夕食
「えぇ、できたわよ」
ローラさんが、アルビー先生に返事した。
「アイリーンちゃん、シチューをよそってくれるかしら?」
「は~い」
私は、元気よく返事して、ローラさんが用意してくれた、大きめの木のお椀によそっていった。
ふわんっ。
シチューのいい匂いが、鼻をくすぐる。
(あぁ、早く食べたいっ)
私のお腹が、ぐぅ~っと鳴った。
「あらあら。お椀をテーブルに持って行ってくれるかしら?」
それに気が付いたローラさんが、ふふっと笑いながら言った。
「はい」
私は、赤面しながら、テーブルに持って行った。
アルビー先生は、席に着いて待っている。
ローラさんが、パンとミルクを持ってきてくれて、食事の用意がそろった。
「さぁ、いただきましょう」
皆、席に着いて、食事を始めた。
(やっと、家に帰る方法を聞ける!!)
「アルビー先生、家に帰る方法を教えてください」
私は、はやる気持ちを抑えながら、ゆっくりと、言葉に出して聞いた。
「ふむ。家に帰るためには、どういった魔法を使えばいいか、じゃな」
「わしは、転移魔法を応用できんかと、考えておる」
「転移魔法、ですか?魔法陣の……、」
「いや、魔法陣は使わん。花の妖精の力を借りるんじゃ」
「花の妖精、ですか?」
「うむ。魔法の一種、花魔法の力の源となる、妖精たちの事じゃ」
「どうやって、お力を借りればいいでしょうか?」
「ふむ。花の妖精達と仲良くなるしかあるまいな」
「花の妖精さんと、仲良く……」
「詳しくは、明日話そう。ほれ、シチューが冷めてしまうぞ」
「あっ……」
「おかわりもあるわよ。しっかり食べてね」
ローラさんが、言った。
(そうだよね。今、頭であれこれ考えても仕方ない)
(食べて、しっかり力をつけよう!)
「あらあら。そんなに慌てて食べなくても、シチューは逃げないわよ」
つい、夢中になって早食いしたら、ローラさんに笑われた。
「こほん。ゆっくり、噛んで食べなさい」
アルビー先生が、言った。
(なんだか、お父さんとお母さんに言われてるみたい……)
私は、どこの世界にいても相変わらずな自分に、苦笑した。
(明日から頑張るぞ。転移魔法を身につけなくちゃ)
決意を新たに、美味しいシチューをかみしめた。