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第23話 国王ライゼン

 その頃、白の国玉座では白の騎士団団長のグレイが国王ライゼンの前にひざまずき、監獄での報告をあげているところだった。

「まさか! クラウス様が復活されるとは」

「私も目を疑いましたが、監獄内でいとも簡単に魔法を使って私を操り、テレポートで飛んでいかれる力は、間違いなくクラウス様でありましょう」

「ふぅむ……。あの魔力封印術を施した監獄を脱出できるとは、現役時代のクラウス様だろう」


 国王ライゼンは王者の風格たる白いたてがみに、勇ましさを物語る眼光、鋭い牙を持つ百獣の王、ライオンである。その毛並は太陽に照らされれば白光となって、周囲を明るく照らすほどである。

 今、玉座の窓から夕日を背に国王ライゼンに後光が差し、グレイは眩しさのあまり顔が見ることすら困難であった。


「そんな破天荒はてんこうなことをするのはクラウス様らしいな。ナマケモノという名前にはない、最強の魔法剣士であり、犬の転生者たちの師匠であった」

 国王ライゼンが幼少の頃、クラウスは既に100歳を超えていたという。即ち、国王ライゼンが300歳超え、クラウスが400歳超えということだ。


「ご長寿は去ることながら、あの犬の転生者たちの師匠だったのですね……」

 国王ライゼンはマントをひるがえし、ひざまずくグレイの横を通り過ぎ、壁面に手を添えた。その壁面には結びの木を守る4人の戦士が描かれ、敵と対峙している様子であった。

「うむ。分断戦争の折、弟子たちを失った悲しみは計り知れん。その後、クラウス様は行方不明となり、まさか……まさか、戻ってこようとは思わなかったな」


「それで、クラウス様は一緒にいたカナルと、犬の転生者と思われる人間と共に飛んだのだな?」

「はい」

 国王ライゼンの表情は変わることなく、瞳の奥では今後の展望を描くように、一つひとつ算段を立てていた。


「ロバーバをここに呼んでまいれ。犬の転生者4人の内、これで2人目となろう。楽しみになってきたな」

「はっ!」

 命令を受けたグレイはロバーバの元へ飛んだ。


「……(さて、ユキヒョウ族の事件や黒魔術の使用がどうなるか。クラウス様の復活と犬の転生者が同時に現れたことは、予言の通りかもしれん)」

 国王ライゼンは分断戦争以後、保たれてきた治安が崩れ行く予見をしていた。これから白と黒の国に起こる未来を見据えて……。




 それから2週間後、サブ、カナルはクラウスの指導の下、相変わらず荒野で修行に励んでいた。

 2人は魔力をうまく使いこなし、折れた枝が今では立派な木となり、何本も荒地から生えていた。


 カナルはクラウスのアドバイスにより、大剣と短剣の二刀流になっていた。大剣は敵へのダメージが大きい分、動きが遅い。

 しかし、短剣にすることでカナル本来の素早い動きが反映され、2つの剣を使いこなすことで敵を混乱させることができる。

 戦闘中は魔法の鞘に入れているから、重さを感じることはない。


「さて、二人とも! 本日より実践練習に入る!」

 クラウスの軽快な声が荒野に響き渡る。

「待ってました!」

 カナルは2週間も枝だけの訓練だったので退屈をしていた。

 それは実戦経験がほぼ皆無に近いサブも同様で、早いところ剣技に慣れたいと思っていた。

 ――いつユキヒョウ族を襲った黒のフードの者が来るかもわからないし、レオパルドの真実を取り戻す為にも頑張らなきゃ。


「サブ、剣を構えよ」

 サブはルゥを抜き、クラウスの前へ出た。しかし、いざ向き合うとレオパルドのときにはない緊張感に襲われた。手も震え、剣が定まらない。

 ――あのときは無我夢中だったからか……いや、確かにそれはあったけど、クラウス先生に到底敵わない何かを感じる。何だこれは……魔力……?


「お、気付いたか!」

 クラウスの声にサブは我に返った。

「今、サブのことを本気で殺そうと思っていたんだ。何かを感じ取っただろう? それは俺の殺気であり、体外へ滲みだした魔力だ」

「それの区別がつかないうちは、ただ単に恐怖でしかない。しかし、これから先、君たちが戦う相手は常に殺気を伴った魔力が必ず滲み出ているはずだ」


「先生の魔力に圧倒されていたようです。今冷静に見ると、先生の魔力は凄いというか……底が見えない感じです」

「うんうん! 良い線いってるね! じゃあこれはどうだ?」

 クラウスは剣に魔力を集中しつつ、全身にも魔力を備えている様子が見え、サブはその状況を伝えた。

「そこも合ってる。でもね、部位によって俺は魔力バランスを変えてるんだ。それも瞬時にね」


 クラウスは剣に60%、頭や首、心臓というコア部分に20%、腕足に10%、その他に10%を魔力を乗せているという。

 サブもカナルもそこまでの数値が見えなかった。

「別に数字は見えなくて良いよ。数字はあくまで自分の目安として魔力を測るものだ。要は敵と対峙したときに、相手の隙や弱点を狙えることができる」

「隙は簡単。魔力が移動されていない部分のことだ。剣に集中するあまり、背中ががら空きなんてことはよくあるよな? サブ?」

「あ、この間のファイアーボールですね」

「そういうこと!」


 また、弱点は自分の体の弱い部分や重要な部分に魔力の比重を置く者が多く、これも敵と向き合った瞬間に、判断しなければならない。

 これらができて、一人前と言えよう。と、クラウスは説明した。


「ただね、今はまだその目を養うにして、君たちはもう瞬時に体内の魔力を分散移動させることができるだろう。この2週間、枝による集中力を身に付けてきたのはその為だ。さぁ、やってごらん!」

 二人は言われるままに、魔力を体の至るところに分散させてみた。


「す、すげー!」

「おお!! できる!!」

「それは魔力のコントロールができるようになった証拠。 二人とも素質あるよ! でもまぁスタートラインなんだけどね!」

「師匠! ありがとうございます!」

「先生のおかげですよ! ありがとうございます」


 師匠、先生と呼ばれると、かつて弟子を教えてきた記憶が蘇る。クラウスはこの二人が必ず白の国にとって重要な存在になることを確信していた。

 それは国王ライゼンが抱く、未来への懸念とも一緒で、いつか起こる"大事"に備え、一瞬一瞬を大切にしようと思うのであった。


「はは、それじゃサブから実践といこう」

 にっこりしていたクラウスの表情が変わった。

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