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Episode.16 告白

現世パート

後書きに人物紹介を入れてます。


書いてて思いますが、本当に話を創作するのは難しい……

【日時】西暦2019年7月11日 6時00分

    X DAY当日

【場所】埼玉県某所 住宅街



 真夏の早朝。


 蝉が鳴き始めるには早く、住宅街は静寂に包まれていた。

 陽はまだ熱を帯びず、柔らかな風が辺りを吹き抜ける。


 人影もほとんどなく、通りには一人の男性が歩いている。

 通勤中なのか、彼は黙々と歩き続けていた。

 だが、突如として足を止める。


「……ん?なんだ、あれは?」



 ────────────



【時刻】6時45分

【場所】埼玉県某警察署



袴田(はかまだ)!止まるな、歩け!!」

「朝からうるせえな……」

「口答えするな!」

「取り調べは受けてやるがよ……時間だけ変えてくれねえか?」


 袴田と呼ばれた男の態度は、実に太々しいものだった。

 連行する若い刑事は、その態度に激昂する。


「貴様に騙され、涙を流している家族がどれほどいると思ってる……!」

「後藤!!」


 若い刑事に対し、年配の刑事が怒鳴る。


「冷静になれ!無駄口はいい、さっさと歩け」

「……はい」

「お〜、鬼の矢崎は迫力が違いますなあ!」

「……お前ももう口を閉じろ!」

「はいはい……」


 三人は留置場から受付を抜け、階段に差し掛かる。

 階段を上がると、左手側に取調室がある。


「鍵持ってくるから、ここで待ってろ」

「はい」


 矢崎の帰りを待つ間、少し先にある給湯室から話し声が聞こえてきた。


「──そう言えば、裏山前の交番に、さっき妙なものが届いたらしいぞ」

「妙なもの?」

「見た感じ、小さい宝石みたいなんだけども、ほんのり紫色に光ってて、ちょっと熱いらしい」

「なんだそれ」


 片方の男は信じていないようだった。


「ちょ……ホントなんだって!」

「お前が見たのか?」

「いや、そこにいる同期が見たんだけどさ」

「じゃ嘘だな」

「違うって!」

「お前ら!こんなところで喋ってねえで調書をまとめろ!」

「「はい!!」」


 鍵を持って戻ってきた矢崎が、二人の刑事に怒鳴る。


「迫力すげえな……」

「あぁ……あっ──!」


 後藤は思わず袴田の話に同意してしまい、慌てて顔を逸らす。


「すまん!待たせたな。それじゃ、始めるぞ」



 ────────────



【時刻】7時00分

【場所】陸斗たちの通学路



 三人は朝の支度を済ませ、学校へと向かっている。

 その風景は、いつもと何も変わらなかった。


 ゴミ出しをしている近所のおばちゃんに挨拶をされ、 犬の散歩をしているお姉さんとすれ違い、 公園ではお爺さんたちがゲートボールをしている。


 街は眠気がするほど平和だった。 まるで昨日の話がお伽噺だったかのように。


 唯一違っていたのは、三人の会話が少ないことだった。


「……なんだか、何も変わらないね……」

「そうだな……昨日の話が、嘘か本当か分からなくなる」

「いや……昨日の話は間違いなく本当だよ」

「兄貴が言うと真実味がすごいな」

「お父さんたち、今日も裏山に行ってたね……」


 三人の会話が止まる。

 その後、学校に着くまでの道のりで、三人とも口を開くことはなかった。


 正門前に着くと、海斗が足を止める。 陸斗とそらも、それに続いた。


「とにかく、気をつけるんだ」


 海斗の言葉に、二人とも深く頷く。


「お、三人ともおはよーう」


 後ろを振り返ると、浩之が両手を振っている。

 その後ろには昨日の面々がいた。


「ゆの!なんで先輩たちと一緒にいるの?」

「たまたま……ね」


 どことなく、全員の顔が暗い。


「それにしてもひろのくせに来るの早いな!?この時間、まだ剣道部の朝練しかやってないのに」

「くせにってなんだ!でもまあ……なんだか朝から目が覚めちってよ」

「……ねえ、昨日の石はみんな持ってきてる?」


 綾乃が全員に問いかける。

 陸斗が取り出して見せる。

 それに倣い、全員が石を取り出した。


「いいなぁ……私もそれ欲しかった」

「そーちゃんはもっといいチョーカーもらってるでしょ。似合ってるよそれ!」

「でも私だけ仲間はずれみたい……」


 そらの子供じみた態度に、うたがフォローを入れる。


「やっぱり……昨日の話は夢でもなんでもなかったんだ」


 そんなやりとりをよそに、ゆのは確認をするように呟いた。


「そうだね……」


 小さく同調した陸斗を、ゆのが見つめる。

 その視線に気付き、陸斗が振り向く。


「……ん?どうしたの?」

「陸斗先輩、お昼に二人でお話よろしいですか?」

「ゆ…ゆの──」

「そら!!親友としてお願いするけど、邪魔しないで!」

「う…うん……」


 いち早くゆのの行動の真意に気づいたそらだったが、 ゆのの迫力に押し負ける。


「陸斗先輩。お願いします!」

「……わかった」

「ありがとうございます。それじゃあ私は先に行きますね!」


 ゆのが校舎に入る背中を、そらと綾乃は複雑そうに見つめていた。


「……かいくん、りっくん、時間大丈夫?」

「あ!」

「まずい!陸、急ごう!」

「じゃまたあとでねー!」


 二人が慌てて向かう姿を、四人は微笑ましく見つめる。


「じゃあ我々も行きますか」


 彼らは地球の終末が間も無く訪れることを知っていて尚、 いつもと変わらない一日を過ごした。


 学校を休んでいた生徒や教師たちも、昨日よりは来ている。 それが日本の学校教育というものの影響かは分からない。


 だが彼らは残り少ない時間を、 友達や恋人と過ごすことに決めたのだ。

 そして、自らの人生に悔いを残さないよう、 今までずっと言えずにいた思いを打ち明けようとする者もいた。


「陸斗先輩」


 昼休み、約束通りゆのが、陸斗たちの教室に入ってきて、彼を呼び出す。


「ゆのちゃん」

「一緒に来てもらえますか?」

「……行こうか」


 二人は何も喋らずに屋上まで向かう。

 屋上に到着し、向き合う二人。


 一瞬の静寂。


 風が吹き、ゆのの髪を撫でる。

 ゆのは、髪を耳にかける。


「私はまだ小さかった頃、そらと二人で遊んでたら、先輩が混じってきましたね」

「よく一緒に遊んだね。懐かしいなぁ」


 思い出を振り返り、微笑む陸斗。


「私たちがやっていた遊びはおままごととかなのに、お客さん役で割り込んできたりして……」

「あー!ハハっ!それ懐かしい!人形使ってよくふざけてたね」

「そういえば先輩が壊した人形のことについては、いまだに恨んでますからね!」


 ゆのは怒ったようにそっぽを向く。


「あれは、ご…ごめんね!」

「なんて、冗談です」


 ゆのは陸斗に満面の笑みを見せた。

 陽の光も相まって、その笑顔はまるで天使のようだった。


「ねぇ先輩、私が迷子になって先輩が助けてくれたときのこと覚えてますか?」

「覚えてる」

「あの時に先輩が言ってくれた言葉──」

「え?」

「あの時から私にとって先輩は、優しい友達のお兄ちゃんから“大好きな人”に変わってました」


 ゆのは涙を流す。

 こぼれる雫に光が反射し、キラキラと輝いた。


「届かない事はわかっているんです。先輩に私じゃない好きな人がいることも……」


 ゆのは悔しそうに口を結ぶ。


「正直、どうせ叶わないなら、この気持ちは伝えないでおこうって思ってました。

 でも、もう今日にも死んでしまうかもしれない……そう思ったら溢れるこの気持ちを抑え切ることができなくて!」


 ゆのは胸をギュッと抑える。


「叶わなくてもいい!でもどうしようもなく先輩を好きになってしまった!こんなに愛しいと思ってしまった!もうこれ以上隠せないんです」


 ゆのはしゃくりあげながらも、強く訴える。


「陸斗先輩……大好きです!愛しています!!……私と──」


 ゆのは顔を上げ陸斗を見る。

 陸斗は辛そうな表情をしていた。


「……ふふ。私が言うのもなんですが、なんて顔してるんですか」

「え!?」

「一生懸命告白してる女の子が目の前にいるのに、他の人の事考えるなんて酷いですよ?」

「そ…そんなこと!!」


 涙に濡れぐちゃぐちゃになった顔で、彼女は無理矢理笑顔を作った。


「ゆのちゃん……俺──」

「もう!……いいです。気持ちを伝えられて満足しましたから」


 陸斗に背中を向ける。


「……あ!でも一つだけ先輩にアドバイスしておいてもいいですか?」

「な…なに?」

「えーと……とりあえず今の顔見られたくないんで目瞑っといてもらってもいいですか?」

「お…おう」


 目を瞑る陸斗。

 陸斗に近づくゆの。


(綾乃先輩……そら……ごめんなさい)


 そのまま唇を重ねる。


 驚きのあまり、目を開けそうになる陸斗。

 その陸斗の目を手で覆い隠す。


 しばらくして、唇を離し目を覆ったまま至近距離で呟く。


「二人だけの秘密……だからね──」


 手を離す。


 目を開けようとする陸斗。


「ま…まだ!……開けないでください!」


(どんな顔すればいいかも分からないし……)


 ゆのの顔は、真っ赤に染まっている。


「先輩は先輩の気持ちに正直でいてください。じゃないと綾乃先輩を誰かに取られちゃいますよ?」

「ゆのちゃん……」

「あ!私の事は気にしなくていいですからね!さっきのキスも私のわがままですし」


 そう言いながら、音を立てないように恐る恐る後退る。


「できれば忘れてください!それじゃあ……また」


 言い合えると、見納めるかのように陸斗を見つめる。

 その目からは涙がとめどなく溢れていた。


 そのまま踵を返し、走り去る。

 辺りに響いたゆのの足音が止むと、陸斗はそっと目を開ける。


「忘れる事は……できないだろ」


 陸斗は、頬に垂れたゆのの涙を、そっと拭い見つめる。


「俺も覚悟を決めなきゃな」


 そして、徐に走り始めた。

 陸斗が走り去る様子を屋上の影から見つめるゆの。


「あぁ……いっちゃった。私のファーストキスだったんだけどなぁ……ふふ」


 自然と涙がこぼれる。


「ちょっと悔しいなぁ。なんだか情けないですね、私」

「そんなことないだろ。かっこよかったよ」


 そう答えたのは、浩之だった。


「先輩……」

「こういう時はな、無理して笑わなくていいんだよ!俺がいてやるから、好きなだけ泣けばいい」


 その言葉に少し驚くゆの。


「ふふ……何キャラですか、それ」

「ん〜……イケメン……キャラ?」

「あはは!でも確かに少しかっこいいです。そしたら……ちょっとだけ甘えちゃおうかな」

「おう」


 少しの間の後、ゆのの叫びにも似た泣き声が、屋上に響き渡った。



 ────────────



「綾乃先輩!!」


 陸斗が息を切らしながら、綾乃のクラスのドアを勢いよく開ける。 教室にいた生徒たちが、一斉に驚いた目で彼を見つめる。


 その中に、綾乃の姿はなかった。


「……いない」

「あ……綾乃なら、さっき校門前の桜の木のところで見かけたよ」

「ほんとですか!?ありがとうございます!!」


 礼を言い、陸斗はすぐさま走り出す。



 ────────────



【場所】校門前



 桜の木の下で、綾乃は陽光に透かして〈原初の結晶(マテリアル・キューブ)〉を見つめていた。



 ──りっくんのこと、どう思ってるんですか?──



 ふと、昨日のうたとの会話を思い出す。


「……急にそんなこと言われても、ね……どう……思ってんのかな、私は……」

「綾乃先輩!!」

「ひゃ!?」


 思わず飛び上がるほど驚いた綾乃が振り向くと、そこには息を切らした陸斗が立っていた。


「りり陸斗くん!?」


 タイミングよく陸斗が現れたことで、必要以上に胸が高鳴り動揺する。

 そんな綾乃を陸斗は息を整えながら少し訝しむ視線を送る。


「そんなに息切らしてどうしたの?」


 冷静を装い、陸斗へ問いかける。


「はぁ……はぁ……地球が終わっちゃう前に、どうしても先輩に伝えたくて!」

「な……なに?」


 綾乃は先ほどまで陸斗のことを思い浮かべていたせいもあり、妙に緊張しており、ごくりと唾を飲み込む。


「俺、先輩のことが好きです!付き合ってください!!」


 頭を下げ、手を突き出す。 その告白はあまりにも混じり気がなく、まっすぐだった。


 あまりに唐突な告白に、綾乃の思考は一瞬で停止する。

 何も反応がないことに気づき、陸斗は顔を上げる。


「……先輩?」

「あ……あの……えっと──」


 ドゴォン!


 突如、地響きのような激しい衝撃が襲い、二人はその場に立っていられなくなった。


「地震!?……なんでこんな時に!」


 口では強がるが、止まらぬ揺れに心臓が爆発しそうなほど跳ね上がっていた。


「り……陸斗くん!」


 綾乃が恐怖に震えながら、陸斗の手を掴む。その手を、陸斗は強く握り返す。

 しばらくして、揺れがようやく収まり始めた。


「なんだったんだ……」

「ね…ねえ……あれ……」


 綾乃が校門の方を指差す。 そこには一匹の黒猫が、じっとこちらを見つめていた。


「あれって……」

「のん……?なんでここに──」


 陸斗が違和感に気づき、目を見開く。


「二股……!?ど…どうなってんだよそれ!」


『急げ。時が迫っておる!』


「……は?え……い…今」

「喋った……ねえ」


 二人とも顔が青ざめる。


『そんなこと言ってる場合ではないのぅ。急がないとこのまま世界が終わってしまうぞ』


「ど……どういうことなのかしら……」

「急げって言ったって、どこに急げばいいんだよ!」

「陸ーっ!!」


 校舎の向こうから海斗の声が響いた。


「よかった……ここにいた」


 息を切らしながら駆け寄る海斗。


「お…おい兄貴!聞いてくれ! のんが二股になってて、しかも喋ってんだ!!」

「何言ってんの……?そんなことより、そらがいないんだ! 今、うたとゆのちゃんと浩之で探し回ってる!」

「え!?」

「多分校舎にはいない……」

「かいくん!!りっくん、綾乃先輩!」


 うた達三人が駆け寄ってきた。


「り……陸斗先輩……」

「ゆのちゃん……」


 気まずい空気が、わずかに流れる。

 浩之がその間に立ち、口を開く。


「校舎にそらちゃんはいなかった。ってことは……」

「家か、あそこか……」


 陸斗の呟きに、全員が同時に反応する。


「急ごう!!」


 全員が駆け出す。


「……大丈夫か?」

「はい……大丈夫です」


 浩之の声に、ゆのは小さく頷いた。


「おい、あれ……」


 駅前に近づいた頃、異様な光景が目に飛び込む。


「いるとは思ってたけど……すごい人数だね」


 老婆とその信者たちが、昨日よりさらに増えていた。

 デモのような叫び声。 警察の鎮圧。暴動に近い騒ぎ。


「狂ってる……」

「僕たちができることは他にある……行こう!」


 海斗の言葉に、全員が足を止めずに通り過ぎた。

 最寄駅に着いたところで、海斗が提案する。


「ここで三手に分かれよう。僕とうたは家に行ってみる。浩之とゆのちゃんは街中を探してみて欲しい。 陸と綾乃先輩は……裏山へ」

「わかった!」

「……二人には、例の役割もお願いしたい」

「任せろ!」


 陸斗が強く頷く。


「それと全員、いよいよとなったら……“あれ”を」


 誰もが静かに頷いた。


「いよいよなんだね……」

「大丈夫!僕の父さんは嘘をつかない。信じて」

「うん……」


 うたの不安を、海斗が支えるように包み込む。


「気をつけろよ!」

「お前もな」


 浩之と陸斗が拳を軽く合わせる。


「じゃあ、また後でな!ゆのちゃん、行こう」

「はい!」

「俺たちも行こう」


 それぞれの使命を胸に、三手に分かれて駆け出した。


 陸斗たち四人は、駅から家に向かう途中にある三差路の交差点に差し掛かる。


「それじゃ、ここで分かれよう」

「おう!」

「陸……死ぬなよ」

「兄貴こそ」


 それぞれの道へと、力強く走り出していく。


 ──ゆのと浩之は、警察署の前を通り過ぎる。


「地割れが起きたことで脱走者が出てると言ってるだろ!もっと応援をよこせ!!」


 警官がトランシーバー越しに怒鳴っていた。


『脱走したのは誰だ?』


「袴田だ!今朝、裏山前の交番から送られた光る宝石を飲み込んで、裏山方面に逃走した!!」

「……え!?」


 ゆのの顔が固まる。


「袴田って──」

「光る宝石ってまさか……陸斗たちが危ない! 」


 二人は向きを変え、走り出した。


 ──その頃。


 海斗たちは家に到着していた。

 だが、家の前で硬直している。


『何してるの!?急いでよ海斗!!』


「ど…どうなってるの……」

「じゅらが喋ってる……」

「これは、夢……?」

「そういえば、さっき陸斗も──」


『も〜!そんなことはどうでもいいの!』


「そ…そうだね!とにかく急がなきゃ!!」

「え!?かいくん適応能力高いね……」


 ──そして裏山。


 入り口には、そらの自転車がぽつんと停められていた。


「やっぱり……」

「陸斗くん!」

「はい!」


 陸斗と綾乃は、奥へ奥へと足を進める。


 やがて、木々の合間に、土を掘り続けるそらの姿が見えた。

 必死にスコップを動かしながら、地面を掘り返している。


「そら!!」

「り…りくにぃ!掘っても掘っても見つからないよ!!」


 涙で滲んだ目を向けるそら。


「心配かけさせやがって……一緒に探すぞ!」

「私も手伝うわ」


 綾乃が静かに加わる。


「綾乃先輩……」


 三人は無言で土を掘り始める。時折、石にスコップが弾かれ、汗が飛び散る。


「お?何してんの、きみたち?」

「!?」


 唐突にかけられた声に、三人が一斉に振り返る。

 そこには手に枷をはめた作業服姿の男が立っていた。どこか胡散臭い笑みを浮かべている。


「おじさん……誰?」

「んー、普段この辺りで山の手入れをしてるんだけどさ」

「騙されないで!」


 綾乃が陸斗たちの前に出る。


「テレビで見たわ……詐欺グループのリーダー、袴田よ」

「!?」


 男は肩をすくめ、へらりと笑う。


「さすがにこれじゃ無理あるか……」


 手錠を見せびらかす。


「しかし……こんなガキにまで知ってもらえるとは、光栄だねえ。

 ただ本人を前に啖呵切っちまうとは……気付かなけりゃ、死なずに済んだものを。お前、頭悪いだろ」


 その時、陸斗のポケットでスマホが鳴る。


『陸斗か!?今そっちに袴田って犯罪者が向かってる!しかも、そいつ例のアレを飲み込んでる可能性が高い!』


「マジかよ……目の前にいるよ」


『!?すぐ行く!!』


 袴田がニヤリと笑いながら口を開く。


「なんだなんだあ?俺について秘密の会話ですかい?

 ところで、今探してたのって──」


 ドゴォン!!


 突如、大地が大きく揺れた。

 三人は思わず地面に手をついて踏ん張る。


「ちっ、なんなんだこの揺れは……!」


 頭上から、のんの声が聞こえた。


『もう手遅れか。“これ”は失敗じゃのう』


「何言ってんだよ?」


『上を見てみい』


 その声に促され、陸斗が空を見上げる。


 そこには──


 真昼の空を裂くように、ひときわ大きく光る流れ星のようなものが、ゆっくりと、しかし確実に地上へと接近していた。


「あれは……なに?」


『あれが世界を壊す……そうじゃのう。隕石……と言ったところかのう』


「え!?」


 陸斗が驚愕に目を見開いた。そのとき、空が割れるような音が辺りを包み込み──


 彼の世界は、真っ暗に染まった。

[ 人物紹介・現世 ]

〈 警察 〉

矢崎 茂:熟練刑事


後藤 勇矢:若手熱血刑事


〈 その他 〉

袴田 隆二:詐欺グループリーダー

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