寝る前に
「ローラさん、歯磨き終わりました~」
私は、洗面所から、台所で片づけをしているローラさんに声をかけた。
「そう。寝室に案内するわね~」
ローラさんが、洗面所まで来てくれた。
「娘の使っていたベッドだけれど、綺麗にしてあるから」
「あの、休む前に、アルビー先生にご挨拶したいのですが」
「あ、そうね。挨拶を気にするなんて、えらいわね」
「いえ、今日一日、大変お世話になっているので……」
ふふっ。
ローラさんは、笑って頷いた。
「あの人は、書庫にいるはずよ。本を探すと言っていたから」
ローラさんが、私を書庫に案内してくれた。
書庫は階下、家の地下にあった。
ちょっとカビっぽい、古い書物の匂いがする。
書棚は、本でいっぱいだ。
「あなた~、アイリーンちゃんが、おやすみの挨拶をしたいって~」
ローラさんが、大きな声でアルビー先生に声をかけた。
「分かった。奥ですまないが、ここから挨拶させてくれ」
「おやすみ~」
アルビー先生が、返事した。
「おやすみなさい~」
私も大きな声で、返事した。
「さぁ、行きましょう」
ローラさんについて、2階の寝室に行った。
小さなピンクの花が散りばめられた、クリーム色の生地の壁紙に、薄桃色の絨毯。
ベッドの布団は、淡くて明るいグリーン。
可愛い部屋だ。
「可愛い部屋ですね」
思わず、声に出していた。
「嬉しいわ。娘も、この部屋とても気に入っていたのよ」
ローラさんが、微笑みながら言った。
「じゃあ、おやすみ」
ローラさんは、そっとドアを閉めて、階下へ降りて行った。
台所の片付けの続きをするのだろう。
「さて、休もうかな」
私は、自分に声をかけて、ベッドに横になった。
(色々あったな……)
そう、色々あった。
早朝、初っ端から。
玄関が空にあって。
玄関から花畑に落ちて。
そこは異世界で。
アルビー先生に会って。
家まで連れてきてもらって。
アルビー先生も、ローラさんもいい人で……
良かった……
私は、気が付いたら眠りに落ちていた。