何かを求めて
大きな海の中を、藻掻くように泳ぎ続けている。こんなことをして一体どれだけの月日が流れただろう。
時には気分転換をしてみる。まるで泳ぎ疲れてへとへとになっているとは思えないような振舞で見せかけの贅沢を満喫しているような錯覚に陥る。
ただそんな楽園に身を浸らせながらも頭の片隅にはあの壮大で恐ろしさすら感じさせる大海を思い浮かべている。ああ、この時間が過ぎればまた私は終わりの見えない道を泳ぎ続けていくことになるのだ。
何故、私はあの場所からもう何年も、何十年も離れることが出来ずに過ごしているのだろう。そんなことさえも最近は考えることが無くなっている。いや、考えるという選択肢を忘れつつあるという方が正確か。
どうやら潜り続けていたせいで、頭に酸素が回らなくなっているようだ。思考が姿をくらませ、反射と義務が私の体を動かし続けている、そんな毎日を不思議に思いながらもがき続けている。
ひたすらに水をかき分けていると口の中に海水が少し入り込んだ。私は海面に出ることも許されず。その塩水を飲み込んだ。そう塩が含まれている水だ、ただの水とは違いこの水はかなりの辛さを私の下に感じさせる。おかしなことに、海を泳いでいる最中よりもそのほんのわずかなものを体に取り入れた瞬間が、私に海という存在を強く与えている。
私は水を求めているのではなく、この水に差を与えているものに対し価値を持ちそれ故にもうかなりの時間をこの場所に割いていたのだ。こんな簡単なことに気付くのにもう三十年近くたってしまった。
だが、わからない。私が求めているものを抽出するために一体何が必要で、自分は何をすればいいのか未だに何もわかっていない。どこかでぼんやりと思い浮かべながら今日も私は深海を彷徨っている。




