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付き合ってからラブコメしようとするカノジョが可愛くてしかたがない

作者: あゆう亞悠
掲載日:2021/11/19

ポンコツ可愛いヒロインをお楽しみください!

 俺の通う学校には、音原《おとはら》 紫乃《しの》 っていうとんでもないお嬢様がいる。親が大きな会社の社長で、持っている物は全て高級ブランド品。時々来る迎えの黒い車はお髭がダンディな運転手付き。 しかもスタイル抜群美少女。ちょっとつり目気味だけど大きな瞳に、少しウェーブのかかった長い黒髪。

 時折ふぁっさぁ〜! と、髪を払う仕草なんて実にお嬢様っぽい。

 それ故に周りから距離を置かれていた。

 まぁ、一応いつも一緒の女の子は居るみたいだけど、明らかに金目当て。男は怖がって近寄らない。

 まさにテンプレお嬢様といった所か。


 だけど俺は知っている。

 俺がちょっと表紙が恥ずかしいラノベを買いに七駅も離れた街の本屋に行った時に見たのだ。

 ラノベコーナーで真剣な眼差しを棚に向ける音原を。そして「続刊の為にはお布施を……」と言いながら、その月に発売の新刊を全て三冊ずつ買ってる姿を。

 あれだよね。そんな姿見たら一気に親近感湧くっつーの。しかも美少女だ。

 だから俺は、その日から音原を見る目が変わった。聞き耳をたてれば、時々ラノベの名セリフを混ぜながら話していたりするのが聞こえた時は笑うのを堪えるのが大変だった。

 しかも、照れたり、気付いて貰えなくて寂しい顔もしていない所を見ると体の芯まで染み込んでいるんだろう。

 おいおい、最高じゃないか。


 という訳で、俺は音原を放課後の教室に呼び出した。ほとんど会話なんてした事のない俺がいきなりそんな事を言うもんだから、ただ口をパクパクさせて頷いてただけだけど。


 で、その音原は今、俺の目の前でキョロキョロしながらお嬢様ふぁっさぁ〜を何回もしている。しすぎてちょっと髪が乱れている。なんだそのキャラ。最高か?


「そ、それで何の用かすらっ!? い、いきなり呼び出すなんて。貴方とはあまり話した記憶も無いのだけれど? 蓮川《はすかわ》 遥《はるか》君」


 あ、噛んだ。てか俺の名前知ってたのか。意外だな。まぁいい。本題だ。


「音原。好きだ。いや、好きになった。俺と付き合ってくれ」

「びぇっ!? しょしょしょれにゃんでひゃい!?」


 なんて!?


「で、どうかな?」

「な、なななななっ! なんで!?」

「なんでって……可愛いから?」

「かっ!?」


 そんな雑魚敵を吹き飛ばすような喝を入れられても……。

 うーん。話が進まない。いちいち行動が可愛いけどさ。


 俺が音原を見ていると、そこで音原が何かに気づいたような表情になり、腰に手を当てて俺に向かってビシッ! と指をさした。いいね、その立ち方。ヒロインっぽい。


「わかったわ。貴方、私のお金が目当てなのね! 言っておくけど私は貴方の借金を払ったりもしないし、いきなり無一文になって一緒に住んだりしないわ!」


 おーい。毒され過ぎてるぞー。どんだけ読み込んでんだよ。いや、俺も読んだし好きだけどさ。


「いや、金とかどうでもいい。ただ一緒にいたいだけなんだけど?」

「ファァァァっ!? そ、そんな……ダメよ……。確かに顔はちょっとタイプだけど……ダメよ」

「どうして?」

「だって……ラブコメは付き合ったら終わりってどこかで見たんだもの……。私、まだラブもコメも全然貴方とは起こしてないんだもの……。あの本も付き合ったら終わったんだもの……」


 …………は?


「いや、別に付き合ってから初めてもいいんじゃない? ほら付き合ってからの方が出来ることもあるし?」

「た、例えばなにかしら? 言ってみなさいよ!」

「キス」

「きゃぁー! 言わないでっ!」


 どっちだよ。


「わかった。じゃあ言い方を変える」


 一歩一歩ゆっくり進んで音原の目の前まで行く。

 するとタイミングよく風が吹き、カーテンが泳ぐ。

 シチュエーション的にはバッチリだろ。

 このチャンスは逃せない。俺は音原の目を見てこう言った。


「音原、俺と恋人同士のラブコメを始めよう」

「は、はひ……」


 と、いう訳で俺達は今日から恋人同士になった。


 音原と恋人同士になった翌日。

 俺の一日はまず、音原の観察から始まる。

 付き合ったからと言って、いきなり一緒に登校はまずしないからな。

 何しろ昨日は、いざ連絡先を交換! ってところで音原の迎えが来たから聞けずじまい。俺にはあの髭ダンディに立ち向かう勇気はない。そんな事が出来るのは、無謀な勇気を持つラブコメ主人公と異世界転生したての主人公だけだ。

 あと、帰る時に『ごきげんよう』って言うの初めて聞いた。そして吹いた。直前におにぎりでも食べてたら危なかったな。絶対鼻に米が入ってた。


 で、その観察対象であり、俺の恋人の音原の一日は無自覚マウントで始まる。

 あ、教室入ってきた。


「音原さんおはようございま〜す」

「おはようございます、英子さん」


 真っ先に駆け寄るモブ子。もう見るからに媚び媚びだ。目線は下から。前から駆け寄ったのに、立った位置は音原の横の半歩後ろ。どこの小姓だお前は。その内靴でも温めかねない。


「今日も素晴らしい綺麗な髪ですね〜! どんなシャンプー使ってるんですか?」

「そうね……わからないわ。いつも置いてあるのを使ってるだけだもの」

「そうなんですか?」

「えぇ。自分で買い物なんて滅多にしないものだから。それにほとんどカードで済ますから一個一個の値段なんてわからないわね」

「す、凄いですねっ! さすがです!」


 はい! キタコレ!

 買い物なんて下賎の民のする事オホホだ! 更に買い物で値段なんて見ないわよ宣言! 金持ちのなせる技!

 おかげで周囲はドン引きだよ。

 まぁ、気持ちはわからないでもないけどな。けど、環境が違えばその人にとってのいつも通りも違うってのわかってんのか? それもわからないで陰口とか距離を置いたりするのはなんか違うぞ。


「……? 何が凄いのかはわからないけれどもありがとう。貴女は何をつかっているの?」

「私のなんてスーパーのですよ〜」

「そうなの? 私のはスーパーって程ではないのかしら? ハイパーとかウルトラとかもあるのなら、使って見たいわね。ふふっ」

「え? あ……え? は、はい。そうです……ね?」


 音原! つまんない! つまんないぞソレ! ボケたつもりなんだろうけど伝わってないぞ!

 なのになんでそんな『どう? 面白い冗談でしょう?』みたいなドヤ顔してんだよ。そっちの方が面白すぎるだろうが。


 と、そこで音原が俺の方を向いて目が合った。そしてどんどん赤くなる顔。そこで俺は軽く手を上げてニコリと微笑む。


「っ!?」

「音原さん!? 首がっ!」


 すると、凄い勢いで首を回して俺から視線を外した。顔は見えないけど耳まで赤い。しかも勢い良く回しすぎたせいで首を痛めたのか、手で押さえいる。う〜ん、ポンコツ可愛い。ウブな所がまたいい。


 そして、俺がそんな愉快な音原を堪能していると、目の前が人影で塞がれた。


「は〜る〜か〜く〜ん」


 俺の名を呼ぶ声に顔を上げると、そこには俺の幼馴染である華原《かはら》 乃々華《ののか》が立っていた。しかも腕を組んで仁王立ち。


「なんだ?」

「なんだ? じゃないでしょ〜? なんでいつもノノが着替えてる時に家にくるのかなぁ?」

「だってお前の母さんが飯食いに来いって言うから」


 そこでガタタッ! って音がする。


 あ、音原がめっちゃ見てる。この華原は俺の小学校からの幼馴染。


 で、この華原なんだが、特徴を上げるとしたら前髪をヘアピンで留めた栗色のボブヘアー。ネコミミみたいな目。小柄。音原とは比べてはいけない胸部。まぁ、全然無いわけではないんだが。と、そんなとこだ。

 そして俺が華原の家に朝飯を食いに行くのにもちゃんとした理由がある。

 華原が引っ越して来たのが小学二年の時。しかも俺の家の隣。さらに華原の母親が俺の母親の若い頃の友人らしく、一気に家族ぐるみの付き合いになった。

 で、俺の父親は漁師で家に居ないことが多く、母親は看護師をやっている為、夜勤とかで朝いない時には華原の家に朝飯を食いに行くようになった。ただそれだけの事だ。


「別に俺はお前の着替えなんて見る気はない。見る気が無いのに見せられてるんだ。見られたくなら部屋で着替えればいい。リビングで着替えてるからそうなるんだ」

「うっ……ド正論……」

「それにお前の母さん言ってたぞ。『あの子はタンスから服出すの面倒くさがって、干してあるのから取るからこうなるのよ……』って」

「お、お母さん何言っちゃってんの!?」

「わかったら席につけ。そろそろ予鈴鳴るぞ」

「あ、やばっ!」


 俺がそう言うと焦ったように自分の席に向かう華原。そして俺は横目に音原を見る。


 ……う〜わっ。めっちゃ見てる。これでもかって見てる。見ながら右手でペンを折ろうとしてる。そして、『なんで折れないのかしら? 漫画とかではよく折れてるのに。不思議だわ』って顔をしてる。

 そう簡単に折れるわけないだろ。しかもそんな高級そうなペン折るな。それ一本で俺の筆箱の中身全部買えそうだ。


 〜〜〜〜♪


 と、そこでチャイムが鳴る。さて、授業授業。

 …………あ、まだ見てる。


 ◇◇◇


 そして一限目が終わってふぅと一息ついた時、俺の横に立つ人がいた。音原だ。

 腕を組み、その腕に胸を乗せながら右手で髪を払って俺を睨んでいる。う〜ん、デカい。


「音原、どうした?」

「蓮川君、お昼休みちょっといいかしら? お弁当持って屋上への階段の所まで来て欲しいのだけれど」

「いいけど?」

「そう。ならまた後でね」


 音原はそう言うとまたしても髪を払い、スカートを翻して自分の席に戻る。あまり勢いよく振り返るとスカートの中が見えそうになるのを教えた方がいいのか? まぁ、それは後でいいか。

 とりあえず昼か。さて、何の話なんだか。


 って思っている内に昼になった。


 言われた通りの場所に弁当を持って行くと、そこには既に音原がいて、階段にハンカチを敷いてその上に座っている。


「来たのね」


 パンツだ。


「は、早かったのね」


 パンツが……


「ちょっと話しがあるのだけれど」


 見えるっ!


「ちょっと? 聞いてるのかしら?」


 大丈夫だ。ちゃんと効いてる。クリティカルヒットだ。お嬢様だから黒とか赤とかレースの付いた紫だと思ったのに、まさかの王道縞パンとはな……。こいつはやられたぜ。まぁ、超王道の水色じゃなくてオレンジだけど。


「で、話ってなんだ?」

「あなたの恋人は私よね?」

「もちろん」

「なら……」


 なら?


「なんで別の子にラ、ラ、ラッキース……ケベ(小声)しているのかしらっ!? なんで私じゃないのっ!?」


 顔を真っ赤にして言う事がそれかぁ……。


 さて、ラッキースケベは自分にしろと言う音原に対してなんて答えるべきか。

 現在進行形でラッキースケベが起きてるんだけど、それは敢えて言わない方向で。

 そうなるとまずは──


「え? なんだって?」


 必殺、聞こえてないフリ。本当は聞こえてるけど敢えて聞き返すという禁断の技。ほら、ラブコメっぽいだろ? 付き合ってからのラブコメをお望みだったからな。それに応えないと。


「なっ!?」


 音原はまさか聞き返されるとは思っていなかったのか、顔を赤くしてビクッ! となる。すると同時に触れていた両膝が離れてご開帳。チラどころじゃない。モロだ。流石にここまで来ると風情が無いな。

 俺は階段を上がって音原の前まで来ると、視線を逸らし、指で頬を軽く掻いて言い訳をする。


「いや、ごめん。距離があったせいでよく聞こえなくてな」


 距離、とはいっても階段五段分くらいなんだけどな。さすがにその程度じゃ聞こえないって言い訳は辛いか? そしてどうだこの仕草。ラブコメっぽいだろ?


「そ、そう。なら……ほら、隣に来なさい」


 信じた。そしてそう言いながら音原はペチペチと隣を叩く。そこにもハンカチが敷かれており、用意周到なのがわかる。


「あぁ」

「あっ……」


 が、しかし! 俺は敢えて距離をあけて座った。自分の弁当を蓋を開きながらチラッと音原を見ると、音原は俺との間の隙間を見つめ、その反対側を見つめた後、ゆっくりと距離を詰めてきた。むしろ詰めすぎで密着してるまである。


「ほ、ほら、私の声小さいからまた聞こえないと大変でしょう? だからよ」

「ならしょうがない」


 無理矢理な理由だけど、しょうがない。可愛いから。


「そ、それでさっき言った事なのだけれど……」

「ん、なんだ? 全然聞こえなかったんだ。ほんとに聞こえなかったんだ」

「えっと……その……ね? 貴方の恋人は私な訳でしょう? だから今朝聞こえてきたようなラッキー……的な事は私にするべきだと思うの……よ?」


 横から俺を見上げ、俺の袖を掴むか掴まないかで手をモニョモニョさせながらそんな事を言ってくる音原。言葉尻にかけてだんだんボリュームも下がっている。ああ、抱きしめたい。だけど我慢。まだ付き合って一日目だ。一日目でこんなになってるのも不思議だけど。さすチョロ。

 そして、俺はそんな彼女に向かって返事を返す。


「音原、例えば俺がそういった事を音原にしてしまったとして、果たしてそれはラッキースケベと言えるのか?」

「……え?」

「マンガ等にあるラッキースケベ。例外もあるかもしれないが、それはほとんどが付き合う前の男女で起きてると思うんだ」

「そ、それは……っ!」


 音原は視線を逸らし、軽く唇を噛む。俺は笑いを堪える。そんなわけないだろうが。


「そして俺達は既に付き合っている。この状態でうっかり着替えを覗いてしまったり、パンチラを見てしまっても、それはもはやラッキーでは無く、必然じゃないのか?」

「た、確かにそうだわ……」


 なんでだよ。そうだわ……じゃねぇよ。けど面白いから続けよう。


「つまり、俺達がラッキースケベを起こそうとするのなら、普通のラッキーじゃダメなんだ。もっと俺がラッキーだと思うような事じゃないと成立しない」

「なんてこと……。付き合ってからのラブコメにはそんな高いハードルがあったのね」

「んぐっ! ………そうだな……んふっ!」


 やめろ。真顔で頷くな。俺の腹筋がつりそうだ。必死で笑いを堪えてんだから。おかげで一向に弁当が減らない。口に入れたら吹き出しそうになる。


「それなら……でもコレはさすがに……でも……」

「どうした?」

「蓮川くん……ちょっと手を貸してくださる?」

「いいけど?」


 何かを悩んでいるような顔でボソボソと呟く音原。

 俺が声をかけると、意を決したような顔になり、俺の許可を取るなりいきなり腕を掴む。

 そして──


「ど、どうかしら? これは貴方にとって……その……ラッキー?」


 顔を真っ赤にさせながら自分の胸に俺の手を触れさせてきた。とんでもなく柔らかい。 どこまでも沈んで行きそうだ。


「これは……ラッキーだな……」

「本当? そ、それなら良かったわ。それで……私の胸は……どう?」

 「すごく柔らかい」

 「そ、そう……」


 俺の答えに満足したのか、俺の腕から手を離す。俺の手はいまだに音原の胸に乗ったまま。

 これは……どうすれば?


「その……ずっと腕を乗せられていると重いのだけれど……」

「あ、あぁ、すまん」


 言われて腕をどかすと、音原は空になった弁当箱を持ってスっと立ち上がり、階段を一段下がって俺に向かって振り返った。


「話というのはそれだけよ」


 顔を耳まで真っ赤にしながらそれだけ告げると、髪をふぁっさぁさせて降りていく。その姿を見ながら俺は──


「音原、敷いてたハンカチ忘れてるぞ」

「っ!?」


 忘れ物を教えてあげた。


 ◇◇◇


 とある日の放課後、俺は音原とファミレスに来ている。

 どうやら大事な話があるらしく、どこかいい所はないか? との事で俺が場所を決めた。俺も友達と良く来る所で、ウェイトレスの制服が可愛い。あの胸を少し強調するデザインを考えた人は天才だと思う。


 そして音原だが、さすがに初めて来たわけではなさそうで、『ここが庶民の食堂なのね』みたいなセリフは無かった。

 しかし、ドリンクバーで注ぎ口が三つある中、コップを真ん中に置きながら右端のボタンを押し、ひたすらダバダバこぼすというという偉業を起こして慌てていた。


「それで、大事な話ってのはなんだ?」


 俺はツインテール巨乳ウェイトレスが持ってきた水の中に入っていた氷を口の中に入れながら聞く。『べ、別にあんたのタメに持ってきたんじゃないから。これが仕事だからしょうがなくよ!』って言って欲しかったけど、それはこの店では無理だ。あとでそれが聞ける店に行こう。


「こ、恋人同士になったからには言っておかないといけない事があるのよ」

「言わないといけないこと?」

「えぇ。実は私……ラブコメラノベが大好きなの」


 ボリィッ!!

 俺は口の中の氷を噛み砕き、その冷たさでなんとか吹き出すのを抑える。

 知ってる……知ってるよ! 見たものっ!

 てか、今更すぎるだろ! 自分の今までのセリフ思い返してみろ。そう言いたくなるのを必死で抑えて俺は返事を返す。


「そうなのか」

「驚かないのかしら?」

「別に驚くような事でもないだろ? 人の好きな物なんてそれぞれだしな」

「確かにそうだけれども……。てっきりバカにされるものだと思っていたからその……嬉しいわ」


 そんな事を呟きながらカフェラテの入ったカップを両手で持ち、頬を染めながら一口飲む音原。


「そんなわけないだろ」

「そうなの? 良かったわ。てっきり私だけかと思っていたのよ。蓮川君も新刊が出る度に店舗の在庫が一冊になるまで買うのね」

「ははは」


 いや、それはお前だけだ。


「それで……質問なのだけれど」

「なんだ?」

「ねぇ、蓮川君。貴方、ツンデレって……好きかしら?」

「随分唐突だな。好きだけどどうした?」


 この会話の流れで、なんでいきなりツンデレが出てきた?


「私、ちょっと思うのよ。ほとんどの作品で最低一人はツンデレキャラ出てくるでしょう? まぁ、出ない作品もあるのだけれど。それで読んでて思うのが、その可愛さが異常だということなの。同じ女性目線で見ると、そんな行動する子は現実ではほとんどいないわね。いたら嫌われるタイプよ。あれはラノベやマンガという媒体によって外側から見るから、その子の好きだけど素直になれないという心の葛藤まで読み取る事ができて、初めて可愛いと思えるのよ。そして世の男性はそんなツンデレを求めているのよ。だからあんなに可愛いツンデレキャラが生まれるの」


 すげぇ喋る。

 けどまぁ、言わんとすることはわかる。いきなり『別にアンタの為じゃないから!』なんて言われたら、『なんだコイツ。じゃあすんなよ』って思うだろう。

 ただ、わからないのは何故いきなりこんな話を?


「まぁ、確かにな」

「そうでしょう? だから私は考えたの」

「考えた?」


 なんだろう。ポンコツの匂いが漂ってきた。


「現実でもツンデレが可愛いと思える為に、宣言系ツンデレというのはどうかしら?」


 何言ってんだコイツ。


「…………?」

「わからないかしら? つまり、私が言いたいのはこういう事。【好きだからツンツンしてるんだからね】って相手に最初から伝えておけば、現実でツンデレ行為をしたとしても変に思われることはないわ」


 それは最早デレでは? ってツッコミが喉元まで上がってきたが、必死に飲み込む。


「なるほど。天才か?」

「ふふん、そうでしょう?」


 なぜか誇らしそうに胸をはる。揺れる。弾む。戻る。その勢いで少し体が前のめりになってテーブルに乗る。すげぇな。


「それで蓮川君。私、これからツンデレるわね」


 ツンデレる。


「それは……どういう事だ?」

「つまり、さっき言ったことを実践するだけよ。好意があるってわかっているツンデレなら、可愛いって思ってもらえるのだから」

「なるほど。つまり……音原は俺の事が大好きで、俺に可愛いって思って貰いたくてそんな事をする。って事でいいんだな?」

「…………っ!?」


 なんでそんなびっくりしたような顔を──ってまさか音原、自覚無しにそんなこと言ったのか?

 天然か? 天然なんだな?


「そ、そんな訳がないでしょう!? ただ貴方の事しか好きになれなかっただけで、可愛いだなんて思って欲しい訳じゃないわよっ! そのうちファッション誌見せてどんな服が好きかどうかなんて調べようなんて思ってないのだからっ! 調子にのらないでっ!」


 ……なるほど。確かに好意がわかってる状態でのツンデレは可愛いな。



 ◇◇◇


 さて、今日も俺は音原とデートの真っ最中だ。


「蓮川君、私達そろそろ二週間ね」


 唐突にそんな事を言う音原。相変わらず毛先はウェーブしている。

 ちなみにここはオシャレな喫茶店。値段もオシャレで俺にはちょっと似合わない。内装がテラテラで落ち着かない。

 ちなみに個室になっていて、音原は家族でよく来るらしい。

 流石! としか言い様がない。


 何故、俺達がここにいるかというと、特に約束も用事も無かった俺が、まっすぐテクテク家に向かって歩いている時、突然俺の隣に長い車が止まった。

 その車の正体はすぐに分かった。それは音原家のお迎え高級車。

 そしていきなりドアが開き、その向こうに音原の姿を確認した瞬間、音原の『乗りなさいっ!』との声。

 キュンとした。映画のワンシーンみたいでカッコよかったんだ。マジで。○サトさんっ! って言いそうなった。言わないけど。


 で、言われた通りに車に乗り込み、敢えて音原のすぐ隣に座る。

 すると、『う、運転手に見られちゃうじゃない……。もう少し離れてなさいよぉ…』って顔を赤くしながら言われたので、今度はドアの近くまで離れる。今度は『そ、そんなに離れなくても……』ってシュンとなる。可愛い。可愛いから少しだけ寄って手を握ると、『あうあぅあぅ……』ってまた真っ赤になった。うむ。


 そしてお互い制服のまま着いたのがこの店。で、このセリフだ。


「何が二週間なんだ?」

「それはもちろん付き合ってからよ。今の時点で付き合ってから十三日と一時間二十七分ね」

「…………そうか」


 ヤンデレか? ヤンデレなのか?


「それで質問なのだけれど」


 またか。さて、今度はなんだ──というか、付き合った期間を言ったのはなんでなんだ? そこは全スルーなのか? まぁいいけど。


「なんだ?」

「蓮川君はロリっ子は好きかしら?」

「この前のツンデレに続いて今度はロリか。まぁ、嫌いではないな」

「あら、好きとは言わないのね?」

「まぁ、ロリとは言っても色々あるからな。ガチの幼児のロリはそうでもない。可愛いとは思うけど、それだけだな。だから好きなのは、歳の割には幼く見えるやつ。例えば社会人なのにJKJCに見えるとかの合法ロリ系なら、割と好んで見るな。後は……まぁ大体はイラストレーターにもよるだろ」

「確かにイラストレーター様の力は絶大ね。同じキャラを描いたとしても、その人の絵柄によって見た人が感じるキャラの年齢はバラバラだもの。」


 ……様って付けたな? ガチじゃねえか。


「まぁな。それにしてもなんでいきなり」

「そして、見た目と実年齢のギャップは確かに心を引きつける物があるわね。……一応聞いてみるけども、私にロリ要素はあるかしら?」


 おい、無視か。

 にしても音原にロリ要素……無いな。うん、無い。


 俺は音原の胸に付いている、テーブルに乗りそうなまるで水風船のような柔らかさを持つ、たわわな果実を見る。ロリ巨乳って言葉はあるけど、音原は身長もそこそこあるし、目も少しつり目だ。この見た目なら、どちらかと言うと少し上に見られてもおかしくない。


「いや、音原には無いな」


 だから俺は正直に答える。


「そ、そんな胸を凝視しながら言わなくても……。大丈夫よ。これは貴方だけのものだから……」


 音原は少し顔を赤くして自分の胸を押さえながらそんな事を言う。強く押さえられた胸がフニュンと潰れる。え、何? 誘ってんの?


「分かった。ソレは俺の。分かった」

「ちょ、ちょっとさっきより見すぎじゃないかしら? は、話を戻すわね。そう、私には見た目でのロリ要素が無いの。それをふまえてロリっ子について言わせてもらうと、彼女達の魅力は見た目以外ではワガママと甘えん坊、そしてそれらの何をしてもある程度の事が許される、という所にあると思うの」

「まぁ、小さい子だからな」


 俺も親戚の子とかのワガママは結構聞いたりするしな。


「というわけで、私は今からロリっ子になるわ。ちょっと私がいいって言うまで後ろを向いていてくれるかしら?」


 いや、何がというわけなんだ? さっぱりわからないんだが? ロリっ子になる? どうやって?


「ほら、早くしてくれないかしら?」

「あ、あぁ。わかった」


 そして後ろを向いて少し経った時、声がかけられた。


「いいわよ」


 そして振り向いた俺の視界に入ってきたのは、黒を基調としたフリッフリの服を着た音原の姿だった。顔を真っ赤にして両手でツインテールをつかみ、それで口元を隠している。

 なるほど。ロリはロリでもゴスロリときたか。


「うぅっ……恥ずかしい……」


 カワイイんだが?


「一応聞くが、なんでその格好なんだ?」

「ほ、ほら……ロリっ子のワガママは聞くものでしょう? だからその……付き合ってまだ二週間しか経ってないけど、ちゅうして欲しいな、って……」


 あぁ、なるほど。最初の二週間発言はこの為の布石だったと。

 まったく、そんな回りくどいことをしなくてもいくらでもするのに。むしろ俺もしたいと思ってたくらいだ。


 だから──


「おいで」

「へっ!?」


 俺は音原の腕を引っ張って俺の膝の上に跨ぐように座らせる。


「ちょ、蓮川君!? これは流石にちょっと恥ずかしいんだけムグッ!……んんっ……」


 そしてキスをした。


 押し付けるだけのキスをした後、唇を離すと音原はツインテールで顔を全て隠してしまう。


「どうした?」

「どうしたって……! 確かにお願いはしたけれどこんないきなり……」

「嫌だったか?」


 俺が聞き返すと、音原は少し黙った後、ツインテールの隙間から目だけを出してこう言った。


「イ、イヤじゃないから、もっかいちゅう……して?」


 やれやれ。こんなウブで可愛い彼女とのラブコメなんて可愛いすぎてこれからどうなるんだ?


 俺はそんな事を考えながら再びキスをした。




 「し、舌はまだダメっ!」


 ちっ、バレたか。








面白かった!可愛いかった!

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― 新着の感想 ―
[良い点] かわゆし!
[良い点] 紫乃さん… 最高だな、この娘… こんなに破壊力のあるヒロイン、初めて見たよぉ( ;∀;)
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