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044 神装力第三権限開放

 



 ここは案内人ギルドの執務室である。明日はいよいよダンジョン勝負の日なのだが、目的の場所までどうやって移動するかを確認している。


「カナデさん。やっぱりわたしが連れて行くでは駄目ですか」


「うーん、つくも(猫)がいれば全く心配ないから、私としてはそれでもいいんですが……みんなが猫で納得してくれるかが問題です」


「そうでした。ねこちゃんのことは秘密でした」


 つくも(猫)が神獣しんじゅう様であることはまだ秘密だ。まあ、神獣というよりも本当の神様なんだけど……。


「つくも(猫)の強さは、一部の人しか知らないので、こういう時は面倒なんですよね」


「そうですね……分かりました。今回は大人しくお留守番しています。ああ、そうか、カナデさんの前祝いの準備しておきますね」


今回サクラさんはカボーグ邸でお留守番だ。万が一を考えての対策なので仕方ない。


「それなら、私がギンギツネ号で連れて行こうか」


 カルミア様がとんでもないことを提案する。


 お断りします。勝負の前に気疲れします。


「お気持ちはありがたいのですが、すでにイグニスの知り合いが連れていってくれることになっているんです」


「そうかね、ならいいのだが……」


 何となく寂しそうだ……久しぶりにギンギツネ号に乗りたいのかな。ごめんなさい。だが、やはり断る。




案内人ギルドを出て、冒険者ギルドに向かう。イグニス達と合流するためだ。


 入り口の町から目的のダンジョンまでは600キロメートルぐらいの距離になる。


 サクラさんの風の道なら5時間ぐらいで行けるのだが、他の風使い達ではちょっと無理なのだ。なので、今夜はフーニス湖の待避所にお泊まりする。




 冒険者ギルドに入ると、直ぐにイグニスが駆け寄ってきた。


「来たなカナデ、紹介するよ。おれの知り合いの案内人だ。B級だからそこそこの腕だ」


 ショートカットの小柄な女性だった。耳の形は人型なので、純粋なエルフではないのだろう。


「私はコスティよ。二つ混ざりのエルフです。よろしくね」


 爽やかな笑顔で挨拶をされた。


 二つ混ざりとは、エルフとドワーフの両方の両親か祖父母がいると言うことだ。


「カナデです。お世話になります」


 そのまま、彼女達がいたテーブルに案内された。


「カナデ君の事はよく知っているわよ。実は弟がE級冒険者なのよ。で、君は教官様ってわけ」


 そう言って、いたずらっぽく笑ってから、ふと、真面目な顔になる。


「今回の勝負は、みんなが注目しているし、応援もしているのよ。がんばってね」


「ええ、負けるつもりは全くないですよ」


「ふふ、頼もしいわね。じゃ、出発はお昼過ぎよ。場所はここで落ち合いましょう」


「わかりました」


 イグニスにかるく目配せをしてから、コスティさんは、入り口に向かって歩きだした。




「お昼まであと少しだが、どうする。ここで食べるか」


「そうですね、移動も面倒ですし、そうします」




 食事を食べている間中、いろいろな冒険者が声をかけてきた。


 みんなが応援してくれている。励みになる。




 コスティさんの風の道は、何というか、普通だった。


 イグニスに言わせると、このレベルがB級で当たり前なんだそうだ。サクラさんが特別なのだということを、こんこんと言い聞かされた。


 フーニス湖の待避所には、たくさんの樹魔車両がすでに止まっていた。そして、やはり、お祭り騒ぎだった。まあ、いいけど。冒険者とはこういうのりだ。


 何か言いたそうにしているが、イグニス達が我慢しろと目で合図を送っている。ありがたい。正直、ちょっとゆっくりと休みたい。


 つくも(猫)もいつも通りだ。私の後をテトテトと歩いてついてくる。


 さて、明日に備えて早めに休むことにしよう。







 ここは、フーニス湖から300キロメートルほど東に行った場所にある4層のB級ダンジョンだ。


 おまつり?なんで屋台まであるの。4層とはいえ、大樹の森だよここ。


 ダンジョンがある小高い崖の周りには、さまざまな樹魔(じゅま)車両が止まっていた。案内人ギルド以外でこんなに樹魔車両を見たのは初めてだ。


「カナデ、あんな国の奴らには、きつーいお仕置きが必要だぜ。遠慮はするな」


 イグニス。聞こえたらどうする。


「外から妨害できないようにはしといたぞ」


 昨日ラウネンがニヤッと笑ってそう言っていたが、たしかに、これだけ監視の目があれば、今からの妨害は無理だろう。




「ふん、逃げずに来たか。だが、この騒ぎは何だ。真面目にやる気があるのか」


 イローニャが顔をしかめている。お堅い国の人には分からないんだろうな。冒険者は、ノリだよノリ。


「冒険者って、いつもこんな感じだろ」


 私がポーカーフェイスでそう答えると、


「まったく、これだから冒険者は嫌いなんですよ」


 包帯でぐるぐる巻きにされたミイラがいや、某国の魔動機関技師が出た。


 あれだけ吹っ飛ばされて、これだけの怪我で済むととは、よほど性能のいい護身用の魔道具があるんだな。どこで売っているんだろ。教えて。


「あんた、よく顔出せたわね。ここ、樹魔達がいる森よ」


 シンティがあおる。というか、いつ来た。どうやって来た。


「ふん、調子に乗りおって、小娘が。まあいい、明日になれば、こいつはただの小僧だ。そして、イローニャが正式なサクラシア様のパートナーだ」


 そう言い捨てると、賢魔鳥(けんまちょう)が引く車両でそそくさと帰っていった。


 やーい、ホントは樹魔が怖いんだろー 心の中で舌を出す。


「悪いが、私はどうしてもこの勝負に勝たなければならない。C級ごときに負けるわけにはいかないのだよ。全力で行かせてもらう」


 隠す気があるのかと疑っていたが、どうやら最初から、自分の行っていることがずるだと思われてしまうことだとは思っていないらしい。


 なるほど、思想が違う国で育つと価値観が違ってくるのは当然か。


 確かに常識で考えると、私の存在は異常だ。ナツメさんに「おまえは何者だ」と言われた時に、イローニャが「どんなずるをした」と言った時の気持ちが分かった。


 真面目なやつほど、あり得ない力を目の辺りにすれば、『ずるをしたにちがいない』と考えることになる。なので、あの時のイローニャの反応は、ある意味正常なんだ。


 きっと、私に対する態度も、失礼なことだとはみじんも思っていないのだろう。


 だからこそ、今回はぐう根も出ないほどの力の差を見せつける必要がある。




 グライヒグのあの自信は、すでに準備できる妨害工作は全て配置済みということだろう。


 ラウネンが監視させていた者達から報告を受けていたが、ここ4日間はこの町の冒険者は誰もこのダンジョンには入れてもらえなかったようだ。


 なにか、いろいろな罠を仕掛けていたのだろう。まあ、全て無駄だけどね。




「では、C級スター冒険者イローニャとC級(ゴールド)スター冒険者カナデ、のダンジョン勝負の説明を始めます」


 ん、あの人たち、確か、C級昇格試験の時の試験官だった人じゃ……。


「我々は、公平な勝負を実現するために、ストラミア帝国とエレウレーシス連合王国の推薦を受けて、見届け人として今日ここにいます。どちらの陣営もその事を忘れないように」


 マジですか、何で2つの超大国が推薦人で出てくるのよ。


 その時、「まかせとけ」と言って、そそくさ出ていったゴリラの顔が思い浮かんだ。


「あいつか……」


 でも、本国の推薦できた試験官達の前では、さすがにごり押しの言い逃れはできないか。うん、ラウネンやっぱりありがとう。




「ダンジョンの中にいられる時間は、午後6時までです。ダンジョンに入る時間は、自由です」


「身につける物は、ギルド支給のこの携帯型次元箱と、魔石回収用の次元箱です」


「携帯型次元箱には、3日分の食料と飲み水が入っています。武器と魔力回復、体力回復のポーションは私達が見ているところで、入れ替えてください」


「次元箱の大きさは大、中、小から選べます」


「ダンジョンを出るときに、この回収用次元箱だけ預かります」


「この箱は、厳重な封印がされて、明日の朝まで行政区の金庫の中に保管されます」


「勝敗は、ダンジョンにいた時間、魔石の数、魔石の質で決まります」


「時間は、短い方が勝ちです」


「数は、魔石のランクに関係なく多い方が勝ちです」


「質は、換金金額で多い方が勝ちです」


「最後に、これはストラミア帝国方式の特別ルールです。ダンジョン内で起こった事に関しての抗議は一切認められない」


「以上です。質問は認めません」


「では、それぞれ装備を受け取り、準備ができた方から、ダンジョンへ入ってください」


「ダンジョン勝負の始まりです」




 冒険者達からは、当然「そんなルール認められるか」「横暴だ」「卑怯者」などなどの、さまざまなヤジが飛ぶ。


 そんな声を一切無視して、


「さて、私はもちろん、大きい方だ」


 イローニャは、大きい箱を背負う。一応背負える構造にはなっている。


「持ち込むのはこれだけだ、確認してくれ」


「はい、確認しました」


「では、お先に失礼する」


 イローニャはそそくさとダンジョンに入っていった。


 何か打合せでもあるのかな、中の妨害者達と……。


「では、私は速度重視なので、小さい方でお願いします」


 嘘である。本当は、全ていったんアイテムボックスの中に入れる予定だから、大きさは関係ない。


 ただ、かなり深い場所まで潜ることになるだろうから、早く戻ってきた時の言い訳用だ。


「持ち込みはこれだけです」


「はい。確認しました」


「では、行ってきます。シンティ、つくも(猫)をよろしく」


「任せて、行ってらっしゃい」


 つくもには、ここの人たちの安全を確保してもらうために残ってもらう。シンティもいたので丁度いい。


 さて、行きますか。




真色眼(しんしょくがん)発動)




 うーん、この場所には赤玉なしか。以外だな。人質とって脅してくるかと思っていた。


 では、ダンジョンの中はどうでしょう。


 中に入ると、いるわいるわ、赤玉だらけだ。何人いるの。


 これだけの人数の相手はさすがに面倒だな。




神装力(しんそうりょく)第三権限貸与(たいよ)開放。神装結界発動)




 世界樹の結界と同じだ。そこにあるのに見えない、いや、認識できない結界だ。


「いつくる」「早く来い」「痛い目に遭わせてやる」そんな感情が赤玉から漏れている。


 その中を、悠然と歩いて行く。


 第1陣の妨害者達を通り抜けるまでに20分程かかってしまった。


 本当に、どこまで用心深いんだ、あの魔動機関技師は……。


 なので、一気に深部まで行くことにする。赤玉の配置を見ると、第2陣がB級が生息しているエリアに集中して配備されている。


 そして、第3陣が、A級エリアの入り口にいる。そちらの人数はそれほどいない。ここまでは来られないだろうということか。


 そして、予想はしていたが、E級D級C級の魔物は、1匹もいない。すべて、妨害者達がこの5日間で取り尽くしたようだ。


 予想していたとはいえ、その徹底ぶりには敬服する。たぶん、あの魔動機関技師の指示だ。




 相手の作戦はたぶんこうだ。


 C級、D級の魔石はたぶんあの妨害者達が持っている。出る直前にイローニャに渡すことになっているはずだ。


 E級は、もう処分してしまっただろう。


 B級のエリアでは、怪我をして動きが鈍い私の妨害をするのだろう。怪我は、さっきの奴らが仕掛ける予定だったはずだ。


 A級のところにいる奴らは、もし来たら邪魔してやろうぐらいのつもりだろう。


 そして、B級の実力があるイローニャは、自分で、B級、A級を倒して魔石を確保する。まあ、こんなところだろう。


 さて、こちらも今回は手加減無しだ。




「神装力第三権限開放」




 誰もいないから、声に出して言いました。ちょっと、かっこいいかも。


 普段つくも(猫)から貸与されている神装力は、冒険者が限界まで出せる力の約10倍までに制限している。


 今回は上限無しだ。最初に使った時は、体が重くなり動きずらかったが、今ではかなり使いこなせるようになった。


 40兆個の数倍は存在する特別なミトコンドリア一つ一つが、神力の(もと)になる化学物質をフル生産している。力がどんどん湧き上がってくる。


 くっ、相変わらずのでたらめなエネルギーだ。油断していると意識を持っていかれそうだ。小さな猫の体でなぜ平気なんだ。


 つくも(猫)の普通を100パーセントとする。弱いが50パーセント、強いが150パーセント、今出すのは20……いやもっと少ない。5ぐらいだ。イメージだ。イメージしろ……。


 よし、できた。




「神装力『風の道』発動」




 人差し指を一本立てる。それを空中でクルクルッと回して渦を作った。


 それをポンと前に投げる。


 白銀に輝く風の渦が1キロメートルぐらい先まで伸びていった。


「これは、地味に派手だな」


「神装結界を重ねがけ」


 白銀に輝いていた渦が、そこにあるのに認識できなくなる。


 そっと地面を蹴って渦に飛び込む。


 私は風になった。


 途中で監視をしている妨害者達は、ダンジョンの中で風が吹きびっくりする。しかし、目の前には何もない。首をかしげる。


 B級エリア、イローニャが魔物と戦っている。


「停止」 


 ピタッと停止する。うん、これは便利だ。


 さすがはB級実力者だ。手際よく霧散(むさん)させている。


 おや、魔石を回収しているのは取り巻きさんですか。気をつけなさい、落とすと価値が下がりますよ。


 ほら、落とした。おやおや、次元箱を担いでいるのも取り巻きさんですね。


 ご苦労様。


「発進」


 景色が後ろに吹っ飛んでいく。


 一気に、B級エリアを抜ける。目指すのは、A級エリア、そして、S級エリアだ。




 大樹の森は広大だ。なので、ダンジョンも広大なのだ。


 A級エリアは、ダンジョンの入り口から100キロメートルほどの深部にある。


 ストラミア帝国の魔道車を使っても、3時間はかかる距離だ。


 その距離を私は30分で到達した。


 A級エリア入り口にいた妨害者達は、風が通ったぐらいにしか思わない。


このB級ダンジョンは、この森で唯一哺乳類(ほにゅうるい)型魔物が生息している。


 なので、普段は冒険者達もちらほらといるのだが、今回は1人もいない。


 まあ、そうなるよな。でも、この状況は、私にとっても好都合だ。


「数はと、哺乳類型が100ってところか。ほとんどが狼型か。爬虫類(はちゅうるい)型が、150ってところだな。うわー、巨大トカゲ型かぁ」


 トカゲ型は、切っても再生する。面倒なやつだ。


「ラウネンが、哺乳類型は残しとけって言ってたな」


 時間も貴重だ。一気にいきますか。




「神装力『挑発』発動、適用トカゲ型」




 効果はてきめんだった。


 次々に向かってくるトカゲ型、急所である喉仏(のどぼとけ)に手刀を入れ霧散させる。


 そして、魔石が地面に落ちる前にアイテムボックスへ送る。


 ダンジョンでは、魔素は直ぐに回収される。なので、魔石も地面に触れると直ぐに魔素の回収が始まってしまう。


 だから、落ちる前に確保するのが高ランク冒険者の技だ。




 3分の1の50体で終わりにする。


 E級D級の魔物は、いつの間にかどんどん増えていくが、C級から上のランクは、個体数が減りすぎると復活できなくなる。なので、これ以上は乱獲だ。


 それに、巨大トカゲの魔石は貴重だ。査定額も高い。


 ここでの狩は終わりだ。


 再び風になる。目指すのはここから120キロメートル離れたS級エリアだ。






次話は明日7時10分投稿

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