001 高次元空間
改訂版になります よろしくお願いします
「■▲◆ ★●▲ ◆★ ■●」
パチチ パチチ パチ パチ
「○☆ ◇□△☆ ▽☆ ◇△▽◇□」
パッ パパパッ パッ パパパパパ
白い世界だ ホワイトアウトの世界ってこんな感じかなー。
「★●▲ ▼◆● ▲★ ■★」
パチチ パチチ パチ パチ
「◇☆ ◇▽△☆ △☆ □△◇▽○」
パッ パパパッ パッ パパパパパ
それは、光の束だった。光のはじけ方は、線香花火に似ている。まるで会話をしているように交互に光っている……。
ぼんやりと光を見つめていた。
(あっちの光は、謝っているようにみえる。そして、こっちの光は怒っているように見える。おもしろいな)
(ん そういえば、ここはどこなのだろう。そして、おれは……)
突然、「ゴゴゴゴゴー」という空気を切り裂く音を思い出した。
空から真っ赤に燃えた何かが落ちてくる……。
(隕石? まさかね。でも、ここに向かっているように見えるぞ)
あとは、ただぼう然と確かにここに落ちてくると言う確信を持ったまま、その燃える炎の玉を見つめていた。記憶はここで途絶えている。
(あれが隕石だったら。直撃だったら、おれは間違いなく死んでいる)
(あれっ、なら、おれは死んだのか。ここは死後の世界なのか。そうか、本当にあったんだ。神社は無事かな。ニャンコたちは……)
夢とも考えられる。でも、間違いなく自分が死んだのだと言うことを受け入れたその時、周りの景色に色が立ち現れた。
それは、私がよく知る神社の境内だった。
(あっ ここおれの家だ。家族は……)
家族の姿を思い描いたその時、中学生ぐらいの時の記憶が突然よみがえった。
よく見ると、自分の姿も中学生の時のものだ。
「おまえは本当にあっさりしているな」
兄の声だ。
「ホントよね。希望の高校に落ちたのに、落ち込みもしないなんてね」
姉の声だ。
「希望って言ってもね、まわりが勝手に変な期待をして盛り上がっていただけだよ」
私の声だ。
「それって、おじさんたちの事でしょう。ははーん、あなた試験で手をぬいたでしょう」
姉はいつも鋭い。
「……」
「まあ、いいわ。私もおじさんたちの態度には思うところがあったからね」
「父さんと母さんには黙っててやるよ。でも、いつか、ちゃんと謝るんだぞ」
兄はいつも諭してくれる。
発達心理学の研究がまだ社会に浸透していなかった時代、私の偏った能力は小学生としては異質なものだっただろう。特質した能力に周りの大人達、特に親戚関係が「ノーベル賞も夢ではない」と舞い上がった。
私は自分の興味のあることにしか関心がなかった。そして、成長するにつれて、だんだんとできない事の方が目立つようになっていった。
周りの大人達の期待はしぼんでいった。そして、有名私立高校に落ちた時点で、それは、決定的なものになった。
私としてはその高校への進学は、全く興味がわかない事柄だったので、正直、これで行かなくても良くなったとほくそ笑んだ。
親戚から非難されている両親の姿を見た時に心が痛んだ。しかし、直ぐに興味があることに関心が移った。
「そういえば、ちゃんと謝ってなかったな」
「それが、おぬしの心残りなのだな」
線香花火のような光の束が、顕現した。
「えっ 神様……?」
(あれ、言葉が出る)
アニメや絵本によく出てくる、あごに白ひげをはやした白装束の優しそうなおじいさん姿の神様だった。そして、自分は中学生の頃の姿だった。
「あれ、生きているの。それとも夢」
「夢ではないぞ。ここは、今、おぬしが作り出した仮の世界だ」
「仮の世界……なら、やっぱり夢?」
「……夢ではない。ここは高次元空間じゃ。そして、おぬしは間違いなく、あそこで死んだんじゃ」
「……そうかぁ やっぱり死んだのか」
「すまんのう……」
「えっ どうして神様が謝るんですか。っていうか、あなたは神様でいいんですよね」
「そうじゃの。おぬしが知っている知識の中で、わしの存在を説明するなら、わしは神様になるのう」
「私が知っている知識の中ですか。なるほど、つまりここは、私が無意識のうちに作りだした、私の想いが強い場所のイメージということですね」
「その通りじゃ。おぬしが自分の死を認識したことで顕在化された世界じゃ」
「で、続きですが、なぜ、神様が謝るんですか」
「それは、俺様が説明してやろう」
声がしたのであたりを見渡すが誰もいない。
「下だ下。下を見ろ」
…………猫がいた。
「……ねこ……もしかして、『ネミ』……」
昔飼っていた猫にそっくりだった。
「ねこではない……というか、まあ、今はねこか。でも、ねこではない」
「言っている意味がよくわかりません」
「この姿は、おまえがイメージした仮の姿だ。おまえ、この姿に何か思い入れはないか」
「あーある。私はねこが大好きだ。その姿も大好きだったねこの姿だ」
「あーそれでか……というか、さっきの続きだ。いいか、こいつ、あー神様か。いや、こいつだ、こいつが悪い。こいつのせいで、おまえは死んだんだ」
「……詳しく」
猫の説明によると、こういうことだ。遙か彼方のどこかの銀河で、神様が捜し物をしていたが、うっかり小さな小惑星の軌道をずらしてしまった。
その小惑星は、いろいろな小惑星にぶつかり小さく削れていったが、最後に残った核のようなものが、数十億年の年月を経て、偶然にも地球の引力に引かれて落下し、偶然にも私の家の近くの裏山に落下し、偶然にもたまたまそこで笛の練習をしていた私の上に落ちてきた……というお話だった。
うそでしょう。
「えーと、あなたは神様でしょう。小惑星の軌道ぐらい簡単に変えられるんじゃないんですか」
「すまんのう、小惑星帯に誘導したのでそこで消滅するはずだったんじゃよ。最後まで確認しなかったわしのミスじゃ。本当に申し訳ない」
「はー。まあ、いいです。もう、すんだことです」
「おまえは、あいかわらずあっさりしているな。いいのかそれで」
「べつにいいよ。それより、さっきから君(猫)は、私のことをよく知っているような口ぶりだね」
「ああ、よく知っているさ。なぜなら、ずっと一緒にいたからね」
「それじゃー、やっぱり『ネミ』なの。でも、『ネミ』は雌だったよ」
「だから、ねこではない。俺様は、つくも神だ」
「……神様……猫神様?」
「つくも神だって言っているだろ。俺様はおまえが大事にしていた横笛で顕現したつくも神だ」
私の家は『笛杜神社』という神社だ。父親が神主を務め母親は経理を担当するような小規模な神社だ。
兄と姉は他に仕事を持ちながら例大祭など忙しいときに手伝いをしている。私も、研究所に通いながら時々お手伝いをしている。私の役目はその時に神楽を奉納することだ。
笛杜神社には、かなり古い時代に作られたと思われる『神楽笛』が祭られている。
不思議な笛で、口をつける部分の節目に何かが閉じ込められていて振ると「カラカラカラ」と石のような音がする。
竹の成長の段階で紛れ込んだと考えられるが、まずそんなことは起きないので『笛神様の石』と尊ばれ町の重要文化財にも指定されている。
といっても、この笛が有名になったのは5年ほど前のことだ。それまでは、私がいつも肌身離さず持ち歩き笛の練習をしていたのだ。
「ところで横笛のつくも神さんはどうしてここにいるのですか」
「そりゃあれだ、つまり、俺様もこいつのせいで、隕石の衝突に巻き込まれたからだよ」
「ああ、なるほど、確かに、じゃあ、つくも神さんも死んだ……ん、神様って死ぬのかなあ」
「ああ、神も死ぬな。というか消滅か。でも、消滅はしていない」
「じゃあ、どうなっているんですか」
「神が消滅するのは、人々の意識から忘れ去られた時だ。しかし、おまえ達一家が代々に渡って俺様を大切にしていてくれたので、結構な神力が蓄積されていたのさ。さらに俺様は、ここ5年ほど結構有名な横笛だったからな、人々の関心が集まりますます神力がアップしていた。だからだ、俺様はおまえの魂というか記憶情報だな、それが失われる前に神装結界で保護することができたのだ」
「そして、わしがおぬしの記憶情報とつくも神をいっしょにこの高次元空間に転移させたんじゃよ」
「記憶情報だけの転移ですか。なら、元の私の体はもうないんですね」
「そうだ、私の家はどうなりましたか」
「わしの高次元結界で隕石ごと熱も停止させたから無事じゃよ」
(よかった。家族はきっと無事だ)
「すまんのう。それでだ、つくも神よ、先ほどの話しに戻るがのう……」
私が線香花火みたいだと思っていたのは、神様達の会話だった。そして、そこで話し合われていたことは、ようは、「神様責任取ってくれるよね」だった。
「さあ、俺様の要求は、こいつといっしょに異世界に行くことだ。そして、こいつには、こいつが望む姿と能力を授けてもらうぞ。これは決定だ」
「ああ、わかったわかったわい。よいじゃろう。丁度わしが管理する世界に、地球とそっくりな環境の星がある。その星の住人も、神との繋がりを求めている。そこに転生させてやろう」
「ん、俺様はこいつ以外には関心が無いぞ。人助けなんてしないぞ」
「よいぞ、好きなようにすればよい。では、人間よ、おぬしの望みを聞こうか……」
「……望みねー。ちなみにつくも神さんはどんな要望をしたんですか」
「俺様は、今より一段階上の神力をもらったぞ。これから行く世界にどんな強敵がいるか分からないからな。おまえを守れる力は必要だ。それに、今のその体なら、俺様が許可すれば、おまえもこの力が使えるぞ」
「……それって神力だよね。なら、それで十分なんじゃ……」
「だめに決まっているだろう。いつも俺様が側にいられるわけではないからな、自分でも身を守れる力は必要だぞ」
「なるほど、確かに。今回みたいにいきなり災難が降ってくるかもしれないよな。分かった、真剣に考えるよ」
「本当におまえは興味のあることにしか関心がないな。しかし、神である俺様が断言するぞ。おまえはもっとその才能を活かすべきだ」
「えー、やだよ面倒なことは……。おれは基礎研究がしたいんだよ」
「まあいい、これから時間は無限にあると言っても過言ではない。ゆっくり考えろ」
「またまた大げさな…… さて、どんな力にすればいいのかなー」
神力が使えるんだ、なら力に関してはこれ以上は必要ない。自分の身を守る事だけでいい。
いろいろ悩んだ結果、3つの力を授けてもらった。
1つ目は、『真色眼』だ。これは、相手が敵か味方かを色で判断できる能力だ。
2つ目は、『瞬間自動神装結界』だ。これは、魔法の結界ではなく、神力の結界だ。
3つ目は、『多言語翻訳君』だ。これは、異世界言語を瞬時に今までの生活で使っていた言葉のイメージで聞こえたり相手に伝えたりできる便利な力だ。
例えば、その世界に銀行のような機関があれば、私には『銀行』という言葉で聞こえることになる。
「さて、おぬし達の望みは叶えたぞ。生態系は地球に似ているから、多分住みやすい環境だとは思うが、まあ、好みは人それぞれじゃからのー」
「後は、体じゃが何か希望はあるか。どんな姿にもできるぞ。龍にでもなるか」
「それは遠慮します。このままでいいです。見慣れた今のこの姿がいいです」
「今のままの体でいいのじゃな。あい分かった。だだ、その服は次の世界では合わないのう。どれ、服はわしから特別にプレゼントしてやろう」
「いいんですか。ありがとうございます」
「さて、では行くがいい。そして、新しい人生をその星で楽しみなさい」
こうして、私は、自分が中学生の頃の姿のままでいることをすっかり忘れたまま、俺様つくも神といっしょに異世界へ飛ばされたのだった。
「うーん、重い。ネミ、顔からどいてくれないかな」
「何を寝ぼけている。さっさと起きろ。食われたいのか」
あれ、ここはどこだ。
おれの家ではないな。
森の中か。
さっきの声は誰だ。聞き覚えがあるぞ。
周りを見ようするが、顔が動かない。
よく見ると、ネコ科の動物に生えている牙によく似た白い尖ったものが4本、頭と顎の前で止まっていた。目の前で舌がうねうね動いている。
「まさかねー。夢の中に神様出てくるし、仕事のしすぎだな。少し休むか」
「ねこパンチ きつめ」
声と共に白い牙が顔から離れ、30メートルほど手前に、まだら模様の大きな塊が吹っ飛んでいった。
「……」
何今の。大きな猫みたいだったけど……。
「しっかりしろ、周りは魔物だらけだ。いくら結界があってもきりがないぞ」
猫がしゃべっていた。
ブン
1メートルぐらいの白い紐のようなものが5本、上から降ってきて、頭の上でピタリと止まった。まるで、そこに見えない壁があるようだ。
紐が降ってきた方を見上げると、熊によく似た動物がいた。大きい、マイクロバスぐらいありそうだ。なんだこいつは……。
「死にたいのか、ここは異世界だ!」
猫が叫ぶ、そして「異世界」の言葉で、私の意識がつながった。
次話投稿は明日の7時10分です




