしよう。
「来ていないだと、本当にか、本当にカナデは来ていないんだな」
「はい、間違いないです。誰1人、見ていません」
そんな馬鹿なことがあるのか。
カナデが来ていない。
サクラシア様をあきらめるのか。
あいつに、そんなことができるのか。
どうする、やつが来ないなら、確実に私の勝ちだ。やつが勝てるのは、時間だけだ。
どうする。どうする。
なんだ、この不安感は、どうやっても、この状況なら私の勝ちに決まっている。負ける要素が全くない。
なのに、なんなんだ、この焦燥感は……。
「私は、出口に向かう。もし、やつが来ても邪魔はするな。もう、どうやっても、やつに勝ちはない」
本当に、奴らに負けたのか。
「帰っただと……」
「はい、魔物が1匹もいないからあきらめたと言って、帰りました」
「ここで妨害したのか」
「いや、いつまで待っても来なくて、だいぶ時間が過ぎてから、急に現れたんです。帰ると言うから、そのまま行かせました。あのー、まずかったでしょうか」
「いや、それでいい」
何なんだ、いったいどうなっている。
「あのー、イローニャ様。これがD級C級の魔石です」
くっ、なんだこの魔石は、傷あり地面との接触ありのくず魔石ばかりじゃないか。
「いらない」
「え、いらないんですか」
「私の勝ちは決まりだ。必要ない」
「駄目ですよ。イローニャ様、グライヒグ様の命令ですよ。万全をきせとね」
「ふん、グライヒグの影か」
「油断するな。ですよ」
「わかった、不本意だが、命令には従う」
こんなくず魔石、私の実力が疑われるが、仕方ない。
「イローニャ様、終了までまだ1時間ほどありますが、終わりでよろしいのですか」
「ああ、問題ない」
「では、次元箱を預からせてもらいます」
「ああ、よろしく頼む」
「では、封印のカードを掲げてください」
「これでいいか」
「勝敗は、明日10時に冒険者ギルドのホールで行います」
「わかった、必ず行く……。カナデは本当にもう出てきたのか」
「はい、午後2時頃戻られました」
「魔石は……いやいい」
「終わったのか。これで、私は本国に帰っても、処分されることはないのか」
「本当に、私は勝てたのか……」
次話は明日7時10分投稿




