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嘘は真実へ  作者: 文記佐輝
三章『嘘は矛に』
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十七話『旅行のはじめ』

約束の日になって、指定された夕咲北公園に早めに来て待っていた。

スマホをいじりながら、公園で遊ぶ子どもたちの声を聞く。

皆楽しそうに鬼ごっこをしていて、俺も小さい頃を思い出す。

と言っても、小学低学年の時から俺は孤立していたので、幼稚園での思い出しかない。

そんな事、今までは気にしていなかったが、こうして改めて思い出していると、少しだけ虚しさを覚える。

気持ちを落ち着かせたいと思った俺は、自販機まで歩き、缶コーヒーを買って飲んだ。

そこへ、見知った女子が自販機に来た。

彼女は俺には気づいていないようで、スポーツドリンクを購入して、一口飲んだ時に目が合った。

優咲「…久しぶりだな。恋歌。」

一応挨拶をしたが、彼女は驚いてむせてしまった。

恋愛「な、なんでこの公園に…?!」

彼女は恥ずかしそうに、ジャージのチャックを閉めた。


俺はこれから友人と旅行へ行くことを話した。

どうやら気になっているようで、話を聞いてくれていた。

優咲「…恋歌、もしかして夏休みやることない感じか?」

少し気になった俺は、何も考えずに聞いてしまった。

恋愛「……そんな事ないし。」

彼女は少し頬を膨らませ、ぶっきらぼうにそう言った。

俺はそんな彼女を見て、失礼なことを聞いてしまったのかとようやく気がついた。

だが、気がつくのが遅かったようで、彼女はスポーツドリンクをポーチに入れると、再びランニングを再開させようとした。

優咲「恋歌、本当に悪気はなかったんだ!」

恋愛「あっそ」

もう興味を失ってしまったようで、素っ気なくそう返事をした。

謝っても無駄だと思った俺は、彼女の手を取り、こっちを向かせた。

優咲「分かった!なら今度一緒に出かけよう!

それでも許してくれないと言うなら、俺、恋歌が許してくれるまで尽くすよ!」

恋愛「……本当?」

優咲「あぁ、恋歌のために何でもしてやるよ!」

恋愛「…言質は取ったからね。」

ニコッと微笑む彼女を見て、俺は安心した。

しかしこの時の、自身の軽率な発言が後の誤解への引き金になってしまうとは、思いもしていなかった。


恋歌と別れた後、俺は健次郎らと合流した。

すでにいたメンバーの中に、彗憐もいた。

健次郎「あと二人いるが、そいつらとは駅前での合流になるから〜。」

そう言うと、健次郎は何やら予定表らしきものを全員に配った。

健次郎「それは旅のしおりとでも思って使ってくれ。

その通り進めようとかは思ってないから、各々行きたい場所とかにチェックマークでもつけておけば、わかりやすくなると思う。」

意外にも用意周到な健次郎に、俺は少し感動した。

その後、駅に到着した俺たちは、そこで待っていた者たちと合流した。

優咲「お前たちも呼ばれてたんだな。」

塁「まぁな、オレ、健次郎と幼馴染だし。海音たちも健次郎とは仲がいいからな。」

駅での合流組にいた塁に話しかけた。

塁は海音と彗憐が話す姿を見ながら、彼は優しく微笑んでいた。

少しの間眺めた塁は、健次郎から貰ったしおりを開き、俺の方を再び見て、どこに行きたいかを尋ねてきた。

俺は塁が何を思っていたのかよく分からなかったが、いつもの塁とは少し雰囲気が違うように感じた。


ーーー…

優咲「…なんであんな金持ちが底辺学校何かにいるんだ?」

塁「…昔からアイツの家は謎なんだよなぁ、どこからともなく凄いのを出してきやがる。」

俺たちは、健次郎の親が所有しているらしい飛行機で、小野家が九州に所有する、滑走路付きの別荘に直接降りたのだ。

健次郎「お前らー、ここ広いから迷子になるなよぉ!」

健次郎は先頭で皆にそう注意をすると、皆すでに疲れていそうな声で返事を返した。

優咲「健次郎、今日はここで泊まるのか?」

健次郎「しおりにも書いてなかったか?

最初から沖縄にいかず、まずここで一泊、それから沖縄に行って三泊して帰るんだぜ。」

俺はしおりを見ながら、本当に書いてあることに驚いた。

健次郎「安心しろよ、洗濯機だって常設されてる。

女子は女子用に、男子は男子用にと四つぐらいあんだから。」

優咲「それは嬉しいね。」

健次郎と話している間に、海音が彗憐をおぶって入ってきた。

海音「てっきり、男子と女子とで洗濯機を共有するのかと思ってた。」

健次郎「んなわけねぇだろ、プライバシーにかかわるわ!」

「残念〜」と言いながら、海音は目の前に見えてきた大きな屋敷向かって行った。

健次郎はため息をつきながら、皆に到着したことを伝えた。

皆その立派な佇まいの屋敷を見ながら、「旅館だ!!」とテンションを取り戻りしていた。

ハイテンションで屋敷へ入って行くのを見届けながら、俺もまた、その立派な屋敷に心を躍らせていた。

屋敷には小野家の使用人が数人おり、皆正装でもてなしてくれた。

優咲「…もはや別次元ってことか…」

塁「財力だけで言えば、健次郎がいっちゃんだろうよ。」

俺と塁は、笑う事しかできなかった。


皆が荷物を部屋に置くと、健次郎に呼び出された。

健次郎「これから自由行動になるけど、午後七時までにはここに戻ってくるように頼むぞ。それと…」

健次郎は袋から何か取り出した。

健次郎「…これをどこでもいいから、付けといてくれ。」

取り出されたのは、小さなカプセルのような物だった。

皆が不思議そうにしていたが、そんな皆のことをよそに、健次郎は使用人に配るように指示を出した。

俺はそれを受け取ると、それが何かすぐに分かった。

皆はそれを身に着け始め、早い者はすぐに自由に行動をし始めていた。


呼び出された会場に残った俺は、健次郎に近づいた。

優咲「…これはやり過ぎじゃないか?」

健次郎「お、もう何か分かったのかお前ら。」

健次郎に近づいたいつものメンバーと彗憐、そして、千夏。

優咲「…千夏?」

俺はなぜ彼女がここに居るのかと疑問に思いながら、健次郎の説明を聞いた。

健次郎「確かに、普通はやり過ぎだって思うよな、発信機なんてさ。

だが、俺はこの旅行を計画してしまった以上、お前たちを五体満足で帰さなきゃいけない義務があるっつうわけよ。

そのためには、どんな危険なところへ行ったとしても、すぐに助けに行けるように付けてもらうことにしたんだ。」

健次郎はそう言うと、俺たちにだけ、位置情報の共有ができるアプリをダウンロードさせた。

俺たちはそれを見て、少し引いた。

健次郎「これでお前たちも共犯ということで。もしものときは頼むぜ。」

もしものことがないことを祈りながら、塁たちは外へと出かけていった。


「…」

「……」

俺と千夏は、旅館から出て少しした所にあったベンチに腰を下ろした。

妙な雰囲気の中、お互いに様子を伺っていた。

千夏は少し緊張した様子で、こちらを見てきた。

俺はそんな千夏を見返し、口を開くことにした。

優咲「なんでここにいるんだ、千夏?」

千夏「じ、実はね、この前会ってたタイミングでは、私もすでに誘われてたんだ。」

ここへ来ていた事に対しても驚いたが、千夏と健次郎にあの日以外に接点があったのかという驚きのほうが大きかった。

優咲「健次郎の連絡先を持ってたのか?」

どうしても気になった俺は、気持ちを落ち着かせながら尋ねた。

千夏「えぇと、私は持ってないんだけど、ちょうど一緒に居た静ちゃんに電話があってね。

それで、私もおまけみたいな感じで誘ってもらったんだ。」

千夏は運が良かったというに、軽く笑ってみせた。

その顔を見ながら、健次郎と直接やり取りをしていないことに、俺は少しだけ安心していた。


少ししてベンチから立ち上がると、千夏が一緒に観光することを提案してくれた。俺と千夏の提案を受け入れ、自由時間を楽しむことにするのだった。

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