罪悪感を感じているとあるAランクアーチャーのお話
私には可愛い妹と弟達がいた。私は弓を扱うのが上手かった。そんな私をみんな褒めてくれた。突然そんな日常は崩れ去った。原因は火災だった。みんな燃えて何も無くなった。私だけ残ってしまった。
とにかく魔物を狩った。この思いを紛らわしたいがための八つ当たりと言われてもしょうがない行為を繰り返していたらいつしかAランクになっていた。そんな弓の腕を見て今のリーダーが声をかけてきた。
パーティに入れてもらってから1ヶ月ほどでいきなりリーダーが男の子を連れてきた。その子を一言で表すなら「年相応の感情が乏しい子供」だった。一応冒険者で名前はフルスと言った。その目には光がなかった。
フルスは雑用を全部引き受けてくれて生活は快適だった。そんなある日、夜に外で物音がしたから見にいくと目を疑うような光景があった。リーダーはフルスを戦えないから雑用でもやらせておくと言っていたけど信じられなかった。目で追えないほど速く動き的に的確に打撃を叩き込んでいる。でも当たっている位置が全部致命傷になる部分以外...まさか殺す気がない?よく見ればわざと外してるように見える。でもどうして...。
「***...だっけ?こんな時間にどうかした?」
「夜中に音がしたから何やってるのかなって。」
「あー起こしちゃったのならごめん。でも僕の練習時間は今しかないし...。」
「・・・どうして致命打を入れないの?」
「ッ!?」
聞いたあとすぐに後悔した。デリケートな部分だったのかあからさまに動揺を示した。
「あっ、嫌なら別に言わなくても...。」
「・・・長くなるけどいい?」
「もちろん。」
そこで聞いたのはフルスの絶対に揺るがない決意。その意思の強さは明らかに異常だった。もう精神が壊れてもおかしくないほどの仕打ちを受けてもやり返さず我慢し続けることはこんな歳じゃできないはず。
そこからフルスによく話しかけるようにした。おそらくフルスの精神はほとんど壊れてしまっている。でも何かが引っかかっているのか狂ってまではない。なら私に出来ることはフルスを支えてあげるしかない。何があってもあの子の味方であるように、狂ってしまわないように。
リーダーがフルスを追放するということを言い、私は必死に説得した。でもリーダーは聞き入れてくれなかった。せめてものお詫びとしてあの子の部屋に手紙と『ある物』を置いてきた。もうこんなところにはいられない、リーダーには悪いけどギルドに手続きをして正式にパーティから抜けてきた。早く見つけないと、手遅れになる前に。謝るために。