第22話 真珠の秘密
テレポートを使ったクラウス、サブ、カナルの三人は荒野に到着した。
所々に小低木がや岩壁があるぐらいで、周囲に人が住んでいるような気配は見られない。
「ここはどこでしょう?」
カナルが聞く。
「白の国を出て東へ数キロ離れた場所だ。ここで君たちの修行をすることにした!」
「修行!?」
サブとカナルが声を揃える。
「ああ、君たちの魔力をもっと強くするためだ!」
「おお……あのクラウス様から教わろうとは……」
カナルは感激のあまり、手が震えている。
「この人はそんなに有名なの?」
サブが小声で言う。
「有名も何も、最強の魔法剣士と呼び声が高い方だぜ?」
「そんなにやばいのか」
――確かに監獄をあっさり出てしまい、俺らを無罪にする力があるぐらいだ。
「おいおい、丸聞こえだよ! どうやらサブは俺のことがわからないみたいだね!」
クラウスはサブのことを知ったように話すが、サブは全く覚えがない。犬の頃にもこんなハイテンションな性格と出会ったことがない。
「まぁ300年も昔、分断戦争の後、色々やらかして逮捕されちゃってね。全てはこの日の為に逮捕されたんだけどさ!」
後々その理由は話すよと、クラウスは説明を避けた。サブとカナルもあえて聞かない方が良いと思い、じっと話を続けるクラウスに耳を傾ける。
「さてさて、魔力を使いこなすには絶え間ない努力が必要なんだけど、その前にサブにはその真珠の説明をしなきゃいけないね」
――そう、この真珠。もらってから、妙に力を感じるんだよな。
真珠のピアス。これは転生者がつける物と決まっている。
転生者の魔力が強い理由。それは、前世の記憶が生命エネルギーとして存在するからである。サブとカナルの魔力の圧倒的な差はここにある。
ただし、記憶は次第に薄れていくもの。前世の記憶がなくなれば、過去の生命エネルギーはなくなり、単純に結びの木から放出される微々たる魔力しか使えないことになる。
その前世の記憶、つまりは生命エネルギーは常に放出され続けている。時には激しい頭痛を起こすという。
「そう言えば、カナルと城外に出た時、頭が割れるかと思った」
「それは記憶が失われた証拠だね! 歳を重ねるとその頭痛も酷くなり死んでしまう者もいる」
「それでこの真珠で守ると」
「そういうこと!」
クラウスが一目見て犬の転生者だと理解したのは、生命エネルギーが溢れんばかりにサブの体中から湧き上がっていたからである。
この生命エネルギーを留めるために真珠のピアスがあり、脳内の記憶を真珠に移し、その中に魔力をとどめることができる。
今サブの耳に納まった真珠のピアスは重要な役割を担っているのだ。
それからクラウスは真珠のピアスについて幾つか特徴を述べた。
・通常魔力の強い者は青い色を放つ。強くなればなるほど濃い青となっていく。
・耳に真珠のピアスをつけている者が転生者。
・基本は1つの装備でよい。2つにすれば魔力は分散され弱まってしまう。しかし、特定の条件で2つ装備が可能となる。
・人から奪っても記憶と直結しなくなるため、価値のないものになる。仮に死んだ場合に、つけていた真珠は灰色となる。
・他人が付けた場合、死に至る。血液循環と一緒で副反応が99%以上の確率で起こる。
「でも、サブの真珠は青じゃなく緑だけど」
「えっと、カナルだっけ? 良い質問だ!」
「普通、真珠の色は青。これはさっきも説明した通り、過去の生命エネルギーが根幹となっているよね。でも、緑であるのは結びの木の魔力を宿しているんだ」
「なぜサブが結びの木の魔力を!?」
「それはね……結びの木から生まれたからだよ!」
「ええ!!」
「え、あの大木から俺は誕生した?」
「ああ、そうだ! それで木特有の緑色を持っている。言わば木の分身さ」
――分身……確かにあの大樹の力があれば、あれだけの国を守る力がある……
「それで半端ない力があったのか。納得!」
カナルはサブの右肩に飛び乗り、緑色の真珠を見つめる。
「でも、転生者は普通ゲートから来ると聞いたけど……」
「ん-まぁ、そうなんだけどね」
クラウスは迷った。サブが自分のことを覚えていない以上、今二人に話したところで伝わらない。むしろ、己の状況がガラリと変わり、この現実から逃げてしまう可能性もある。
300年以上も昔のことを思い出しながら、クラウスは今成すべきことを決心した。
「稀にあるんだよ。転生場所を誤ってしまうことがね。たまたまサブはそれに該当したのさ!」
――今はこう述べるしかないよな。
「なるほど。サブ、やっぱお前すげーな!」
「そうかな~? でも、この魔力の正体がわかって良かった」
サブはようやく自分の力について、一つの回答が得られた。だが、犬の転生者という点においては未だに謎であった。
――いずれ、このクラウスさんに聞いてみよう。
「それじゃあ、基本的な修行から始めるとしよう!」
岩壁の上に登ったクラウスは木の枝を折ると、同じ長さに調整してそれぞれの手に託した。
「この木の枝に魔力を集中するんだ。ただし、わかっていると思うが、戦闘において一点集中は危険だ。全ての魔力を枝に集中させようとは思うなよ」
スタートしてカナルはすぐに枝に変化が現れた。
小さな芽がちらほらと出ている。
続けてサブ。
まだまだ魔力の移動に時間を要しているが、一度芽が現れるとグングン成長していき、枝分かれまで生じだした。
「そう、その調子だ。魔力は生命エネルギー。即ち、その枝に宿った命が芽となって現れる。君たちの目標はその枝を大樹に育てあげることだ!」
「もっと全身の流れを感じろ!」
カナルは横をちらりと見ると、サブの枝はどんどん伸びあがっている。
すると、ズドン!
カナルの腹部にクラウスが放った無属性魔法が直撃した。
「ぐぉふ!!」
「ほらほら、油断しちゃだめよ~! いつどこで誰が攻撃してくるかわからない。他人を気にしたり、枝ばかりに集中していると、やられるよ?」
悶絶するカナルを横目に集中するサブ。
するとどこからともなく、ファイアーボールがサブの背後を直撃した。
「うおおおおお!」
大きく飛ばされ、岩壁に直撃した。
「はははは、背中だけでなく足元にも魔力を集中させないとな!」
「いててて……そうか! 背中だけに集中しても、威力がある攻撃には踏ん張りも必要なのか……」
「気付いたね! だから戦闘においては正しい魔力移動ができていないと、不バランスになる。どんなに強い攻撃を持っていたとしても、カウンターでやられるね!」
――クラウスさんは強い……詠唱している姿なんて見えなかったのに。
そうして、二人はクラウスの修行の元、魔力移動と枝への集中を図った。
1時間が経過した頃。
「ほう、サブは素質があるな!」
魔力の移動には物凄い集中力が必要で、カナルの体力では長続きしなかった。
ばて始めたカナルを置いてけぼりにする程、サブの体力は底を知らなかった。
「……(これがサブの力か)……」
クラウスが呟く。
「こんにゃろー! 負けられねー---!!」
カナルは自身がサブに魔力の使い方を教えた身である故に、負けたくなかった。
負けず嫌いが体力の底上げをし、ぴょこぴょこ枝分かれが見え始めていた。
――カナルもやるじゃないか。これは良いコンビになりそうだ。
クラウスは昔のことを思い出すようにニコニコしていた。
「クラウスさん! これからはクラウス先生と呼びます!」
サブが叫ぶ。
「んじゃ、俺は師匠と呼ばせてもらうぜ!」
「ああ、いいとも!」
クラウスは二人の修行をずっと見守っていた。




