05お好み焼きを食べに通う
スローライフを楽しんだら、次はルティウスの番だとやたらと張り切り王都へ向かうぞと腕を振るう。
どこへだって?と聞くとバリバリの都市だ。そこは主な彼のライフワークの場所。王都なんて初めてだ。
「行ってもいいの?」
「王都は街の名前だ。誰でも入っていい」
「そりゃそうだけど。いいのかなかって」
「おれが許す」
ルティウスは得意げにうまい店があるから、そこに行こうと意気揚々とゲートを作る。その場でパッと行けるけどこの方が行った感があるだろ?と言われた。ふーむ、確かにと頷く。
「よし、決まりだな」
「美味しいのか、楽しみ」
「プロデュースしたところだ。B級グルメの店」
「お好み焼き?」
言い当ててみるとルティウスはおお、と声を上げた。
「よくわかったな?」
心底嬉しそうだ。
「B級グルメで思い浮かんだから」
「そうそう。こんな会話でいいんだよ」
またジーンとしていた。指摘すると照れくさそうに笑う。フィオナたちが王都に移動すると人が多いな、というのが第一の感想。
「人多いね」
「だよな。だから疲れるんだ。情報過多」
疲れ切った都落ちの顔をしている。彼が案内してくれたお店に行くと、お好み焼きのまんまの雰囲気がある。鉄板がずらりと並ぶのは、現代に来た感が強い。
内装にかなり拘ったみたいで、焼き方が丁寧に記されているボードが壁に掛けられている。
「え、わかりやすい!」
「だろ?絶対に妥協しなかったんだ」
胸を張る男子にウンウンと頷く。笑みを分厚く浮かべて、最初から最後まで教えてくれる。
「えっ、うそ、明太子!?」
「新メニューだ。だから来させたかったんだ!ふっふっふ」
フィオナはわくわくしてそれを頼む。店員がゲッという顔をした。なぜなのかと思っていると注意喚起を聞かされる。
見た目がアレなので、のちのちのクレームは受け付けませんから!と念押しされた。
「あー、はい。知ってます。その上で言ってます」
苦笑して頷く。
「本当に、でしょうか?」
「ええ。赤くてつぶつぶが集まってるものです。塩辛くてというものです」
「では、持ってきますが、返金も食べ物の残しも当店はお断りしております」
店員は再三口にして、何度もちらちらこちらを見ては不安そうに見ている。それを見つつ、ルティウスに声をかけた。
「明太子評判わっる」
「おれしか食べてない……」
「だよね」
お好み焼きの生地を持ってこられた。明太子は別に分けられている。隣の席の人がうわっと声を上げる。嫌なら見なきゃいいのに。
「ルティウス。あの声ミュートにして」
「ああ」
ルティウスも嫌だったらしく、ミュートにするどころか相手を睨みつけた。
「ひっ」
「え、あれ、ルティウスじゃ?」
「見たことあるよ」
「ルティウスの料理にケチつけたってこと?」
周りの人たちが、ルティウスに気付いて明太子を見て嫌な顔をした彼らを、非難し始める。それに耐えられなくなった彼らはお好み焼きを途中で食べるのをやめて、店から出ようとした。
けれど、食べ残しの代金を追加されて文句を言っていたが、彼の視線に慄いて追加で払うと走って出ていく。
「こんな感じで毎回毎回。まぁ今回は無理矢理明太子デーにした」
ルティウスはフィオナにだけ食べさせるだけに、明太子デーにしてくれたらしい。注文率的に来月にはなくなってそう。
「明太子デーの間通いたい」
「よし、よしよしっ。だろう?毎日通おう」
「あの明太子カップルって、あだ名つけられそうだね」
「上等だ」
ルティウスは何度も何度も強気に頷き、フィオナは通いたいとやはり望む。お金はルティウスがこの店のプロデュースなので永遠に無料なのだそう。だからこそ、通いたい放題らしい。
二人は毎日宣言通り通っていった。明太子デーの一ヶ月間。美味しくて味変も加えて色々と食べた。
あまりに食べるので周りも食べ始めて、食べず嫌いをしていた人たちが美味しいのではないかと噂にもなる。
「宣伝効果すごいね」
「おれが食べてもイマイチだったけど、二人いると相乗効果ありだな。いいデータが取れた」
フィオナは、ふふっと笑う。活動していけばいつか皆も食べたり味見したりとしてくれるのだ。良い証明になった。
「フィオナ、これを食べたらまた飛ぼう」
「うん。今度はちょっと距離行きたいね」
ちょっとずつ飛ぶ距離を増やしていっていた。フィオナが慣れればどこへでも行けるようになる。
「ルティウスはどこに行きたいの?」
転移で好きなところに行けるのに。首を傾げていると、彼はただ飛んでいたいんだと言う。飛んでいると地上の噂もなにもかも耳に入らないから、と述べる。
「じゃあ、誰の声もない場所まで行こうか」
「ああっ」
二人はお互いを見る。相手は、幸せはここにあると言いたげな顔つきをする。
「明太子だけ持ち帰りしよう」
ルティウスとフィオナはお店から出る時、明太子を手に持ち鳥を召喚する。鳥に乗り込み二人は空へ離着。ふわっと髪型が浮く。
「何度食べても美味しい」
「来月は何になるのかは知らないが、食べるやつも増えているから延長するかもな」
空を飛びながらも、軽い口調で話せるようになった。ちょっと慣れたかな。雲にかかる光りがよく見える。
「ルティウス、楽しい?」
初めて見た時は顔色もよくなかったのだが、今はなんとなくよくなったような気がする。
「最高に楽しい。人生で一番だ」
きっぱり言う。同じ気持ちだ。
「私も!」
風が声を運んでくれる。相手も同じように嬉しそうな顔を見せて、自分に笑いかける。もう孤独ではない。
栗から始まった出会いは、心からの存在を見つけてくれた。
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