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第19話 まさかの逮捕

 二人は白の国のことや互いの過去の話で盛り上がっていた。

 時刻は午後を回った頃だ。

 突如二人の前に、鼠色のローブを着た人間のお爺さんが現れた。老けた顔だが、歩き方や姿勢はしっかりしている。


 ――何だこの人?

「あ、あなたは……」

 カナルが名前を言おうとしたが遮られた。

「下水道破壊及び住人へ重大な被害を与えた罪で貴様ら二人を逮捕する」

 老人が突如、座る二人の前に立ち、そう述べた。


「え!? 逮捕!?」

 思わずカナルとサブは声を揃える。


「ちょっと待ってください! 確かに下水道内は破壊してしまいましたが……直接危害はなかったかと思います」

 確かに、ファントムにも確認をしてもらったし、巻き戻しの魔法で何とかなったはずであった。

「何を言う! 下水道内を破壊したということは、結びの木の根を傷付けたことと一緒だ! そんなこともわからんのか騎士団のガキは!」

「うぐ……」

 ――マジか。俺が魔力を放出したせいで、結びの木の根っこまで損傷させていたのか……。


 しかし、カナルはこの逮捕にはまだ納得がいっていないようだ。

 押し寄せる下水から脱出し、戻って確認しようとしたところにレオパルドとの戦闘があったから、まだ内部の状況は把握しきれていない。

 それに下水道に入れるのはカナルやファントムを除き、ほぼいないはずである。


「恐れながら、下水道内の確認はもうされたのでしょうか?」

「ああ、済んでいる」

「なんと!」

「わしを誰だと思っている?」

 カナルはよく考えてみた。この人は確か……。


「大変失礼いたしました。監獄長ヘルデライア殿」

 カナルは相手が大魔導士ということを忘れていた。

 ヘルデライアは監獄長として、長きに渡り悪人へ制裁を与えてきた権力者の一人だ。

 恐らく、魔力を感知して下水道内の著しい損傷を見つけたのだろう。そう、カナルは思い、態度を変えた。


「騎士団の情報屋が、このようなことを招き非常に残念だ」

 全てお見通しのようである。カナルは沈黙することしかできなかった。

「ちょっと待ってください!」

 沈黙を破り、サブが声をあげる。


「事を起こしたのは自分です。逮捕するなら俺だけにしてください!」

「傍にいた者も同罪だ」

「そんな……」

 ――俺がコントロールをできなかったからに……

 高圧的な態度は二人を押し付けていく。


「ごめん、カナル」

 小声でカナルに声を掛ける。

「お前に魔力を教えたのは俺だろう? 気にすんな」


 ヘルデライアは呪文を唱え、二人に手錠をかけた。


「では行くぞ」

 再びヘルデライアは別の呪文を唱えた。

 つま先から膝へ、順々に体が消えていく。

 それと共に、サブとカナルも同様に消滅していく。

「何これ!!」

 サブの叫びにカナルが冷静に言う。

「これはテレポートだ」

 その言葉を言う頃にはカナルは消えていた。

 ――えええ、とか言っていきなり消されるんじゃないだろうねー!

 サブは身長が高い分、遅れて森から姿を消した。


ビューーン!!

 異空間の流れに巻き込まれ、三人は瞬時に監獄へテレポートした。


ヒューーン!!

 着いたのは砂漠の上であった。日光がもろに当たり、非常に暑く、焼かれ死にそうだ。

 辺り一面、東西南北砂漠。

 サブの妄想は妄想で済み、一先ずは無事であった。


 サブは手足の存在を確認した。

 ……しっかりとある。

 ――こんなところに監獄があるのだろうか?


「死刑となればこの砂漠で焼かれ死ぬこととなろう」

 薄ら笑いを浮かべたヘルデライアは呪文を唱えると、足元の砂の中から階段が現れた。

「入れ」

 促されるままに二人は階段を下りていく。

 10メートルぐらい続く階段を降りると、涼しげなフロアに出た。

 薄暗い電気が所々にあり、足元がようやく見える程である。


「奥へ進め」

 二手に分かれた廊下の右側に押し出され、進んでいく。

 左右には投獄された悪人たちが、新人の顔を見ようと興味津々のようだ。

「おい、人間とネズミが捕まってるぞ!」

 野次が飛んでくる。

「うるせー!」

 カナルがそれに反応して、言い返す。


「あのネズミ喰っていいか?」

 顔が傷だらけでイボだらけの人型猪が、よだれを垂らしてこちらを凝視している。

「喰えよ。中からお前を喰ってやるからな!」

「へっ、雑魚の分際でほざきやがって」

 カナルは悪人に対してはとことん食いつくようだ。騎士団らしい。


「ならず者同士での罵り合いはまさに疎か。さっさと進め」

 ヘルデライアが魔力の風を送り、奥へ強引に引っ張られる。


 そして、着いた牢獄は階段から一番離れた場所にあった。

「ここしか空いていなくてな。せいぜい牢獄ライフを楽しめ」

 冷酷な言い方が、耳に残る。


 中に入ると、そこは廊下より暗く、まさにこの世の終わりを迎えるための部屋であった。

「服役期間はどれぐらいになるのでしょう?」

 カナルが敬語を使うと違和感がある。

「気分次第だ」

 ――ちょっと待て。監獄長だからと言って気分で決めるのはおかしい。

 ヘルデライアは鍵を掛けると振り返り、その場を後にした。


「ちぇっ、服役期間も教えてくれないのかよ!」

 カナルは手前に転がっていた小石を蹴飛ばした。


「いで」

「何か言った?」

 聞こえてきた何かにカナルがサブに聞く。

「何も言ってないよ。その辺の囚人でしょ」


「カナル、それよりもリットは使えないの?」

「ああ、そうだね」

 リット!!

 唱えても何も起こらない。


「おかしいな。リット!」

 やけになって、リットを連呼するも一向に付きやしない。

 サブはため息をつき、本当に投獄されてしまったことに気を落としていた。


 すると二人の後ろから声が聞こえてきた。


「無駄じゃ」

 二人は幽霊でもいるかのように、驚いて後ろを振り返った。

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