第六話 精霊
「……ルイ先輩。今日の事、聞かないんですか?」
不意に開かれた口。あれから、ずっと口を開かなかったレン。そして、それはクリスも同様だった。ようやく発せられた言葉。だが、いつもの様な明るい口調ではない。何か思いつめているようなそんな感じがした。
「別に、レンが言いたくなければ僕は自分からは聞かない」
ルイはそう言って手拭いを頭に巻いた。
「ふい~」
心底気持ちよさそうな声を出すルイ。
「キュイ~」
無双亭の名物となっている温泉に浸かりながらルイとコロは呟いた。効用は、打ち身、捻挫、骨折、きり傷、保温効果による冷え性の防止、に効く……かも知れないと書いてある。まあ、そんな事はどうでもいい事なのだが。すっかり、糸目になったルイとコロ。コロも桶にお湯を張ってもらいプチ露天風呂を堪能中なのだ。そして、その横に何かを考えながらも湯船に浸かるレン。
「……」
そして一瞬後、何かを吹っ切った様にレンは口を開く。
「ルイ先輩、邪神記は知っていますよね」
「そりゃ、有名だからね」
「そうか……。少し長くなるけどいいっすか?」
その問い掛けにルイは首を縦に振った。
「信じる信じないは先輩に任せます。これを話せば信じてもらうのは難しいですから。まあ、信憑性を強める為です、まずはこれを見てください」
レンはゆっくりと右手を挙げ人差し指を立てた。刹那、指を中心に炎が纏わりついた。
「突発魔法って知ってます?」
問い掛けるレン。ルイは素直に首を横に振った。
「カオスワードの詠唱も無しに魔法を使う力。それが突発魔法っす。そして、それは精霊に魅入られた者か、精霊しか使う事が出来ないと言われてるっす」
レンはそう言って右手を強く握り拳を作った。煌々と燃える炎は、人差し指から拳全体に広がっている。
「あいつは、……リクは、氷の精霊なんですよ」
「え?」
一瞬言っている意味が判らず問い返してしまうルイ。
「そして、俺は炎の精霊です」
衝撃が走った。驚愕の表情を浮かべるルイ。
「信じられないっすか? でも、クリスの正体はもっと凄いですよ」
硬直するルイを一瞥して再び口を開く。
「大聖女、ハーネ・ライコス」
「そんな、嘘だろ」
だがレンは真剣な眼差しをしていた。嘘をついているようには見えない。
「まさか、そんな事あるはずが……」
「それができるんです。転生の儀と言う神術でね。転生の儀を受けたものは前世の記憶と共に生まれ変わる」
レンがそう言うと炎は弾け、そして消えた。
「そして、これから話す事は俺が持つ前世の記憶です」
レンはそう言って両眼を閉じた。そしてゆっくりと口を開く。
「今、伝えられている邪神記、あれは一部脚色されているんです。ハーネは自分の命と引き換えにレグナを倒したって事になってるけど、本当はレグナを倒したあの瞬間はまだ生きていたんです」
「じゃあ何で……」
「リクに殺されたんです。そして、俺も。今まで、ずっと信じてきた仲間が裏切ったんです。リクはカオス・ルークに転生させてもらう変わりに奴らに魂を売ったんだ」
力なく呟くレン。
「だけど、クリス……いや、ハーネは自分が死ぬ間際に自分と俺に転生の儀を行なったんです。リクが転生をする時代に合わせて。そして、俺とハーネは肉体を持った。ハーネは昔のままの姿で、俺はこの赤い髪と赤い眼を持って」
言葉が出なかった。自分もリクに殺されたが、まさか精霊を相手にしていたとは夢にも思わない事だった。
「そして、俺達がこの時代に生まれた理由。判りますね?」
「リクの転生か」
「そうです」
レンは静かに呟いた。
「はは、未練がましいでしょ。リクを追いかける為にわざわざ転生までして……でもね、本当に許せないんですよ」
力なく笑うレン。
「分かるよ、レン。忘れたのかい? 僕だってあいつに殺されたんだよ。今だってこうして不死人になってリクを探す旅にでている。僕だって未練たらたらなんだよ」
ルイは、にっこりと笑う。
「ルイ先輩。信じてくれるんですか?」
「まあね。僕は頭やわらかい方だから」
「ありがとうございます。ルイ先輩」
頭を下げるレン。
「礼なんていいさ。それよりちょっとだけ聞きたい事が幾つかあるんだけどいいかな」
「はい、なんすか?」
「まず一つ、偶然にしては僕達の出会いは出来すぎてないかな」
「まあ、そうでしょうね。俺等が仕組んだんだから」
「へ?」
硬直するルイ。
「仕組んだ? 何処で! 何を! どうやって!」
「お、落ち着いて。ルイ先輩!」
血相を変えるルイとそれをなだめるレン。
「宮廷魔術士になった時にお二人の事を聞いたんです。今も剣を探しているとね。同じ目的を持つんだったらもしかしたら手を貸してくれるんじゃないかと思ってね、だから仲間にしたんです」
確かにそれなら納得が行く。
「じゃあ次。レグナの眼とはなんだ」
「何故それを聞くんです?」
「簡単だよ。もし、キラベルの洞窟でレン達に逢っただけだというなら偶然で押し通す事ができる。でも、僕等はあそこでリクに逢った。つまりリクもレグナの眼を狙っているって事だ。まさかこのまま黙っているつもりじゃないだろう? 僕にこの話を切り出したんだ。もう僕は充分に聞く権利がある」
その言葉を発した途端レンの顔つきが変わった。
「……カオスアイテムかな?」
「カオスアイテム?」
「ええ、この世を滅ぼすかもしれないぐらいのね」
その言葉を聞いた瞬間、ルイの表情が変わる。
「ちょっと待ってくれ。そんなの一言も聞いてないよ」
「世間的にあまり流布されていない情報ですから」
「もし、リクに先を越された場合は?」
「最悪の場合、レグナの復活です」
レンは小さく呟いた。
「――また邪神記が」
「そうです」
「……」
「……」
無言になる二人。沈黙が辺りを占める。
「うん? ちょっと待って」
「はい?」
「何で、リクはこの時代を選んだんだ? 普通に考えてもっと早くに転生できるんじゃないか?」
問い掛けるルイ。
「それも、ちゃんとした理由があります。レグナはハーネに倒されて、その魔力を霧散させてしまったんです。だから、その魔力を蓄える時間が必要だったんです」
「それが、この時代だったんだね」
「はい」
レンの言葉にルイは頭を抱えた。
「だから、絶対に僕達はリクを倒さなくちゃいけない」
「そうか……」
再び二人の間に沈黙が訪れる。
だが、その沈黙は意外な形で終焉を迎えた。
「キュイ~……」
コロだ。すっかりのぼせたのか、コロが力なく鳴いた。
「おっと、そろそろ上りますか。これ以上浸かってるとのぼせそうっす」
コロを桶から救い上げるレン。その口調はいつもの口調に戻っていた。
「邪神記か……」
小さな声で本当に聞き取れないような小さな声で呟くルイ。
「どうしたんですか?」
脱衣所から聞こえるレンの声。
「ああ。なんでもない」
ルイはそう言って考えるのをやめた。
こうして、二人と一匹の長い入浴は幕を閉じたのだった。
◆ ◇ ◆
無双亭の食堂は相変わらず客が居ない。まあ、宿を利用するのは旅商人か冒険者ぐらいである。そのため、何日も滞在する固定客を対象としているのだ。だから、人が居ないのは当たり前といえば当たり前なのだ。
「お師匠様。さっき、レンからリクの話を聞きました」
ホコホコと体全体から湯気を出すルイとレン。それと、コロ。
「レンの秘密。クリスの秘密。そして、リクの秘密も」
「ええ、私も聞いて驚きました。転生の儀なかなか興味のある魔術です」
話の着目点が激しくずれているような気がするがそれは気にしないで置こう。
「二人を利用のは悪いと思ってる」
クリスが口を開く。
「でも、レグナを復活させる訳には行かないんだよ」
俯くクリス。だが、そんなクリスを見てルイは口を開いた。
「別に、利用されたなんて思ってないさ。僕の目的は変わってないからね」
「そうですよ。私達だって彼に恨みがあるんです。相方が殺された時点でもう私達の目的はリクに絞られてましたから」
エリアルはそう言って笑った。
「ありがと……」
クリスが口を開けたその時だった。
「うわっ!」
バランスを崩すルイ。
「何だ!」
紛れもない爆音が街を揺るがせた。
「ルイ!」
「はい!」
二人は即行で食堂から外に出る。その時間ですら煩わしいぐらい二人は焦っていた。
そして再び爆音。煙が出ている。キラベルの洞窟の方からだ。
「――――っ!」
何かを叫んだつもりだが実際には声になっていない。
「まさか」
考えられることは一つだ。モンスターの襲撃。
「どうやらこの街は、感傷に浸る事も許してくれないらしいですね」
「ルイ先輩!」
遅れて出て来たクリスとレン、そしてコロ。
「どうしたんですか? 一体何が」
「多分モンスターだ。クリス、レン。二人は街の人を非難させるんだ。お師匠様、僕達は――」
「わかってます。急ぎましょう」
『広大なる大地を駆ける緑風よ。絶えることの無い神風を今ここに!』
重なる詠唱、浮き上がる二人の身体。
「くそっ! 何だってこんな事に」
遠くの方に見える紅い光。轟音に包まれた街は、夜空を紅く染めていた。
ゲートの街が燃えている。煌々と照らす炎と、その火事の原因を作ったモンスター。
空中から見下ろす街はまるで地獄絵図だ。モンスターは、ケルベロスが二匹、コボルトが五匹。それとゴーレムが三体。街の人が対抗しているが、かなり押され気味だ。
「くそっ! やめろ!」
ルイは、剣を握り締め風の魔法を解いた。落ちる体。そしてそのままケルベロスに突き立てる。重力を利用したのだ。真ん中の首から縦二つに切裂かれたケルベロスは宝石に姿を変えた。
『広大なる大地を駆ける緑風よ。絶えることの無い神風を今ここに!』
凛としたエリアルの声。空中から放たれる真空の刃、コボルトの群れは一瞬で宝石に姿を変えた。所詮は狼である。
「うぉぉぉぉ!」
続くルイ横薙ぎ。蒼い閃光が二匹目のケルベロスを捕らえていた。同時に三本の首が落ちる。電光石火と言わんばかりの二人の連係攻撃。あっという間にモンスターはゴーレムのみとなった。
「さあ、強敵が残りましたね」
「そうだな」
ゆっくりと空から降りるレン。
ゴーレムは比較的、動きが緩慢だ。だが、その緩慢さには理由がある。巨大な身体に岩で出来た身体だ。並大抵の攻撃はほとんど弾く。そして、その巨体を生かした攻撃力。攻守共に優れているのだ。
「どうします?」
「どうしますって、やるしかないでしょ!」
「了解」
同時に飛ぶエリアルとルイ。ルイは上へ、エリアルは右へ。それぞれの分担を決めたのだ。
民家の屋根を蹴り空高く舞うルイ。
「広大なる大地を駆ける緑風よ。絶えることの無い神風よ。我は望む! 疾風の刃!」
剣に風の魔法を纏わせるルイ。蒼い刀身は緑色に変わった。
「砕け散れ!」
重力と共に振り下ろされるサイコソード。頭から一気にゴーレムを切裂いた。そして、後ろに飛ぶルイ。刹那、内側から真空の刃がゴーレムを刻んだ。まずは一匹。
「蒼い衣を纏いし者。すべてを蒼に染める水帝よ! 偉大なる汝の力を示せ! 我は願う! 蒼の槍竜!」
続くエリアルの詠唱。
詠唱が終わった瞬間、蒼い水の槍がゴーレム目掛け串刺しにする。そして、絶命。二匹目撃破。
「お師匠様!」
「ええ」
二人は再び地面を蹴った。今度は二人とも上空へと飛んでいる。
『金色の光に包まれし騎士よ。そなたの偉大なる光を刃に変えて敵を撃て!』
重なる叫び声。二人の手から放たれる閃光は螺旋を描きながらゴーレムに向かっていく。そして、膨れ上がる炎。凄まじい連係を見せる二人。炎に包まれたゴーレムは宝石に姿を変えていた。
「よっしゃ!」
落下しながらそれを見る。
着地すると同時に街の人たちが駆け寄ってきた。
「兄ちゃん達、強いな」
一瞬にして二人の周りには人盛りが出来ている。
「おかげで街の被害が最小限で済んだよ」
さっきは夢中で気がつかなかったが壊れているのはごく一部だった。
「この街には、聖術部隊はいないのですか? 仮にも経済力のある街ですよ」
聖術部隊とは、街の治安を守る為に発足された部隊の事である。
少なくともそこそこ腕の立つ魔術士がいてもおかしくないはずなのだ。
「それは無理だな。全員氷漬けにして殺した」
後方から響く声。聞き覚えのある声。沸きあがる憎悪。
「リク!」
「強いねぇ、お二人さん」
右手には長剣を左手には真紅の宝玉を持っている。
「限界突破に耐えたのか?」
驚愕するルイにリクは高らかに笑った。
「ああ、残念ながら、俺は人間じゃないんでね」
「くっ!」
「それに俺はこれを手にした。こんな所で死ねるか」
リクはそう言って左手の宝玉を見せた。
「レグナの眼だ。これさえあれば俺は無敵になれる」
そう言ってリクは右手を後ろに引いた。
「小僧! 確か一年前に見せてもらった貴様の魔法剣はこうだな」
ゆっくりと詠唱するリク。
「水の魔王、水獣よ。その呪われた水を我が剣に宿し、全ての者が絶命する力を我に与えよ!」
聞いた事の無い詠唱。多分、奴のオリジナルの魔法だろう。不気味な音が辺り全体を包む。刹那、リクの剣に水が纏わりついた。
「知ってるか? 水は鉄さえも斬る事ができる」
鋭くそして極限まで細い刃。時として水は鉄をも切裂く武器になるのだ。
「賢者……そんな馬鹿な」
驚愕するルイとエリアルに、リクは一言告げた。
「少し違うな。転生した俺は聖戦士だ。だがな、レグナの眼で闇属性も手に入れたのさ。つまり擬似的に賢者になったのさ! 行くぞ!」
刹那、目にも止まらぬ速さで移動するリク。真っ直ぐルイに向かってくる。とっさに剣を構えるルイ。
そして、剣は振り下ろされた。
「生憎、僕の剣の刀身は鉄じゃないんだよ」
「ほう、魔力で出来た剣か。面白い武器だな」
リクの太刀を受け止めたルイ。
カチャカチャと鍔のぶつかる音が響いた。激しい鍔迫り合いが続く。
「ふん、腕を上げたみたいだな。小僧。だが、まだ握りが甘いな」
凄まじい力が上空に向けて走った。剣を弾かれたのである。回転して地面に刺さるサイコソード。
「ルイ! 後ろに飛んで!」
上空から聞こえるエリアルの声。それと同時に後ろへ飛ぶルイ。
「暗澹を切り裂く閃光よ。紫電を纏いし鬼神よ。我は願う。裁きの雷!」
まるで雷の様に凄まじい音と共に一筋の光が落ちる。
「レグナの眼よ! 絶対障壁を我に!」
刹那、レグナの眼が怪しく光り、リクを包み込んだ。螺旋状に広がる無属性の魔力。ルイとは比べ物にならないほどの強力な魔力。そして、その魔力は、閃光をもかき消した。
「残念だったな。もう一年前の様には行かないんだよ。俺には、魔法は効かん」
ゆっくりと着地するエリアル。
「そろそろ、終わりにさせてもらう」
冷たく言い放つリク、その瞬間リクの姿は消えた。正確には眼で追えなかったのである。凄まじい速さで移動するリク。そして、
「死ね」
エリアルの目の前に現れたリクは躊躇う事無く剣を振り下ろした。
「させるか!」
いつの間にかサイコソードを拾ったのかルイがラルヴァの剣を受け止めた。
「お師匠様! 逃げて!」
「邪魔だ、小僧!」
エリアルに気をそらした瞬間を狙い、リクは剣を突き出した。
「ぐはっ!」
鮮血を吐くルイ。リクの攻撃はルイの胸部を捕らえていた。
「ルイ!」
エリアルの身代わりになったルイ、その胸からはラルヴァの剣が生えていた。
「ふはははは、一年前もそうだったな。あの時は殺し損ねた様だが今回は確実にしとめて……っな!」
一瞬後、引き抜かれるラルヴァの剣。ルイが自らの力で引き抜いたのだ。
「甘いんだよ!」
振り下ろされるルイのサイコソード。リクの身体を斬り付ける。
「形勢逆転だな」
薄っすらと笑うルイ。
「ぐっ! 何故だ。完全に心臓を突いたはずだ。何故死なない!」
「死ぬはず無いさ」
ルイはそう言ってバンダナを解いた。風に揺れる前髪。そして、露になる六芒星。
「僕は既に死んでいるんだから。だからどんな攻撃を受けても、痛いだけなんだよ」
ゆっくりとサイコソードを這わせるルイ。
そして、そのまま喉元に突きつけた。
「さあ、どう償ってもらおうか?」
不適に笑うルイ。
「それだけじゃないです。レグナ復活も諦めてもらいますよ」
いつの間にかリクの背後に周るエリアル。
「なにをする気だ」
「さあ、何でしょう」
にっこりと笑ったエリアルはリクの左肩に手を掲げた
「金色の光に包まれし騎士よ。そなたの偉大なる光を刃に変えて敵を撃て!」
一筋の閃光は一直線に走りリクの手を包み込んだ。膨らむ炎、そして爆発。左腕を爆発させたのだ。炭化したリクの腕。手先に残されたレグナの眼だけが無気味に光る。
「うがぁぁぁぁっ! き、貴様!」
突きつけられたサイコソードを払い、エリアルに飛び掛るリク。
だがそれも虚しくルイに阻まれてしまう。襟元を掴まれたのだ。
「邪魔だ!」
閃光が走る。リクを掴んでいたはずのルイの手はそこには存在していなかった。ラルヴァの剣で斬り落とされたのだ。それだけではない、突発魔法を使われたらしい。足と腹部には無数の氷の槍が突き刺さっていた。だが、ある程度の時間は稼げたらしい。そう、エリアルが詠唱を唱えるだけの時間は。
「ちっ!」
エリアルが魔法を放とうとした瞬間、勝ち目が無いと悟ったのだろうか。リクは、地面を蹴った。高く跳びエリアルを飛び越えた。
「今日は引いてやる。まだ俺は死ぬわけにはいかない。次だ。その時こそ殺してやる」
そう言い残しリクは跳んだ。
「待て――っ!」
追おうとするルイ、だが傷ついた足では追いつく事が出来ずすぐに見失ってしまった。
「大丈夫ですか? ルイ」
「ええ。何とか……。でも、ちょっと身体を酷使し過ぎたみたいです」
緊張の糸が切れたのか、地べたに座り込むルイ。光の魔力を解放して斬られた左腕をくっつける。
「駄目だ。……眠い」
ゆっくりと本能に身を任せていくルイ。
薄れ行く意識の中で最後の力を振り絞って口を開く。
「お師匠様。後はよろしく」
こうしてルイの意識は闇に呑みこまれた。まるで自分が死んだあの時のように……。




