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短編集(恋愛以外)

ながらエッチで、彼への恋は冷めました

作者: 冷原哲史

 大学2年生の私は、1歳年上で別の大学に通う男性と付き合っている。

 私達の交際のキッカケは、自分も働いているコンビニでのアルバイト。

 そこでの彼の真面目な働きぶり、どんなトラブルが起きようとも笑顔を崩さず接客する姿勢、誰よりも効率的に率先して仕事を進める姿。


 他のアルバイト店員が仕事をせずにサボる方ばかりの職場環境だったのもあり、その人達に対する愚痴をこぼすうちに自然と仲良くなっていき、無意識に彼を目で追うようになっていた自分は――恋に落ちていた。






「ちょっとテレビ点ける」


 彼との初めてのお家デート。

 この日のために家中をくまなく掃除して、可愛い下着も新調し、私自身のケアも万全に済ませ、ついに始まった恋人とのエッチ中に――彼はそう言い放った。


「……ねぇ? 何で私を抱きながら、テレビを観始めるの?」


 彼は私との情事中に、近くにあったリモコンでテレビを点けると、そちらに視線を向けながら返事をする。


「え? だってそのほうが効率的だろ? 情報化社会なんだから」


 は?

 効率的って何?

 恋人の男女がする愛情表現(エッチ)に、効率もくそもなくない?

 私はテレビの情報以下ですか?


「大丈夫、俺はマルチタスクだからさ」


 へー、そうですかそうですか。

 私は同時()()ですか。


「君のことも勿論、気持ちよくしてあげるよ♡」


 キモいキモい。

 あーもー……無理だわ。

 恋愛漫画なんかに出てくる「恋が冷めた瞬間」っていうのを実感した気分。


「……どうしたの?」

「私達、別れましょう」


 彼との性行為を中断し、私はさっさとシャワーを浴びる準備を始めながらそう言った。


「ええっ!? な、何故!? これから盛り上がっていくところなのに!」

「あんたとあんたの股間は盛り上がってても、私はなえまくりよ」


「だから何故!?」

「初お泊まり、私達の初エッチ。そんな大事な時にテレビを観ながらエッチとか――100年の恋も冷めるわ」


 ハッキリとした別れの言葉を最後に、裸のままでまだ呆然としている彼を寝室に残して、私は一人でバスルームへと向かった。





 あの後。

 服を着て待っていた彼からの謝罪と復縁の言葉に耳を貸さず、家から追い出した私は、1つ気になっていることがあり、友人や知人、母などにそれとなく聞いてみた。


 男性は「テレビを見ながらエッチするのが普通なのか?」と。


 私自身、あの元カレ効率男を数に含めても男性経験はたったの2人。

 ながらエッチが一般的なのかが気になっている。

 ……1人目の元カレも、途中からそうなってしまったから尚更ね。


 初めての時はお互いが処女と童貞で、探り探りしながらの初々しいエッチだったけれど……。

 4回5回目ぐらいのエッチから、元カレはスマホをいじりながらのエッチ、挙げ句の果てにはテレビを点けた状態でスマホ操作しながらのエッチ。


 私は本当にそれが不愉快であったと同時に、自分が彼から大事にされていないんだと感じるようになり、私から彼を振った過去もあるから……。

 気になるのよ。ながらエッチが普通なのかどうかがね。

 



 複数の人達から話を聞いた結論は……人によって様々だということ。


 結婚や付き合いが長くなってくると、テレビをつけたままや、スマホに限らず何かをしながらエッチする人達もいるらしいし、それをなんとも思わない男女もいるみたい……私は信じられないけれど。


 ながらスマホの危険性が叫ばれる昨今。

 ながらエッチの男性も増えているのかもしれないと考えると、1人の女としては……色々複雑。


 次に付き合う彼氏は、絶対にながらエッチをしない男にしようと、私は心に強く決める。


 ……。

 …………。


 そんなにスマホやテレビがいいの!?

 彼女とのエッチよりも、私の女体よりもスマホやテレビがいいの!?

 私の身体って魅力ないの!?


 ……女としてのプライドがズタズタにされそうだから、深く考えるのは止めよう。

 私の元カレ2人が、ひどくデリカシーに欠けた男性だったのよ……うん、きっとそう!


 はぁ……。

 

 どこかに私を理解してくれて、優しくしてくれて、イケメンで年収が高くて、ながらエッチせずに甘い言葉や愛の言葉を囁きながら、私だけを見つめて抱いてくれる――そんないい男はいないのかしら?


 はぁ……彼氏欲しい。

 贅沢は言わないから、本当にながらエッチをしない恋人が切実に欲しい。


 季節は冬。

 今年は回避出来ると思っていたクリぼっちは――もう目の前。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 他人から見るとそんなことで?と思うことでも、当人にとってはとても大事なことってありますよね。 大事な愛情表現の時間に他のことをされながら、というのは自分をないがしろにされているような、自分…
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