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嘘は真実へ  作者: 文記佐輝
三章『嘘は矛に』
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二十二話『海音の苦悩』

塁 「沖縄と言えば!ビーチっしょ!!」

一同 「うぉ〜〜!!!」

 大きく盛り上がっている塁たちを見ながら、木陰でのんびりしていた俺は笑う。

彗憐 「いいね…塁くんの明るさ。」

海音 「ハァハァ…塁の海パン姿ぁ…!!」

静 「おいおい、いつもの発作が出てるぜ〜?」

美鈴 「まぁ、アイツ細マッチョでなかなかスタイルもいいし、目が離せないのも、分かるけどな〜」

 俺の隣りにいた三馬鹿と彗憐は、はしゃぐメンバーたちを見ながら笑い合っている。

千夏 「みんなも海に入ろ〜!」

優咲 「っ!!」

 俺は目を背け、なぜか火照ってきた顔にうちわで扇ぐ。

 静と美鈴は千夏に引っ張られるように連れてかれ、彗憐も彼女らについていった。

 木陰に残ったのは、俺と海音の二人だった。

 海音は水着の上にパーカーを着ており、肌を隠しているようだった。

海音 「それにしても…、アロハシャツ支給って、健次郎もなかなか浮かれてんな。」

 呆れたように笑いながら、俺の着ていたアロハを触っていた。

優咲 「ま、みんなと楽しみたいってのは、本当なんだろうな。」

海音 「そうだなぁ。アイツも、色々と苦労の絶えない野郎だからなぁ。」

 足を弄りながら、海音は海ではしゃぐ皆の姿を見つめていた。

 俺は少し悩んだ末、尋ねることにした。

優咲 「…海…嫌いなのか?」

海音 「え?」

 彼女は俺を見て、「どしたの?」と聞き返された。

 俺は正直に、気になっていることを話した。

優咲 「俺はてっきり、お前も静たちみたく、みんなとはしゃぐものだとばかり…」

海音 「……あぁ…そうね…」

 少し寂しげな表情で答えると、彼女は体勢を変え、体育座りのように丸くなった。

 足で足を弄りながら、彼女は小さくため息を吐いた。


海音 「…海はね、嫌いじゃなかったんだよ。昔は…」

優咲 「昔は…か。何かあったんだな。」

海音 「そ、何かあって……海が怖くなった。」

 少し、無理をしているような笑顔を俺に見せる。

 聞いてしまったことに罪悪感を感じながら、俺は何をしてやることもできなかった。

 そんな俺を見てか、彼女は俺の手を取った。

海音 「…話、聞いてくれる?」

優咲 「…海音が、辛くなければ…俺でよければ聴くよ。」

 彼女は微笑むと、ギュッと、俺の手を握った。


ー…【視点:鐘川海音】

 いつからだろう。

 いつから、ボクはこんなにも弱い人間になったのだろう。

 そんなのはとうの前に理解していた。答えは…昔から、だ。

 ボクは誰かに知っておいてほしかったのかもしれない。自分でも理解はできない。

 それでも、彼には、彼になら話してもいいと思った。

 静や美鈴、彗憐にすら話してこなかったこと。

 ボクは、その話を優咲にだけはなぜか話してもいいと感じてしまった。

海音 「…あれはね、二年ぐらい前かな。

ボクは静と美鈴とは関係なく、一人、一番親しかった子がいるの。

その子はね、とても明るい子で、静よりは大人しいけど、美鈴や彗憐よりは明るい子だったの。」

 忘れもしない、あの子のことを、ボクは思い返しながら彼に話す。

海音 「髪色は紫髪で、今のボクみたいな髪型。ウルフカットっていうんだけどね。

彼女はとても似合ってたなぁ〜。

中学生とは思えない、大人びた印象の子で、スタイルも抜群だったんだから。」

 彼は優しくボクを見てくれている。

 手を、しっかりと握り返してくれて。

 この事を思お出す度に鼓動が早まる。だけど、今は違う。

 とても安定して、リラックスできている。

 口が、いつもよりも軽く、息苦しさもない。

海音 「それでね、夏にその子と海に出かけたんだ。

めっちゃ楽しかったんだ〜。食べ歩きして、SNSで写真アップして。

やりたいことはぜ〜んぶ、やった。」

 そして、ボクはその場面を思い返し、少しだけ言葉が詰まる。

 いつもと同じように、喉がギュッと締まり、目元が熱くなる。

 「ハァッ…ハァッ…」次の言葉を出そうとしても、喉の詰まりのせいで、声がうまく出せない。

 まるで、あの時のことを思い出したくないと言わんばかりに、ボクの身体がそれを否定する。

海音 「それ…でね…。それ…で……ッ」

 今まで、あの日の事件から目を背けて生きてきた。

 だけど、いつかは向き合わなければいけない問題で、ボクは…

優咲 「大丈夫。」

海音 「…ッ…」

 気付けばボクは、彼の胸の中にいた。

海音 「……ゆう…さく?」

優咲 「……」

 黙ったまま、彼はボクの頭を撫でる。

 皆の姿が見えない。

優咲 「今は思う存分に泣け。みんなは、どっか行っちまったけど…俺はお前といるからな。」

海音 「……そっか……そ…か…」

 彼の優しい抱擁は、まるでボクのが抱えていた闇を、全て浄化してくれるようなそんな抱擁で…


 ボクは彼の胸のなかで、子供のように泣きじゃくった。


ー…【視点:凛月千夏】

塁 「そういや海音と優咲は?」

 海に浮かびながら、私に尋ねてきた。

 私は微笑み、「さぁ?」と返した。

 彼は納得した様子で、バタバタ泳ぎ始めた。


 私は海岸沿いの木の下を見つめ、少し複雑な気持ちになったが、今だけは邪魔を出来ないと思い、「やれやれ」と首を振るのだった。

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