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嘘は真実へ  作者: 文記佐輝
二章『嘘は盾に』
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十二話『ボクは悪いから』

ー…新星にいぼし彗憐すいれん

「彼女はまだ気づいていないのです。…もう隠す必要はないでしょう?」

「………」

ボクは偶然聞いてしまった。

白石さんが父にボクのことを話しているところを、ボクは階段の上から聞いていた。

白石「彼女は頑張っています。ですが、どれだけ頑張ってもあの人の代わりになんてなれないんですよ。」

父「…そんな事は分かっているよ。だけど、未だに信じたくなかったんだ…。

彼女が死んだということを…、僕はまだ受け入れたくなかったんだ…。」

父は辛そうにそう言い、一つの写真を見つめていた。

ボクのいる位置からはよく見えず、かろうじて二人の会話が聞こえる程度だった。

白石「…お辛いのは分かっています。ですが、もう受け入れるべきだ。

あなたは強い、あの人もあなたが壁を乗り越えることを、絶対に望んでおります。」

父「白石くんは、初めて会ったときから心強いことを言ってくれるよ。

そのおかげで僕らは上手くやってこれたんだ。

…そろそろ、打ち明けるべきだね。」

その言葉には覚悟があり、父は何らかの壁を乗り越えようと頑張っているのかもしれない。

そんな父の背中は、母がいた頃のように、もしくはそれ以上に大きなものへと感じられた。

そんな父が、ボクは好きだった。

そんな父だったから、ボクは今日まで生きてきた。

ボクは生きなきゃいけないんだ。

これ以上迷惑をかけないために、ボクは…


ーーー

「…大丈夫か…?」

彗憐「…ッ!」

顔を上げると、頭から血を流している健次郎くんがいた。

彗憐「なんで…?」

健次郎くんはフラフラと立ち上がると、金槌を持った男を睨みつけた。

男は少しだけ驚いていたが、すぐに金槌を振り上げた。

輩A「クソガキぃ!邪魔なんだよ!死ねよ!!」

そう言い、男は思い切り振り下ろした。

健次郎くんはそれを左腕で防ぎ、右で渾身のアッパーを繰り出した。

男はそれを避けることはできず、簡単に吹っ飛んでいった。

そいつの仲間たちは、次々に鈍器を手に取る。

そして、健次郎くんに襲いかかる。

しかしその鈍器が健次郎くんに届くことはなかった。

健次郎「どらぁ!!」ドンッ!!

輩A「はぁっ!!」バシュッ!!

十人ほどいた犯人は全員、たった二人の人物によって完全に制圧された。

輩A「ば、ばかな…!ただのガキに、…かはっ…」

二人の姿を見ながら、男は気を失った。

そして、傷だらけの健次郎くんに二人が近づいた。

優咲「健次郎!大丈夫か!?」

海音「血だらけじゃないか、ボクのタオルを使って!」

健次郎「俺は大丈夫…、だから、彗憐…を…」

そう言いながら、健次郎くんは力無く倒れた。

優咲「健次郎ー!」

黒和くんが健次郎くんを支え、丁寧に手当てを行う。

彗憐「……」

海音「…大丈夫?彗憐…」

ボクに手を差し出してくれたのは、小学生の頃、親友だった女の子だった。

彗憐「…ありがとう、海音…さん?」

海音「さん付けなんてやめてよ。ボクは彗憐のこと、今でも親友だと思ってるんだよ?」

海音は優しく笑うと、ボクのことを抱きしめてくれた。

海音「…無事でよかった。」

その言葉を聞いて、ボクはとても嬉しく思った。

彗憐「……助けてくれてありがとう…、海音ちゃん。」

こうして、ボクは無事に救出されるのだった。


ーーーそれから、3日後の月曜日。黒和くろわ優咲ゆうさく

塁「…で、どういう状況なんだ、それ?」

海音「ボクにもわからないよ…」

彗憐「……」

昼食の時間になり、いつものメンバーで集まったら、海音に張り付いて離れない彗憐がいた。

皆が何度か話しかけてみたが、俺と海音の言う事以外は何も聞かなかった。

塁「コイツ…、オレたちも探してやったのにこの差は何だよ!?」

彗憐「……貴方のこと見てないからノーカン…。」

塁「優咲、こいつ殴っていいか?」

優咲「やめろ、100対0でお前が悪くなるぞ。」

塁「くそぅ!なんて理不尽な世の中だ!」

悔し涙を流す塁を海音は静かによだれを垂らしていた。


俺はそれを見なかったことにして、改めて彗憐に聞いた。

優咲「どうしてそんなことになったんだ?」

彗憐は海音から離れ、俺の隣に移動してきた。

そして俺の腕にしがみついてきた。

千夏「……っ!?」

それを見た千夏が大口を開けて固まった。

そんな彼女を置いて、彗憐は事情を話してくれた。

彗憐「…実は、海音とは小学生の時の友達で、すごく仲が良かったんです。

でも、"あの事"があってから、今の今までずっと関わらないようになったんです。」

優咲「あの事?」

彗憐「はい…、正直よく覚えてはいないんですが…、あれが原因で僕たちの仲が悪くなってしまったことだけは分かってるんです。」

海音たちは追いかけっこを始めており、俺の腕から離れた彼女はそれを温かい目で眺めた。

彗憐「…仲が悪くなったのは、ボクが悪いんです。」

悲しそうな顔でそう言った。

千夏「…彗憐さんが、悪いの?」

彗憐「はい…。ボクが、あの時ボクがしっかりしていれば…。」

拳を握り、涙を流した。

彗憐「…ボクが…、海音に手を差し伸べていたら…。

今頃ボクも、…あの中に入っていたのに…。」

優咲「いったい、何があったんだ?」

千夏「…優咲、あんまりズケズケ聞くのは良くないよ。」

千夏にそう言われ、俺は彼女に申し訳なく思った。

優咲「悪い…。言いたくなければ、別にいいんだよ。」

彗憐は俺と千夏の目を見て、「ありがとう」と言った。

彼女ははしゃぐ海音たちを見ながら、嬉しそうにしていた。


ーーー放課後

ボクは静たちの誘いを断り、図書室へ来ていた。

ドアを開け、ボクは彼女を探した。

海音「…おっ」

彼女は音楽を聴きながら、本棚に返却された本を収めていた。

相変わらず真面目なその姿に、ボクは少し嬉しく思った。

そして、ボクは覚悟を決めて、彼女の肩をポンッと叩いた。

彗憐「わっ?!」

彼女は驚いたようにボクのことを見ると、イヤホンを耳から外した。

彗憐「…な、なんで…?」

海音「…一緒に帰りたいからさ、来ちゃったよ〜。」

ボクは彼女にそう笑いかけた。

彗憐は混乱しているようだったが、少し嬉しそうに、それを了承してくれた。

そして、彼女はやることを手早く済ませると、いつもよりも一時間ほど早く切り上げた。

ボクと彗憐は久しぶりに肩を並べ、夕日の下を歩いていく。

「……」

ボクらの間に、会話はなかった。

先に話を始めたのは、意外にも彗憐からだった。

「…明後日まで行ったら、夏休みで…だね。」

慣れない様子で、タメ口を使っている。

海音「そうだね~。夏休み、彗憐は何かするの?」

彗憐「ボクは特にやることないかな…。海音ちゃんは何かするの?」

海音「ボクも無いよ。」

彗憐「え!?」

何をそんなに驚いているんだろう。

海音「何?」

彗憐「…いや、意外だなと思って。

…昼一緒にいた友達と一緒にどこか行ったりしないの?」

海音「あぁ〜…、まぁ、あの子たちは忙しいからね〜。」

彗憐「そうなんだ…」


「……」

どこかぎこちない会話に、ボクは面白くなり、笑った。

彗憐は困ったようにボクのことを見た。

海音「ごめんごめん〜。」

彗憐「いきなり笑い出したから壊れちゃったのかと思った…。」

安心したように胸を撫で下ろしていた。

海音「いやさぁ、今日一緒に帰りたかったのはさ、なんで関わらなくなったのかを話したくてさ。」

彗憐「…それは。」

彗憐は困ったような顔をして、立ち止まった。

ボクも少し前で止まり、彼女のことを見た。

彗憐「…それは、ボクが悪いんです…。」

「……」

彼女は頭を下げた。

彗憐「…あの時、ボクに勇気があれば、海音の事を避けずに済んでいたんです…、なのに、ボクにはそれができなかった…。」

顔はしっかりとは見えなかったが、涙が地に落ちるのが見えた。

彗憐「…ボクが海音を避けて、海音に気を使わせてしまって…、本当にごめんなさい。」

ボクは頭をかき、彼女に近づく。

海音「顔を上げてよ、彗憐。ボクは別に怒ってるわけじゃないんだ。

ボクはただ、もしボクが君に嫌なことをして、嫌われていたのなら謝りたいと思っていたんだよ。」

ボクは目的をすべて伝え、彼女の涙をハンカチでふき取った。

海音「…ねぇ、あの時って、いつ?

ボクには自覚がないんだ。だから、教えて?彗憐…。」

その願いに、彼女は頷き、真実を話してくれた。


そして、それを聞いたボクは、心の内から怒りが湧いてくるのを感じた。

海音「……そっか〜、話してくれてありがとね。」

彗憐「…海音?」

海音「…大丈夫だよ〜。そんなことで、ボクが怒るわけないじゃない。

ボクは優しいから、しっかり話し合わないとだよね。」

そして、ボクは次の日の学校を休むのだった。

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