041 ツバキの報告 ★
本日2回目の投稿です
事情を説明した後、ふてくされた表情でカナデがギルド室から出ていく。それを、黙って見送った後、ラウネンがツバキに話しかけた。
「おまえがついていたのに、どうしてこうなった」
責めるような言い方ではない、
「私のミスよ。ちょっと浮かれていたの」
ツバキはそう言いながら、ちょっと長くなるわよと目で合図をしてソファーに座る。
ラウネンもしかたねーなと言う表情でツバキと向かい合わせに座る。
「新しい力が育っているわ」
「ん、何のことだ?」
「3つの力よ。1つ目はベニザクラ号ね。今までの樹魔車両とは格が違うわ」
まあ、そうだろうとラウネンもうなずいた。
「『A級魔物が2体、味方にいるようなもんだ』イグニスの言葉よ。でも、その通りだったわ。6層レベルの魔物では相手にならないわ」
大きな戦力アップだ。大樹の森の調査には欠かせない。ギルド所長としては朗報だ。
「2つ目の力よ」
ツバキは少し声を潜める。
「神獣様の結界は強力よ。そして神力もね。帰りは多分だけど、その力で魔物を追い払っていたわ」
「それは何層のことだ」
「6層よ。それとね、やはり6層で『まだら』に会ったわ」
ラウネンがピクッとする。
「ねこちゃん、ピクリともしなかったのよ。何の問題もないって事ね」
「つまり、8層の魔物達ではあのアホ猫にはかなわないって事か」
「ええ、そして、たぶんだけどカナデもそうよ」
信じられない。と言う表情をする二人。しかし、思い当たることはたくさんある。
そして、あの二人は、8層から魔物達を圧倒しながらやって来たんだと確信する。
「3つ目の力よ」
ここでツバキはちょっと続ける言葉をためらった。が、意を決したように話し出す。
「本当に浮かれていたの。新しい2つの力を目の辺りにして、これで10層がかなり近づいたってね」
ツバキはちょっと笑った。
「新兵器……これはカナデの国の言葉。でも、魔法でも加護でもない、人が作り出せる力の事よ」
ラウネンの表情が固まった。その言葉の意味が分かるのだ。
『魔道機関』ストラミア帝国で台頭している勢力の力の源だ。この力は、強力な兵器を生み出せることが分かっている。この力に対抗するために、エレウレーシス連合王国が作られたと言ってもいいくらいだ。
「私の作った『振動波発生装置』は強力だったわ。1つの種族を全滅にするぐらいにね」
そう言うツバキに、悲壮感はなかった。気持ちは完全に切り替えられている。この能力はエルフの特性でもある。
「それとね、第3世代型次元箱は有用よ。軍事転用としてもね。3メートル級のまんまるが40体以上収納できるのよ。それに、75立方メートルのユニットを丸まる収納できるということは、その大きさの軍事用兵器も収納できるということよ」
「絶対に他国に知られてはいけない技術だな」
ラウネンが言葉を吐き出す。
「ええ、でもねこちゃんの結界は強力よ。突破できる力があるのは世界樹の精霊だけね。なので、とりあえずは様子見でいいわ」
ラウネンがちょっと表情を緩めてうなずいた。それから、いたずら好きの子どものような表情で言葉を続けた。
「風の森パーティーはどうだった」
「フフフ、やっぱりあなたの計略ね。まあ、カナデも気がついていたみたいだけど」
ツバキさんが嬉しそうに笑う。
「最高の人選よ。褒めてあげるわ」
ラウネンが照れくさそうにそっぽを向いた。
「さて、おまえの尻拭いは久しぶりだな。10年でいいのか、捕獲禁止令は」
フンという表情でラウネンを睨んでからツバキがうなずく。
ラウネンは「 しかたねーなー」と言いながら、嬉しそうに所長室を出ていった。
ツバキは「ありがと」と小さくつぶやいた。
次話は明日7時10分投稿




