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すべて叶えよう   作者: 夜
第一章 幼少編
13/33

訓練開始




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 優美へ


 無事に行けましたか?


 スキルなどまだ説明できなかったことがあったので手紙にさせていただきました。


 まずは鑑定ですが、ステータスボードと連携させました。それによりステータスを見る時と同様に目の前に鑑定結果が出せます。


 そしてアイテムボックスですが、これは鑑定・ステータスボードと連携させました。これによってステータスボードの一部でアイテムボックスに何が入っているのかを表示させることができます。さらに、ボックスに入ったままでも鑑定を使うことができます。また、カテゴリー別に分類することもできます。

 

 次に世界辞典ですが、これもステータスボードと連携させました。これによって調べた内容をステータスボードの一部に表示させることができます。


 そして魔眼ですが、意識すると発動ができるパッシブなものと、常に発動しているアクティブなものがあります。それと、スキルは魔力を使用するものと、しないものがあります


 また、魔法についてですが、使えるようになると【魔法適性】の下に【魔法】という欄が追加され、そこに火魔法、水魔法などと表示されます。

 さらに、どの程度扱えているかを示すF〜SSが表示されます。この程度が高いほど同じ魔法でも威力が高くなります。これに純度や密度も合わさるとさらに高威力の魔法を使うことが可能になります。逆に扱える程度が低くても純度や密度が高いと強い魔法を使えるということになります。

 そして各魔法には初級、中級、上級、最上級、伝説などの等級があります。優美なら伝説以上になれると思いますので頑張ってくださいね。


 話せなかった説明は以上です。


 最後に、この世界での食事についてです。

 ちょっと不安になっているんじゃないですか?

 でも、安心してください。食事のレベルは地球とそんなに変わりません。少ないですが平民ではお米や味噌、醤油を使って料理をしている人もいます。機会があれば是非食べてみてください。


 それでは、思いっきり楽しんでくださいね!



                  アステル


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ありがとうございます、アステル。


 アステルから手紙がもらえたこと、その内容が俺への気遣いに溢れていたことにとても嬉しくなった。嬉しさで心がふわふわしている。頭の片隅で心配していた食事についても心配しなくていいと知ってほっとした。



 あぁ、嬉しいな。

 早く会いたい。

 あの可愛い顔を、早く見たい。

 アステルの花のような香りが充満した空間に包まれたい。



 アステルの気遣いに、幸せに満たされた気分になったが、ふと何故手紙なんだ?と疑問に思った。もちろんもらった手紙はすっごい嬉しいので生涯の宝にする。ただ、いつでも話せるのだから直接話しかけてくれたほうがはやいのにとも思った。


 アステルのことだから俺に気を遣っているのかもしれない。仮にそうだとしてアステルから来ないなら俺から話しかければいい。




 

 『アステル』


 

 心の中で呼びかけた。


 









 …











 …あれ、







 俺の呼びかけにはなんの反応も返ってこなかった。もしかして何か間違えたのかなと思い、もう一度呼んでみた。




 

 『おーい、アステルー?』













 …













 …え










 『アステル?』










 …











 またしてもなんの反応は返ってこなかった。『なんで』そう思ったが嫌でも気づいてしまう。こういう時の自分の勘の良さが嫌になる。





 違う、間違えてるんじゃない。

 届いてないんだ…俺の声が。





 その事実に少しずつ冷静さを失っていく。少しでも現実を否定したくて必死にアステルを呼んだ。



 『ねぇ、アステル!』




 だが、当然ながらアステルからの返事はない。



 …うそ…待ってよっ、

 なんで?どうして?



 …っ!…そういえば、

 さっきまで寝てたけど、アステルに会えてないっ!


  





 …。 











 現実を受け入れたくなくて、否定するように何度も何度も何度も必死にアステルを呼んだ。だが、どう足掻いても現実は現実で何の反応も返ってこなかった。

 もう受け入れるしかなかった。俺が今、どれだけ頑張ってもアステルからの返事は来ないんだと。心のどこかの妙に冷静な自分がこの状況を見下ろしている。『もうどうしようもないだろ』そう言われているようで、こういう時のそういう自分が、すごく、気持ち悪い。






 あぁ、これは何をやっても無駄なやつだ…

 なんで?


 

 何でなんだよっ!

 




 なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでっ!



 なんでだよ…

 



 なんでっ…




 …。





 …教会か?教会に行けば会えるのか?





 っでも、それは……5年、5年後だ。

 そんなに待ってられないっ…

 待てる気がしない…




 俺が教会に行けるのは5年後だ。つまりそれまで俺にはアステルに会うための手段が何ひとつない。5年という月日は俺にとって長すぎる。今すぐに会いに行きたいが、5歳までは何もできない。待つしかない。




 …ねぇ、アステル。

 どうして言ってくれなかったの…?

 もし言ってくれてたら…俺は…









 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








 どれくらい放心してただろうか…


 どう頑張っても今の俺にできることはない。そのことを受け入れて5歳まで生きるしかない。だから、今できることをやる。会えた時に驚いてもらえるように。


 そう思い、気持ちを切り替えてやっていたことを再開する。

 



 合っているかどうかは置いといて、とりあえず純度の高め方はこれでいいだろう。アステルは密度を高める訓練と並行してやるといいと言っていたので、まずは純度を高める方に集中した。


 もう一度魔力の色を見ると初めの白っぽい濁りが結構なくなっていた。さっきの1回でだいぶ綺麗になったようなので、あと数回繰り返してから密度の訓練に移ることにした。


 あと少しを繰り返してなんだかんだで魔力玉が追加で36個できた。それをアイテムボックスに入れ、全部で48個になった。



 純度の訓練を終え、次は密度の訓練に入る。こっちもやり方がわからず、どうやってやるか考えたが、とりあえず現状把握もかねて魔力を体外に放出する練習から始めてみる。


 むちむちの手を目の前に持って来ると今度はちゃんと魔力が流れているのが確認できた。まずは、この流れている魔力を手のひらから放出するように意識する。



 ニョロニョロ〜



 …。




 想像よりだいぶしょぼく頼りないそれに唖然とした。でも、まぁい…一応、できた。ただ、意識しないとすぐに霧散してしまう。

 そこで、放出した魔力をもう少し維持できるように意識つつ手のひらに丸い塊を作るイメージをする。



 今度は霧散せずに大きい塊を作ることができた。それから同じことを何度も繰り返して練習してある程度スラスラとできるようになった。ただ、目の前にあるそれがなんか気持ち悪かった。魔力の色は濁りがほとんどなく綺麗だし、塊自体も大きく綺麗な丸をしている。これはとてもいいことだろう。中身がなくスカスカなことを除けば。

 多分これが密度なんだろう。ふわふわと雲のようなそれにもう少し輪郭を持たせ、大きさは変えずに放出する魔力量を増やす。明確に認識できるくらいの濃さに変わった。俺はこの魔力の塊を『魔力塊』と呼ぶことにした。

 ただ純度と同じでこのやり方が合っているのかわからなかったが、他にいい方法も思い浮かばなかったのでこれでよしとした。



 これは俺の勝手な印象だが、放出する場所が小さければ小さいほどより精密な繊細な魔力コントロールが求められそうな気がする。少なくとも俺が読んでいた小説ではそうであることが多かった。なので次は手のひらより難しそうな指先に小さな魔力塊を放出する。まずはイメージしやすい人差し指から。

 

 指にも巡らせている魔力を意識して指先から放出する。が、想像通り手のひらからの放出とは違いそう簡単にはできなかった。さっき魔力を巡らせたばかりの俺では、求められるコントロール力に追いついていなかった。すでにかなり高いステータスを持っているが、それほどまでに指先などは繊細な魔力コントロール力が求められるのだ。ただ、魔力操作は感覚によるところも大きいとアステルは言っていたから、たとえステータスが高くてもコントロール力までも高いとは一概に言えないのだろう。

 だから今度はさっきよりもさらに集中して感覚を研ぎ澄ませていく。全身を巡る魔力を感じ、魔力の流れる速度や量を意識して調整する。

 この操作をスムーズにできるまでそれなりの時間を要した。そのおかげで今度は指先からの魔力放出に成功した。そこから丸く形を持たせ、密度を上げ指先サイズの魔力塊を作る。



 ふぅ、できた。

 大変だったな。



 一息ついたところで少しだが、魔力が体から漏れ出ていることに気づいた。多分だが、5歳での洗礼を受けて初めて魔法が使えるようになる。魔力の硬さから言っても多分そうだろう。あれを何の知識もない子供が1人でどうにかできる方がおかしい。なので、本来ないはずの魔力が漏れ出ていると怪しまれてしまう可能性が高い。俺は暇で暇でしょうがなく自力でいろいろやってしまったが、今はできるだけ漏れないように体内に閉じ込めておく方がいいだろう。

 

 

 俺を縁取るようにモヤモヤと揺らいでいる魔力を体内に吸収し、一切漏れることなく全てが体内で巡るように意識する。



 スーッ




 漏れていた魔力が徐々に体へ戻り魔力の流れに乗っていく。全ての魔力が体内に戻ったことを確認して魔力操作の訓練を再開した。


 

 今後は複数の指での魔力塊作成と、体中どこからでも魔力放出ができるように訓練しよう。ゆくゆくは魔力で全身を覆い、身を守れるようにする。これが無意識でも発動できるようになれば安心して寝られる。

 俺は今後世界を見て回る予定だ。今は守られているから安心して寝られるが、家を出てからはわからない。だから今のうちに身につけておいて損はないし、習得するなら早いうちがいいだろう。

 今やっている魔力操作の繊細かつ精密なコントロールはこれから覚える魔法でも確実に必要になってくるだろう。世界を旅するまでまだまだ時間はあるから、今からしっかり訓練しよう。


 

 そこまで考えて疲れが出たのか、夢の世界へと誘われ落ちていく。


 



 


ーーーーーーーーーー









 『ーーだーー、ーーー』

 

 『ーーー、ーーーー』



 近くで小声で話す誰かの声が聞こえ、深く沈んでいた意識がゆっくり浮上する。



 んー、なんだ?

 人が気持ちよく寝てるってのに耳元でうるさいな。



「うぅーん」

「あ、起きたぞ」

「あ、ほんとだ。おはよう、ラディ。

 僕はラディのお母さん、こっちはお父さんだよ」

「遅かったな。待ちくたびれたぞ、ラディ」


 

 重い目を開けるとのぞいてくる2つの顔があった。俺を抱っこしているのは母と名乗る人で、少し天パが入った癖のあるクリーム色の髪の毛に翠の瞳をしている。父はサラサラな黒髪に深い青色の瞳だ。2人ともとても綺麗な顔をしていた。



 目の前にあるすべすべそうなその顔に触れてみたくなり、近くに来ていた父の顔に両手を伸ばした。

 


「だぁー」



 子供だからか、聞き馴染みのない高い声が出た。

 


「ん?どうした?」



 父は伸ばされた俺の手を取り自分の顔に持っていった。



「あぅあ!」



 触れた父の肌はめっちゃめちゃなツルスベ肌だった。おまけに髭もないからずっと触っていられる。感動して変な声が出たけど、それほどに心地いい肌触りだった。肌トラブルとは無縁なんだろうか。

 父の顔をキラキラした目で見ながら触っていると母が笑った。



「ふふっ、可愛い」



 …あなたも大概だと思います。


 

「そうだな。だがレアも負けないくらい可愛いぞ」

「っあ、ありがとう//ノアもかっこいいよ…///」



 父は俺を抱っこしている母の頬を撫でながら甘い声でそう言った。それを正面から与えられた母の顔が赤く染まった。



 父よ、あなたとは似た何かを感じるぞ。

 だけどさ、子供の目の前でイチャイチャすんなよ。

 …別にいいけど。目の保養だから。

 


 自分の親だけど整った顔を赤く染める母がとても可愛く見える。ただ、母の心臓が心配になる程脈が早い。


 まあ、俺も自分の嫁なら正面から愛の言葉を伝えるし、ずっと触れていたいと思う。いいことか悪いことかわからないが、俺も父親になったら同じことをする未来が見えてしまった。


 だが、夫婦仲がいいのは安心だ。俺への接し方で大体わかるが、きっと家族仲もいいのだろう。

 というか、なんの抵抗もなく両親が同性ってことを受け入れていたが、どういう原理で子供が生まれるんだろうか。ほんとに不思議だ…異世界だからか。まあ、これもそのうち知るだろう。

 そんなことを考えていると盛大に俺の腹がなった。



 グゥゥゥゥ


 

 小さい頭で色々考えすぎたのかすごくお腹が空いた。



「ふふふ、お腹すいたよね。ご飯にしよっか」

「ああ、そうだな。モロン、食事をする。準備してくれ」

「はい、旦那様。すでに整っております」

「そうか。いつも早いな。助かる。では、行こうか」

「うん、そうだね」



 すでにご飯の準備が整っていたようでそのまま移動する。こういうのって出てくる食事は大体作りたてのようだけど、いつ食べるかもわからないものをどうやって準備しているんだろうか。父にモロンと呼ばれた執事とかが長年の勘とかその場の空気とかで指示を出しているのか。




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