森で採取
「ラディ、今日の茶会はどうだった?」
「あ、それ俺も気になってた!」
「私も。嫌なこととか何もなかった?誰かに何かされたらすぐに言うのよ。叩きのめしてやるから。」
「こらこら、何かあったとしてもラディなら自分でなんとかできるよ。
でもまぁ、もしやるならちょっと痛い目に合わせるくらいにしておきなさい。」
「お母さん…わかったわ」
俺抜きで話を進めるから変な方向に行くんだよ。
てか、止めなよ。
なんでやる前提なんだよ…
「思ったより楽しかったし、何も嫌なことはされてないよ。だから何もしなくて大丈夫だよ」
「そう?ならよかったわ」
「今後も何かと関わりがあるだろうし、気が合うなら仲良くしておくといいかもな」
「うん、そうするつもり」
「なんか次の約束とかあったの?」
「具体的にいつにするとかはなかったけど、『また開くからその時は参加してほしい』とは言われたかな。だから、気が向いたら行くつもり」
「そうか」
「俺たちも誕生会の時に仲良くなった奴らとは学園でも一緒にいるぞ」
「そうなんだ」
「うん、結構気が合うから楽しいよ」
「僕達も誕生会で初めて会ったんだよね。そこから結構2人で遊んで仲良くなったんだよね♪
あの頃も楽しかったな〜」
「ああ、そうだな」
へー、そうなんだ。学園で仲良くなったと思ってた。
『あの頃も』って言うところがいいよな。
2人ともまだ27歳だからそんなに前の話じゃ無いけどね。
「クラウとディアは学院でいい人と出会いはあったか?」
今は学園が長期休暇に入ったから、兄さん達はみんな屋敷に帰ってきている。あと2ヶ月くらいは休みだ。
「俺は結婚したい人が見つかったよ。向こうも俺と結婚したいと思ってくれてるんだ。
来月末くらいに屋敷に招待するつもり。だから休暇が終わったらそのまま一緒に学園に行こうと思ってる」
「そうか。いい人がいてよかったな。楽しみにしてる」
「私も結婚したいと思う人が見つかったの♪クラウ兄さまと同じように来月末にうちに来てもらおうと思ってるから、その時にちゃんと紹介するね!」
「ディアも見つかったか。それはよかった。楽しみにしてるぞ」
「2人ともおめでとう!楽しみにしてるね!」
「いいなー、俺も結婚相手早く欲しい〜」
「あはは、そのうちできるから大丈夫だよ」
「そうよ。フレルの好きな人ができないだけでしょ?フレルのことが好きな人は結構いるはずよ。ちゃんと周りを見てみなさい。」
「そうかな?うーん、そうしてみるよ。」
「フレル、まだ成人前なんだから今を楽しむことが大事だよ」
母さんの言う通りだな。
みんなまだ若いし、人生これからなんだから急いで決めなくてもね。
「ラディも結婚したい人ができたら言ってくれ。何歳になっても構わないからな」
「たとえできなくったってラディが幸せなら僕たちはそれだけで十分だからね」
「…うん、ありがとう。できたら言うね」
父さん達の優しさが沁みる。
本当はずっと一緒にいたい相手がもういるんだけどね…
そんなこんなで食事を終えて部屋に戻ってきた。
今日はお茶会があってあんまりトレーニングができなかったから、今からでも走ってこようかな。日も傾いてきて、少し冷たい風が気持ちいいだろうし。
よし、思い立ったら即行動だ。
夜の森に慣れておくのも大事だしな。
早速着替えて屋敷を出る。
もちろん隠密行動のスキルをフル活用する。
見回りの警備や屋敷の門番もいるけど、気づかれないように出る。
森までは暗視と隠密行動を使用して軽く走りながら向かう。
「ふぅ」
この程度の距離ではもう全く疲れなくなった。
と言っても敷地内だからそんなに離れてないんだけどね。
大体2キロくらいだ。思ったより近かったな。
それでも5歳にしてはすごいことだと思ってる。
夜の森でやるのは初めてだから最初は歩いてやることにする。
ここでも隠密のスキルは欠かさない。
敷地内にあるとはいえ、この森にも普通に動物や魔物はいるからだ。
魔力の訓練と体力トレーニングをする中でずっと思ってたことがある。
それは体を動かしながら魔法を使いたい、ということだ。
魔物とかと戦闘になった時、走りながら魔法は使えませんじゃ話にならないし、そんな人は荷物なだけだからな。
普段から戦いを経験している人からすれば初歩的なことだと思うけど。
夜でも月明かりで結構明るいな。
地球では1つだったけど、こっちの月は3つある。一番大きいのは地球と比べて10倍くらいでかい。色は一緒だ。その近くにサイズの違う赤と青の月がある。
これが太陽のときにはちょっと離れた位置に緑の月がある。
どういう原理でその色になってるんだよ…と、思わないこともないけど、この際気にしないことにする。
スキルや月明かりで明るく見えていても、昼とは違うし、歩くのとも走るのとも感覚が違う。
まずは属性を付与していない魔力塊を3つ作り、自分の周りをクルクルさせながら歩く。
30分くらいやった頃には問題なく操作できるようになった。
だから今度は、小走りで同じことをやってみる。
これもできるようになったから普通に走りながらやってみる。魔力塊は1つから始めて徐々に増やそう。
よし、一通りやりたいことを終えたから、戻りがてら適当に森を散策してみるか。
いい感じの薬草とかが生えてたら貰っていこう。
中腹まで来ているからそれなりにあるはず。
いつかは自分でポーションを作りたいし、これからは時間があるときに良さげな材料を集めておこう。
こういう時の鑑定って便利♪
早速目に見えるものを鑑定していく。
うーん、これは違うな。
お、あった。
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【ヘモム】
森の中腹に単生している。
止血効果を持つため、リカブ草と併せて回復ポーションに使用される。また、塗り薬としても使用される。
使用部位は根。
地上部分は塗り薬を作製する際に使用される。
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回復ポーションだ。
薬草によってもたらす効果が違うのか。
ま、そりゃそうか。
ありがたくもらっていこう。
早速土魔法で優しく掘り起こして収納する。
他には何があるかな。
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【クルコ】
森の中腹に群生していることが多い。
魔力回復促進効果があるため、マジックポーションに使用される。
使用部位は花の中心にある実と茎。
花はすり潰すとさっぱりとした香りがする。
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次はマジックポーションに使われる薬草を見つけた。
群生しているから少し多めに取っていこう。
今後のためにもちゃんと根っこは残す。
他にもポーションなどの材料をいくつか採取して屋敷に帰る。
汗もかいたから風呂に入り、ベットで魔法の訓練をしながら材料の確認をする。
森の中腹で他に採取したものはこの3種類だ。
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・リカブ
傷口を塞ぐ効果があり、回復ポーションに使用される。
主に水辺に群生。
・サクア
魔力増幅効果があり、マジックポーションに使用される。
水辺に単生。
・ソリティ
体力増幅効果があり、体力ポーションに使用される。
単生。
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リカブとサクアは川の近くで見つけた。
森の入り口付近ではこの3種類を見つけた。
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・リコレット
体力回復促進作用があり、体力ポーションに使用される。
群生。
・ソリティ
・キプア
加工の仕方で発する香りが異なるため、それぞれに合った素材と併せ、魔除けや引き寄せに使用される。単生。
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ソリティは入り口から中腹に広く生育していた。
収納にポーションの材料がたくさん貯まった。
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ポーション
<回復>
・リカブ 106
・ヘモム 47
<マジック>
・クルコ 94
・サクア 58
<体力>
・ソリティ 75
・リコレット 178
<魔除け、引き寄せ>
・キプア 32
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おお、結構採ったな。
でも、これが多いのか少ないのかはわからないな。
そう思い、世界辞典でポーション作製に必要な材料を調べる。
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【回復ポーション】
<材料>
・必要な薬草等
(例:下級の回復ポーションでは水2Lに対してそれぞれ3枚ずつ)
・綺麗な水 魔力で作ったものが望ましい
・魔力
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水2Lに対して3枚なら、少なくはない量を採取できたな。
でもまあ、実際に作るのはまだ先だろうから、今はそんなに考えなくてもいいし、見つけたら適度に採る程度にしよう。
数日後
今日は何度目かの魔法の授業だ。
初回は簡単な自己紹介と魔力とは何かを学んだ。
それからは魔力のコントロールの仕方と正しい使い方などを教えてもらった。
ちなみに先生の名前はテッド。男の先生だ。ザ魔法使いっていう見た目をしていて、左手に大きな杖を持っている。
そういえば、父さんにつけてもらった先生たちはみんな大公家専属の者たちのようだ。
安易に外の者を雇うと色々面倒だし、我が家に仕えている者たちの方が、安全でレベルが高いからだそう。
今日は一応始めて魔法を使うから訓練場で授業をする。
いつも父さんと使っているところではなく、周りに建物がない訓練場だ。間違えて変なところに飛ばしたりしたら大変だしね。
ま、念の為にどの訓練場にも結界が張ってあるから、基本的には外に飛んで行ったりしないけど。
「ラウディエル様、これまでの授業でお教えした魔力循環をやっていただけますか?」
「わかりました」
そう言って、言われた通り魔力を全身に巡らせる。
本当は常に巡らせているんだけどね。
普通は洗礼が終わってから始めて魔法を習い始めるから、開始前から既にできるようになっている方がおかしい。当たり前にやりすぎて普通になってたな。
「はい、ありがとうございます。
うん、綺麗に巡っていますね。」
「ありがとうございます」
「これからはできるだけその状態を維持したまま、生活を送るようにしてください。その方が何かと安全ですから」
ふーん…
まあ、いいか。
「そうなんですね、わかりました」
「はい。
それでは実際に簡単な魔法から使ってみましょう。まずは私がお手本を見せますね。
ウォーターボール 」
そう言って手のひらに水球を生み出した。
ん?これは詠唱したのか?それとも無詠唱なのか?
引っ張られたような魔力の流れはしてない。
やっぱり無詠唱なのか?
…じゃあ、なんのために技名を言ってるんだ?
「これは水魔法の水球です。前回の授業でお教えしましたが、魔法はイメージが大切です。
では、私の魔法を見ながら同じようにやってみてください。
出したいところを意識して、そこに水属性を付与した魔力を集めます。集めたら、体外に放出してください。放出する際にどんな魔法を作るかをイメージしながらやってみてください。
わかりましたか?」
「はい。あの、質問いいですか?」
「はい」
「先ほど詠唱していたと思うのですが、先生は詠唱なしで発動させないんですか?」
大公家専属の魔法使いが無詠唱で魔法を発動できないはずがない。ましてや俺の先生になるような人だから、できてないなんてあり得ない。
「いえ、無詠唱ももちろんできるんですが、こっちの方がかっこよくないですか?無言でバンバンやっててもつまらないというか…」
あ、そういうこと。
うん、一理あるな。
「確かに言ったほうが決め台詞みたいでかっこいいですね。私もそうしてみます」
「おお、そうですか!分かってもらえるなんて嬉しいです!」
「ふふ、では、やってみますね。
ウォーターボール 」
そう言って水球をゆっくり生み出す。
「おお、素晴らしいですね。初めから無詠唱でできるなんて!流石です」
そう言っていい笑顔を向けられる。
やっぱり無詠唱だって気づくんだな。
ま、そりゃそうだ。
気づいてくれなきゃ困る。
「ありがとうございます。先生の教え方が分かりやすかったので簡単にできました。あの、先生にとって技名だけ言うのも無詠唱なんですか?」
「うーん、普通の方はそうではないのですが、魔力の流れをみる限り、ラウディエル様は無詠唱だと分かったのでそう言いました。
本来、詠唱をするとスムーズに魔法の発動ができるように、魔力が少し誘導されるんです。ですが、ラウディエル様にはそれが見られませんでした。」
「そういうことですか。教えてくださってありがとうございます」
「いえいえ、わからないことがあれば、いつでも聞いてください。長く魔法を使っていると先ほどのように、相手の魔力の流れを感じることもできるようになりますので、頑張りましょう!
そしたら次は火・風でも同じようにやってみましょう。」
「はい」
「ファイアボール、ウィンドボール」
右手に火球、左手に風球を作る。
「おお!もう違う属性の魔法を同時に発動できるんですね!素晴らしいです!」
「ありがとうございます♪」
「では、せっかく発動してもらったところすみませんが、もう一度水球を出していただけますか?」
「はい」
火と風の魔法を消して水球を作る。
今度は技名なしだ。
「ありがとうございます。そしたらそのまま動かすことはできますか?」
言われた通りにゆっくりと動かす。
「お!できますね!では的を出しますので、それに当ててみてください。
アースクリエイト 」
2mほど離れたところに大きめの的が作られた。
「では、やってみてください。」
「…はい」
…なんか、説明省いてない?
さっきまでは丁寧だったよね?
事前にやってくれたよね?
別にいいけどさ…
とりあえず言われた通りに水球を動かして的に当てる。
「上手いです!」
「ありがとうございます」
「では、次は…」
とまぁそんな感じで授業が進んで行った。




