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起-2

 ロナウド・ジークハルト。


 彼を説明するには『聖女』と『騎士』について説明する必要がある。

 まず聖女とは国民から『能力』で選ばれる。 

基本的に選考基準は国柄による。

 例で言えば『雨を降らす』能力などだ。また聖女となると能力が大幅に強化される。


 例で言うと『雨を降らす』が『豪雨を降らす』といった具合だ。


 リアムは別だが、基本的には戦う戦力とはならないのが普通。

 そんな聖女を守るのが『騎士』。

『騎士』は聖女、程ではないが能力が強力になる。一つの聖女に対して三人の騎士を選ぶことが出来る。


 ちなみに剣国には『騎士団』があるが、呼び名としてはどちらも『騎士』と呼んでいるため、混ざりやすい。


 剣国の騎士の一人がロナウド・ジークハルトだ。


 この関係は一種の契約に近い。そのためこの契約を無くすことは三通り。

『聖女が騎士の称号を剥奪すること』

 これは儀式を行う必要がある。

『騎士が死亡すること』

 単純に騎士が死亡すること。

『聖女が死亡すること』

 この場合、国の破綻となり契約は強制破棄。次の聖女は国民からランダムに選ばれることとなる。

 つまり剣国にはロナウドが生きていることは知られているのだ。



「聖女様。第一騎士団、銃国との国境沿いの砦に到着したようです。先程、騎士団長ガイア・シュトレインより連絡が入りました」


 この報告をしたのは聖女を政治面で支える髪が薄くなった宰相。


「そうですか〜。姉上であれば〜、問題はありません。私の結界もありますし、第二騎士団は〜?」


 そう返事をしたのは剣国の聖女にして、第一騎士団長ガイアの妹、ティア・シュトレイン。

 光り輝く金髪のロング。顔のパーツが小さい。また低身長だが胸が山のように肥大している。

 王座に座る姿は『胸の大きな人形を椅子に置いた』ような印象を受ける。


 通称『盾の聖女』だ。


「第二騎士団は国内の犯罪率増加により、隊を分けて治安維持を行っております。『彼』の行方しれずが犯罪率増加の原因となっているのは明らかでございます」


 宰相は少し寂しそうな表情をした。


「ということは第三騎士団も〜?」

「ええ、団長不在に伴い、統率が取れず。良く言えば意見の相違。悪く言えば、副団長同士の喧嘩が起きております」


 そんな状況にティアと宰相はため息をつく。


「せめて次の騎士が決めることができれば」


 宰相の部下による苦言。

 それにティアは久しぶりにカチンッときた。

 だがそれよりも早く。


「この大馬鹿者が!」


 宰相が拳を振り上げた。


「この国の繁栄と平和が誰によって、出来たと思っている! 貴様は勉強不足だな! 目障りだ。出ていけ!」


 ビシッと出口に指を指す。

 宰相の怒りを見て、すぐ出ていく。

 しかし怒りが収まらないようで、片手でこめかみを強く抑える。


「宰相は〜、仲が良かったですもんね〜」

「ええ、多いときは週に一度は酒に付き合っていました。最近は飲み仲間もおらず飲めておりません。

 聖女様こそ幼き頃からの仲だと、聞いておりますが」


 懐かしむように見上げる宰相。


「ええ〜、何故か護身術を教えて貰っていましたよ。

 学びたい方が多かった。なので姉上のように親友ではありませんがね〜」

「その頃から人たらしだったとは。天性の才能のようですな」


 二人は声を漏らして笑った。


「剣国の危機を知れば〜、必ず帰ってきてくれる筈です。頑張りましょ〜」



「ガイア団長、戻ってまいりました」

「…………」


 呼ばれたガイアは目線だけで「まあ座れ」「どうだった?」と指示する。

 右肩から先が無い隻腕、金髪のロングヘア。顔は妹とは違い、綺麗な顔を険しくしている。悪く言えば怖い。


 そんな彼女の後ろには『三つの剣を中央に向けた』絵が描かれている旗が立て掛けられている。

 この絵は剣国の国旗だ。

 初めてガイアを見た者であれば、顔の険しさに恐れるか、気を張り詰めるだろう。

 しかしそれが良くわかっている副団長ラーゼンは普通に指示どおり椅子に座る。


(((何でわかるんだ!?)))


 周りに立つ騎士たちの思いだった。


「相変わらずです。正体不明の集団が国境ギリギリの村を襲っていますね。ただ向かうと、すぐに撤退、逃げるので誘われていることは確かです」


 ガイアは首を横に倒し「誰だと?」と聞く。


「やはり分かりませんな。ただ武器は剣を使っています。ただ使い方がなってないので、剣国ではなく他国。まあ銃国だと」


 そして地図で国境線から砦ををなぞるように指差し「手は出さないように」と指示を出した。


「了解しました。改めて騎士たちには言っておきましょう」


 ガイアは目を細めた。

 ラーゼンはそれにも気づく。


「舐められていると?」


 ラーゼンの問に頷く。


「でしょうなー。やはりあの方の強すぎた。我々の反省点であります。第三も運営が上手くいっていないようです。同じ副団長のジン・リューロスターは、とても不幸だと思っています」


 ガイアは「どうしたものか」とため息を吐く。


「正直、今の第三は使い物になりませんからな。お早い帰還を待つのみです」

「きっと帰ってくる」


(((初めて喋るのを見たぞ!?)))



「シクシク、シクシク」


 真夜中まで机に置かれた大量の書類向き合う、一人の騎士。


 彼女は第三騎士団、副団長ジン・リューロスターだ。

 黒茶髪のショートヘア。童顔でメガネをした顔は可愛さを感じさせる。しかし目の下クマと病的に青白い肌により、ゾンビのようだ。


 その他にも広い執務室には机を並べ、ジンと同じく書類と向き合っている。


「シクシク、シクシク」


 執務室にはジンの鳴き声とペンを走らせる音のみが響く。


 トントン。


「ヒッ!」


 ドアノックの音にジンは怯えた。


「……副団長。失礼します」


 入ってきた騎士も亡霊のような姿で入ってきた。


「報告です。ユウシェ副団長とリグラント副団長の団員たちが、また喧嘩騒ぎを起こしたようです」


 ガンッ!


「うう、またかよ……。被害は?」


 ジンは机を叩き、嘆く。


「城下の飲み屋です。被害は投げ合いをしたようで、大量の物損と一般人にも怪我を負わせたようです」


 報告書を病人のように弱々しく言う。


「毎回、毎回、アイツらかっ」

「またかよ! クソッたれが」


 同じく仕事をする騎士たちも怒りを露わにする。しかし手は止めず、口だけだ。

 ジンはそんな報告を顔を覆い隠し、黙り込んでしまった。


(団長さえいればっ……、こんなことには)


 剣国、第三騎士団。


 通常、騎士団入団には様々な試験が課せられることが多い。第一であれば『忠誠心』『勉学』。第二であれば『強さ』『能力判別』


 だが第三はかなり特殊だ。『ロナウド団長が気に入った者』これだけで決まる。それ故に癖の強い、頭のネジが数本飛んでいるような者たちが多い。


 その代表格が第三の副団長である副団長ユウシェと副団長リグラント。

 この二人の仲はかなり険悪。出逢えば悪口の応酬。さらに部下同士であれば、出会え喧嘩は通常、悪くて死人が出る。


 そんな状況、暴れ馬状態であっても、騎士団長はそれを操って見せた。これにより数多の輝かしい功績が認められている。

 しかし団長がいない今。


「副団長、流れはいつも通りで? まだ先日の通行人リンチ事件も解決していませんが」

「…………」

「書類関係の提出期限も、伸ばしてもらって明日の朝までです」

「…………」

「民たちからは第三の解体を願い出る、署名が提出されました。正直、民の半分は見限っていると思われます」

「…………」

「副団長、どういたしますか?」

「これ以上は無理です。副団長」

「もう無理っすよ。なんとかしないと。副団長!」


 ジンは耳を塞ぎ、そんな声を聞かないように抵抗していた。


「ぬわぁ!!!」


 そしてテーブルの上の物を投げ飛ばす。さらに椅子を蹴り折り、蹴飛ばした。


 ドサッ。


 力を失ったように倒れた。四つん這いの体制で、地面を涙で濡らしている。


「シクシク、なんで……こんな。シクシク、うううぅぅぅ!!!

 団長ぉぉぉ!!! 帰って来てくださいぃぃぃ!!!」


 その朝、騎士団に女の叫び声が聞こえたと報告が寄せられた。

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