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すべて叶えよう   作者: 夜
第一章 幼少編
32/34

アクセサリー屋side


※少し不快になる表現を含みますのでご注意ください




 1年前、僕は小さい頃からずっと夢に見ていたアクセサリー職人に、やっとなることができた。




 そして約半年前、待ちに待った初販売の日。

 僕はたくさんお店が並んでいるところの端に店を出せることになった。

 端のほうとはいえ、人通りは多い。


 だから僕の自信作を売りに出した。


 絶対に売れると思った。


 なのに、、

 


 「なんだ?このガラクタ。ダッサ」

 「うわー、こりゃ売れねぇよ」

 


 5人組くらいのガラの悪そうな輩にからまれ、自信作を馬鹿にされた。



 それがすごくショックで恥ずかしかった。



 そのうちの1人が汚物でも触るように僕の商品を持った。

 並べている商品の中でも結構気に入っているものだった。赤い宝石が埋め込まれたシルバーのブレスレット。繊細な細工が施されてとても綺麗なんだ。もちろん最後まで自分で作ったものだけどそれを疑うくらい綺麗だった。



 「ふーん」



 そいつは手に持った商品を自分の目の前に持っていきじっくり見ていた。まるで品定めをしているようだった。

 そして、ニィッっと笑ったと思えば、手に持った商品を地面に向かって思いっきり叩きつけた。

 



 パリンッ




 埋め込まれた宝石が砕け、フレームはどうしようもないほど歪んでしまった。繊細な細工はとても悲惨な状態だろう。



 「っ!」



 突然すぎる事態に僕の頭はついていけず、困惑した。

 それでも固まっていたのも数秒のことで、なんとか追いついた頭が状況を理解し、強い悲しみが襲う。



 僕の大切な商品になんてことするんだ!


 そう言ってやりたかったが、僕にはそんな度胸も勇気も、ましてや力もなかった。



 なんでっ…



 そう思いながら、男を見る。

 いや、見てしまった。





 見てしまったんだ。





 その男は僕と目が合うと僕が状況を理解したとわかったのか、さらに不気味な笑みを浮かべた。



 「っ!」



 ゾワッ



 恐怖で体がこわばり嫌な汗が背中を伝う。


 男は僕を見ながら笑顔のまま足を少し上げた。





 っ何を…



 そう思った時、



 グシャッ



 硬い何かが潰される音が聞こえ、嫌な予感がした。




 「嘘であってくれ」そう思いながら恐る恐る地面を見ると、最悪なことに男の足に踏み潰された僕の商品が見えた。



 僕が男の足元を見たそのタイミングで男は商品を踏みつけたまま足を地面に擦った。




 砕けた宝石がジャリジャリと音を立て、ブレスレットのリングはガリガリと傷をつけられていく。




 「っ!や、やめっ」

 「ぷっ、アッハハハ」



 男は泣きそうな声で言った僕を見て嘲笑った。



 最悪だ。



 僕の小さなプライドが音を立てて崩れていく。

 大切な商品を壊されたショックと何もできない自分に悔しさを感じ、目に涙が溜まっていく。



 「うわー、やったね」

 「こんなガラクタ売ってる方が悪くね?」



 男たちはそう言いながらわらう。



 「あっはは、これお前が作ったの?ならお前センスないよ」

 「才能ねぇんだからこんなとこで売んなよな。すげぇ不愉快」

 「しかもこんなガラクタが10セルだとよ!」



 安物だけど本物の宝石を付けてるから、これでもだいぶ安いほうだ。

 


 「マジかよ!ねぇわー

 ぜってぇそんな価値ねぇよ」

 「てか誰も買わねえだろ、こんなガラクタ」

 「ま、どうしてもって言うなら貰ってやってもいいけどな!」

 「ははは、やっさしー!」

 「おいおい、感謝しろよ!もらってくれるって言ってんだからよ!」

 「い、いや、売り物なので、あげることは…」



 僕が必死にそう言うと、男の表情が変わった。



 「ああ?なんだとてめぇ!」



 男が僕の胸ぐらを掴み拳を振りかぶる。



 「ひっ」



 殴られる!


 くるであろう衝撃に身構える。



 だが、目の前で人が殴られそうになり、流石にやばいと思ったのかそれまで静観していた周りの人達がザワザワする。



 「ッチ

 こんなやつ殴る価値もねえ」

 「なぁ、見る価値ねぇんだから行こうぜ。つまんねぇ」

 「ああ、そうだな。

 明日もここで売ったたらシバくからな!」

 


 そう吐き捨てて去って行った。


 

 緊張が解けたことで腰が抜け、力無く地面に座り込んでしまう。



 いくら領主様が治安に力を入れてると言っても、すごく広いからどうしてもああいう人は一定数残ってしまう。



 それにあの人達はそれなりに強い冒険者らしく、誰も助けてはくれなかった。


 でも、せめて巡回してる警備の人くらい呼んでくれても良かったのに…

 そんな思いが生まれてしまう。



 こんな空気じゃもう売れない…



 涙で歪む視界で無惨に散らばった商品を集める。

 


 辛い…苦しい…

 なんでっ…

 なんで僕なの…



 もう今日は売れない。そう思い早々に片付け家に帰った。

 あの場所ではもう売れないだろう。だから次の日は別の場所で店を出した。もちろん怖かった。怖かったけど「ここでやめてちゃいつまで経っても売れない」そう自分を鼓舞し、僕は今日も店を広げた。

 なのに、また同じようなやつに絡まれてその日も売ることができなかった。



 そのあと何度も場所を変えて売ったけど全然人が来なくて、あいつらを見かける度に急いで片付け、逃げ帰る日々を送った。


 初日以外は商品を壊されなかったことだけが唯一の救いだった。

 

 それでも辛かった。

 だから『こんな日が続くなら、あいつらが通らない裏路地で売れいいんだ』そう思って今の場所を見つけた。


 日当たりも悪くないし、あいつらにも絡まれないからちょうどよかった。


 人通りは本当に少なくて、たまに通る人すら誰も買ってくれなかったけど、大事な商品を貶されることも、好奇の視線に晒されることもなくなったから。そうして約2ヶ月何もなく平坦な日々を送った。



 っでも、



 …僕はいつまでこんなことをしてるんだろうか。



 やっと商品を売れるようになったのに、その気持ちは憧れていた頃とは真逆で辛く悲しいものだった。



 「僕がやりたかったのはこんなところでひっそり売ることじゃない…」



 そんな泣きそうな声が漏れ、誰も居ない裏路地に虚しく響いた。


 



 その日以降、僕は売るのを辞めた。











 そうして数ヶ月、ずっと家にこもって大好きな作品作りにのめり込んだ。


 




 …でも、やっぱり…僕が作ったアクセサリーたちを誰かに知って欲しかった。

 誰か1人でもいいから、認めてほしかった。



 だから僕はまた懲りずに商品を売り始めた。


 もちろん裏路地でだけど。



 もちろん、人なんて通らなかったから売れもしなかった。

 それでも、作品たちに陽の光を浴びせてあげることはできた。それで十分だった。



 そうして、並べた作品を眺め、ゆっくりと虚しくも幸せな時間を過ごしていたら、小さく人の声が聞こえてくる。やがてそれは少しずつ大きくなる。



 !


 ひ、人が!

 人がきた!



 っ、でも…どうせ『こんなガラクタに払う金なんてねぇよ』とか、『才能ないんだから辞めちまえ』とか言うんだろうな…

 今までもそうだったし…



 そこまで考えてハッとする。人が来たことに僅かながらも希望を持っている。期待してる自分がいる。そのことに驚く。



 …今更、何を期待しているんだろう。たくさん経験してきたじゃないか。「才能ない」っていっぱい言われたじゃないか。きっとこの人はたまたまここを通っただけで僕なんかには目もくれず通り過ぎる。それでいい。何も言われない方がまだいい。いや、そうであってくれ。


 人が通るたびに貶されていた今までの経験は、少し家に篭っただけじゃ消えてはくれない。初日のことだって今でも鮮明に覚えてる。

 


 何を言われるか怖くなり僕は咄嗟に身をすくめ、その人たちが通り過ぎるのを待つ。

 そうして暗い方に変わっていく自分に悲しくなる。




 あんなに売ることを夢見てたのにっ…


 なんでっ…なんでっ!



 泣きそうになる心を落ち着かせながらじっと耐えていると、あろうことかその人たちは僕の目の前で立ち止まった。




 っ!

 もうっ!もう何も言わないでっ!

 僕の作品たちを貶さないでっ!

 お願い!

 早くどっかいって!



 そんな僕の思いとは裏腹に、一向にいなくならない。


 しかも、その人たちは何も言わずにずっと商品を見ている。


 息が詰まりそうな、時が止まってしまったかのような、恐ろしい感覚が僕を襲う。



 それからしばらくして、1人が口を開く。



 「あの、これとこれとこれとこれとこれ、ください。」



 ため息を吐くでも、暴言を吐くでもなく、なんと『買う』と言ってくれた。

 しかも5個も。

 信じられなかった。



 予想外なことが起き、あまりの驚きで一瞬働きを止めた頭と身体をなんとか動かす。



 「えっ…は、はい!ありがとうございます!

 えっと、ぜ、全部で50セルです…」


 

 叫びそうなほど嬉しかったけど、果たして50セルも払ってくれるだろうか。


 そう思いながら、だいぶ小くなった声で値段を言うと、その人達は驚いたような顔をした。


 そりゃそうだ。



 綺麗な見た目をしているから、きっといいところの子供なんだろうし、綺麗で豪華なアクセサリーを山ほど見てきただろう。だから『こんなアクセサリーに50セルも払うなんて、あり得ない』って思っただろう。だけど、これ以上値段を下げるわけにはいかない。これでもギリギリなんだ。



 どんな反応をされるか怖くなり、ギュッと目を瞑ってしまう。



 「はい、ちょうど50セル」



 そんな僕の心配をよそにその人はお金を払ってくれた。 



 え?

 うそ、買ってくれるの?



 「っ!ありがとうございます!」



 は、初めてだっ!

 初めて売れたっ!

 この人は天使だ!

 僕の救世主だ!

 きっと神様が僕に奇跡を送ってくれたんだ!

 ありがとうございます!



 初めて売れた商品だったからすっごく丁寧に包装して渡した。



 「…?ありがとうございます」



 ちょっと不思議な顔をされたけど、すごく嬉しい。


 僕が密かに喜びを噛み締めていると、その人は変なことを言ってきた。



 「あの、ちょっとこれ預かっておいてくれませんか?」

 「え?」

 


 そう言って僕に綺麗な飴玉がたくさん入った瓶を渡してきた。



 綺麗…

 美味しそう…




 …はっ!

 違う違う!

 そうじゃなくて、

 え、なんで僕?



 「今度取りに来るので」



 いや、預かるのは全然いいけど、



 「構いませんけど、なぜ僕なんですか?」

 「ちょうどあなたがここにいるので」

 「…?」



 え?どういうこと?

 それだけの理由で?

 僕に?

 ちょっと意味がわからない。

 


 「また来た時にちゃんと説明します」

 「はぁ」



 まあ、後で説明してくれるなら…いいか、

 彼は天使だし。



 「しばらくここで売ってますか?」

 「あと1週間くらいはその予定です。そのあとは多分違うところでやると思います」

 


 多分ね…

 でも今日あなたが買ってくれたから頑張れる気がする。



 「そうですか。そしたら1週間以内に取りに来れるようにしますね」

 「…分かりました」



 いいけど、いつ取りに来るかわからないなら、その間ずっと持ってなきゃいけないじゃん…


 …いいけど、全然。天使だし。



 「あ、俺が取りに来るまでは食べちゃダメですからね」

 「っ!食べませんよ!」



 確かにちょっと美味しそうって思ったけど、人のものは食べないよ!



 「ふふふ、じゃあお願いしますね」



 そう言うとすごい綺麗な笑顔をされた。



 「っ!分かりました…」



 その顔でその笑顔はずるいよ!


 うぅ…

 目が焼けるかと思った…


 なんか最後にちょっと笑われたような気が…


 ま、いいか!

 初めて買ってくれた人だし!






不定期更新が酷すぎてすみません汗

もうちょっと頻度上げたいとは思ってます…


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