ナイツアンドマジック1
現実逃避しようと思って、ライトノベルを買って読んだ。その本がこの、ナイツアンドマジックである。以前アニメで少し見たことがあったが、そのせいでこの作品のことが気になっていたので、読んでみた。
主人公のエルは、好奇心旺盛な子供だと思う。自分は今まで大学生として生きてきたのだが、もしもエルのような学生だったらきっと、充実した大学生活を送れただろう。エルは幼い頃からメカに対する好奇心によって熱心に勉学に励んでおり、そのせいで学校で学ぶこともほとんど習得してしまっている。もし自分がこんな生徒だったら、大学でも楽々優秀な成績を出して生きられたに違いない。しかも、エルには双子の兄弟の友達がいる。キッドとアディだ。どちらも親近感の湧く性格の人物だ。キッドは活発で、アディは控えめでしっかり者である。アディは、エルに擦り寄ってはぬいぐるみのように抱いてくる。このシーンは微笑ましい。青春にこんな断片があったらきっと面白いだろう。他にも、双子兄弟の姉にもかわいがられてエルはぬいぐるみのような扱いを受ける。エルは甘えん坊ではないが、甘えん坊だったらこんな感じでかわいがられるのだろうか。
メカの戦闘については、大怪獣ベヘモスとの戦いが面白い。描写に関してはまだ言葉の使い方が荒い点があるような気がするが、読み進めていると描写によって、一層戦闘シーンが迫真的になる。ベヘモスがブレスで騎士たちを圧倒したり、その自らの必殺技で身体ごと浮き上がらせて、騎士たちの機体を叩き潰すシーンは衝撃的だった。とはいえ、このシーンも、アニメで見たことがあったから既視感のあるものだった。アニメではただ単に具体的なシーンしか描かれていないものの、本の中では怪獣との戦いが言葉によってわかりやすく解説されている。それを噛み砕きながら戦闘シーンを読むと、楽しんで読めて、現実逃避になった。
人物造形に関してなのだが、ひょっとしたら、どちらかといえば素朴な感じがするかもしれない。おそらく、特定の人物に対して熱狂的なファンができるような作品ではない。以前リゼロのアニメを見ていたのだが、この作品はとにかくキャラの性格が濃い。そのため、一つ一つのシーンがまるで劇のようなものになる。しかしナイツアンドマジックに出てくる人物の性格はそれほど濃いものではないため、人間劇に期待する人はどこか味気ないものを見いだすことになるだろう。ただこの作品で主眼となるのは、メカである。主人公は元メカオタクで、プラモデルを組み立てることを趣味としていた。これはおそらく、作者の投影なのではないか。それを思えば、この作品で期待するべきなのは、メカのイメージなのだろう。これからどんなメカが出てくるか楽しみである。